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トラウマ持ちのSubが幸せになる方法
トラウマ持ちのSubが幸せになる方法 7
気持ちはふわふわしていた。
プレイ中なのもあるが、なにより棗の気持ちが聞けて嬉しかった。
棗にソファまで抱いて連れて行ってもらい、温かい紅茶を飲む。
隣には棗が同じように紅茶を飲んでいる。なんとも言えない幸せな気分だ。
ーーー なにを'"お願い"しようか…。
朋志は一人でいることに慣れている。
だいたいのことは一人でしてきたし、できる範囲で生きてきた。
棗とパートナーになり、なんでもできる棗に憧れた。一緒に暮らすようになってからは、棗にどんくさい自分がどう思われているのかが気になった。
棗はなんでもできる。今までより間近で見ることで、コンプレックスも刺激された。
朋志が思うほど棗が朋志のコンプレックスを気にしていないかもしれないことはなんとなく気づくことができた。かといって、朋志より忙しい人にあれこれ頼み事はできない。暇をしていたからといって気軽にいろいろと頼めるものでもないし、ものを頼むという発想もない。大抵のことは誰に頼まなくてもできることだ。なのに、棗は朋志の想像を越えていた。
”Please”
して欲しいことをお願いする。
朋志が忙しい棗のためになにかしたいと思ったように、棗は気を遣いがちな朋志が甘えやすいようにしてくれたのかも知れない。
そう思うと、胸のあたりがじわじわと熱を持ってきたような気がする。
棗を前にすると、それで合ってますか?とは恥ずかしいし野暮な気がして聞けないのだが。
朋志の視線に気づいて棗が細めの目をさらに細くする。
その目の優しさにあと押しされ、朋志が口を開く。
「棗さん」
「はい」
「”お願い”です。寝る時間まで隣にいてくだい」
「ええ」
「あ、あと俺…部屋に読みかけの雑誌があって取りに行きたいから、俺の部屋まで連れて行ってください”お願い”します、棗さん…」
「もちろんです」
棗が朋志の背中に手を回すのに合わせて、朋志から手を伸ばして棗の肩に回す。
「こんなこと”お願い”にしていいでしょうか…」
「朋志さんの”こんなこと”が聞きたかったので、僕は嬉しいですよ」
「…」
「朋志さん…?」
抱き上げられた朋志が棗の肩にぎゅうっと抱きついたので、棗が目を丸くしている。
「俺も…嬉しくて…」
「そうですか」
棗が朋志に頬を擦り寄せる。めったにない棗の甘えた姿に朋志はまた嬉しくなり、胸をときめかせた。
棗はずっと隣にいてくれた。朋志は棗の隣で生活の知恵や簡単な料理のレシピが紹介されている、おそらく主婦向けの雑誌を読んでいた。棗は最初に「?」という表情をしていたが、「掃除の裏ワザが載っているので気になって」と言うと納得したようだった。本当は、時短で簡単という見出しの料理レシピを目当てに買った雑誌だ。料理教室のことはまだ棗には内緒なのだ。
とはいえ、雑誌の内容に集中できたのは最初だけだ。最初は棗が隣にいてくれたので安心してプレイを楽しんでいた。時々、縛ってもらったところを見て、棗の存在を感じて、真綿にでも包まれているようなふわふわとした安心感の中にいたのだ。棗が背中や体を労るように撫でてくれたのも嬉しかった。
でも、今度はどんな”お願い”をすればもっと棗が喜んでくれるのだろうと考えるようになって、そこから朋志は雑誌の内容に集中できず、文字が目を通り抜けていくようになってしまった。
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