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トラウマ持ちのSubが幸せになる方法
トラウマ持ちのSubが幸せになる方法 8
棗は、朋志の”お願い”を受け入れてくれている。
朋志の”お願い”が聞きたいと、そう言っていた。なにか特別な”お願い”を要求されたわけでもないのに、高いハードルに感じてしまう。
その理由はわかっていた。
朋志が好きなコマンドの一つに”Look”がある。それは棗を見ているだけで幸せになれるコマンドだ。
朋志は棗と目を合わせて棗が朋志を見てくれているというだけで胸がときめく。照れて目を反らしそうになるのだが、同時に棗を独り占めしていると思えるのでいつでも言ってくれたらいいのにと思っている。
”Please”は、他のコマンドに比べて解釈に幅のあるコマンドだ。
その時々で朋志が考えて、発信しないといけない。
棗は朋志のDomだが、朋志を裁いたりはしない。
朋志が棗から与えられたコマンドで何を言うのか待っているのだ。朋志が何を言っても棗は笑顔で受け入れてくれるだろう。
棗が朋志のことをSubとして、パートナーとして認めてくれて、さらに一歩進んでみようとしているのかも知れない。
「あ…」
棗は朋志の思考までも手中に収めようとしているのだろうか。その考えは朋志を震えさせた。棗の持つDom性による支配だと思えたからだ。それも甘い…。
朋志はいつでも棗に…棗だけに尽くしたいと思っている。朋志のたった一人のDomに。棗は朋志を跪かせない。棗はプレイ中すらSubの全てを曝け出させて服従を知らしめたり、Domとして、Subとしての役割を表面化させない。そのようなDomとしての甘さを棗がコンプレックスに思っていることは知っていて、朋志はああと熱いため息を吐きながら縛られた足の先から広がる震えに身を任せる。Subである朋志にとってこれ以上ない喜び。喜悦のため息だった。
ーーー こんな支配が欲しかった…。
プレイへの不安感が強い朋志に合わせて、甘く満たして安心させてくれるプレイをしてくれる棗に、これ以上ないほど嵌まりきっているのに…。
「棗さん…」
「朋志さん?」
呼ばれて隣に座っている棗が振り向くと、いつになく頬を上気させている朋志に目を見開いている。そんな棗に構わず抑えがたい衝動に駆られて口を開く
「…ええ…もちろん」
すぐに願いは叶えられた。
「朋志さん、疲れさせてしまいましたか…?でしたらもうこのへんで…」
「だめです」
「…朋志さん…?」
顔を見られたくない朋志は優しく包み込んでくれている体を引き寄せて強く抱き返す。
「棗さん…”お願い”…もっと…棗さんを知りたい…」
棗の甘い支配が欲しい。
”お願い”をして朋志の全部を伝えないといけない。そう思うのに、言葉がうまく出でこない。胸がときめいて、頭もクラクラするような気がする。
棗がそっと朋志の手を取り、指を絡める。そんな淡い刺激も今の朋志には神経ごと掴まれたような衝撃を体中で感じた。
「ええ…僕のこと…」
頬を撫でられるに促されて視線が絡まる。
朋志のDomはやっぱりうっとりするほど綺麗で格好いい。
ふるいつきたくなる衝動を抑えて、妖艶に微笑む棗を見つめる。
「なにを知りたいですか…」
ーーー もっと縛られたい…棗さんに…
そして、朋志を甘く支配するDomのことをもっと知りたい…どうすれば喜んでくれるのかを知りたい…
朋志の頭の中にはそれしかなかった。
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