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日常系
つながる心、甘い想い 2
棗はうんざりしていた。
それは、カレンダー行事にかこつけて朋志と接点を持とうとする家族…いや、兄たちにである。
朋志は兄たちのお気に入りなのだ。
朋志は可愛い。
朋志は棗の自慢のSubで、Domである兄たちが骨抜きになるのも当然だ。むしろあんな素敵な人を前に無関心でいられるのも腹が立つ。複雑怪奇なDom心である。
朋志は世界一可愛い。
しかし、朋志に近づくのは許しがたい。推しとの距離は適切に保つのが鉄則だ。高嶺の花よと憧れていればいいのに、行動力のありすぎる兄たちには辟易するばかりだった。朋志の気を引こうと何かと理由を付けてプレゼントを贈る。朋志も素直に受け取って喜ぶので、兄たちの鼻の下が更に伸びる。悪循環である。
次男の理生は、すでに朋志宛に小包を送ったと事後連絡があった。確信犯である。長男の理久に至っては、圭吾と一緒に作ったバレンタインチョコを持参するというのだ。自作の器を添えて。写真で見る限りスイーツ店で購入したかのような完成度だった。…重い。重すぎる。
なにより棗家で珠玉のように大切にされているマスコット…いやアイドル的存在の恵吾を巻き込むところが大いに棗の気に障った。
恵吾というのは、Dom一家の棗家において唯一人のSubであり、両親のパートナーだ。
「なんとかしなければ…」
この問題を片付けないと朋志との時間をゆっくり楽しめないと思った棗は、仕事そっちのけでどうしてやろうかと悶々と考えていた。
バレンタイン当日。結局、棗は午後には仕事を切り上げ、実家に帰っていた。
年度末に向けて繁忙期がやってくる。徐々に忙しくなるこの時期、兄たちに時間を割かれるのは不本意極まりない事態なのだが、背に腹はかえられない。
理久の訪問はなにがなんでも避けたい棗は、苦肉の策で実家に帰り、朋志宛のバレンタインチョコを受け取ることにしたのだ。
実家に帰って、恵吾と理久が作ったお菓子だけをもらって帰る。皿はいらないので置いていく。朋志との愛の巣に、理久が作った食器なんぞをこれ以上持ち込まれるのはぜひとも避けなければならない。理久からもらったカップで紅茶を飲んでいる朋志の姿は、棗にとって、可愛いと憎いが同時に視界に飛び込んできて、愛憎入り混じったカオス空間になるのだ。精神衛生上よくない。
平日の下りは高速も空いていたので、秒で実家に着いた。そして秒で帰る。
出迎えは恵吾がしてくれた。
「おかえりなさい、理人さん」
「恵吾さん、ただいまですが、またすぐに帰ります、ろくな挨拶もせずすみません」
恵吾が用意してくれたお茶を飲みながら言う。
「いいえ、私は受け取ってもらえるだけで嬉しいです。でも、理久さんは不満そうでしたよ。今はちょっと作業中です。呼んできましょうか」
「せめて恵吾さん一人で作ってください。そうしたら喜んで受け取れます。いいえ、呼んでいただく必要はありません」
「ふふ、わかりました」
恵吾が棗の向かいに座る。
「僕はこれでも嫉妬でグレアをところ構わず放出するような状態をコントロールして乗り越えないといけないと思っているのですが、まだ達観はできません」
「私は嬉しいですよ」
恵吾がのんびりお茶を飲みながら言う。
「理人さんは子どもの頃から物わかりが良くて大人びていて、落ち着き過ぎていると感じることがあったから…」
「僕もこんなに独占欲が強いとは思っていませんでした。それでも朋志さんが受け入れてくれて…、感謝してもしきれません」
「トモくんはどんなDomが近くにいても理人さんしか見ていないと思いますよ」
「わかっていても近くにDomがいるとだめです。特にあの二人は油断も隙もありませんから」
「ふふふ確かに!」
「でしょう。実家に帰るのが苦痛になるなんて思いもしませんでした」
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