【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

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日常系

星の涙、静寂に秘めた光 1


 「ぁ…素敵です」
 「綺麗ですねぇ」
 二人は、光の舞を踊る、小さな星に目を奪われていた。
 棗が隣に座る朋志を見つめる。
 「朋志さん」
 「はい」
 「今夜は特別なことをしてみませんか」
 『特別』と言われて朋志の頬に朱が走った。



 週末を利用して棗と朋志は、キャンプ場に来ていた。
 話を持ちかけたのは棗からだ。
 「蛍を見に行きませんか」
 「蛍ですか」
 「はい、週末は晴れるみたいですし、ここのところ朋志さんに家事を任せきりになってしまっているので、息抜きもかねてキャンプでも行きませんか」
 「! 行きます!」
 棗は繁忙期に入っていて、もうすぐ終わりが見えているのだが、帰りが遅い日が続き、朋志が料理や掃除など家事全般を担っている。朋志はそれを苦に思っていないのだが、棗とのキャンプはぜひとも行きたい。
 二つ返事で決まった。

 行き先は二人で決めた。朋志は、ダイナミクスが不調になる前は、低い山だが登山も、キャンプにもよく足を運んだ。その頃を思い出しながら地図を広げて、スマホで情報を検索しながら何か所かに印をつける。運転するのは棗なので、交通の便や運転しやすそうな場所を選んでもらう。
 「朋志さんが気になっているところはどこですか」
 「え、棗さんが行きやすいところを決めてくれてたらいいのに…」
 「僕は朋志さんに決めて欲しいです」
 「…じゃあ、ここにしませんか」
 「ええ」
 一緒に暮らし始めて数ヶ月経っても、朋志にとって週末は特別だ。朋志ゆりも多忙な棗と一緒に過ごせるからだ。もちろん、日々に起こる些細なことにも『幸せだなぁ』と感じることは多い。
 最初は生活の変化に対応しようと知らず力を入れすぎ、体調を崩すこともあったが、それらを越えて今は程よく力が抜けて日々を楽しんでいる。ようするに、浮かれていた。
 
 棗とのキャンプをご褒美に今週の仕事を頑張った。当日は快晴で、起きたときから浮足立つのを止められず、そわそわしているうちに出発の時間だ。
 「荷物は僕が積みます」
 「手伝いますよ」
 「二人分なのでそこまで多くないので大丈夫ですよ。朋志さんは
先に乗り込んでいてください」
 「はい、ありがとうございます」
 エスコートされながら助手席に座る。棗は手早く荷物を積んで運転席に乗り込んだ。
 「おまたせしました」
 「いいえ、ありがとうございます」
  そうして発車し、流れる景色や風が気持ちよかった。少し気温は高いが、山の中に入る頃には風が涼しく感じられるほどだった。
 到着すると、「荷物は僕がおろします」と言って、さっさと積み下ろした。
 「あ、ありがとうございます」
 朋志はそんな棗のようすに不思議に思いながら、棗なりに楽しみにしてくれているのかもと思うと知らず笑みがこぼれた。
 朋志は慣れたようすでテントを組み立て始めた。
 「朋志さん、手伝うところはありますか」
 「はい、この端を支えてください」
 二人用のテントなので、それほど時間もかからない。
 周りを散策したあとは、棗が家から淹れてきた紅茶を飲んで寛ぐ。鳥の鳴き声が遠くに聞こえ、ゆっくりとした時間だった。
 隣に座る棗も、リラックスしている。
 ーーー 夢みたいだ。
 体力が落ちてからはめっきり行かなくなっていた。棗と一緒に暮らし始めてから散歩は続けているが、料理教室に通ったりとインドアなことをしていた。進んでしていることなのでそれでいいのだが、いつか一緒に行きたいと思っていたので、棗から誘ってれるなんて。
 隣に座る棗に手を重ねると、朋志の方に顔を向ける。その目は優しい。
 「棗さん」
 「はい」
 「誘ってくれてありがとうございます」
 「いいえ、朋志さんが喜んでくれて、僕も嬉しいです」
 重ねた朋志の指に絡む長い指。甲を撫でられて、屋外でこんなことをしていることに気付いた。
 「あ…」
 「大丈夫です。誰も見ていませんよ」
 緊張で固くなった朋志の手を長い指が労るように撫でる。
 周りを見みると、他にもキャンプに来ている人達はいたが、みんなそれぞれ楽しんでいる。思ったより離れていたので棗が言うように、誰も見ていなかった。ホッと力が抜ける。
 「はい」
 そんな朋志を棗は目を細めて見ていた。
 
 少し早い夕食を済ませて、辺りを散策しながら蛍を見るため川辺へと向かった。人の多いスポットから離れたところだが、蛍が飛ぶにはちょうど良さそうな場所だった。辺りは暗い。遠くでは家族連れのキャンパーが朋志たちと同じように蛍を待っている声が聞こえる。それも気にならない。朋志は、綺麗に見える星空を眺めていた。ふと、眼の前を横切る光があり、目で追いかける。
 「あ…すごい…素敵です」
 「綺麗ですねぇ」
 蛍だ。
 一匹だと思ったものが、どこから来たのか次々と光が現れ、闇に思い思いの曲線を描く。まるで星空が降りてきたようだった。
 二人は無言でその光景を眺めた。自然が織りなす美しさに、言葉は必要なかった。
 こんな綺麗な蛍を棗と見られるなんて。棗はいつも『特別』をくれる。
 棗の手をしっかりと握りしめる。今は誰も見ていない。でも、見られても構わない。
 棗も朋志に寄り添いながら、しっかりと握り返してくれた。心が一つになれたようで『幸せだなぁ』とふわふわした気持ちを噛み締めていた。







※『星の涙、静寂に秘めた光 2』は、【日常系※R-18】へ。『1』だけでも完結できますが、蛇足的に『2』に続きます。
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