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第11章・銃口の行方
#2
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「ご苦労様です。完成しましたか?」
「……ここにあるよ」
唯人はそう言って、小さな瓶を江戸川に差し出した。
そして、両手を縛られ床に座り込んでいる要に気づいて、慌てて駆け寄った。
「要さん!」
「唯人君」
ケガは?と、心配そうに覗き込む唯人に、要は「大丈夫」と笑った。
「約束だよ江戸川。要さんを自由にしてあげて」
「いいですけど……これは本当に、あなたが教えてもらった通りに作った薬でしょうね?」
それを聞いて、唯人は怒ったように声を荒げた。
「僕は教えられた通りに作っただけだ!おかしなことはしてない。それよりも」
「だとしたら、この薬の効果が本物かどうか――まずはそれを試してみたいですね」
「え?」
嫌な予感に唯人は顔を曇らせた。要も思わず息を飲む。
「まさか……要さんに使う気じゃ――」
「それもいいですけど、もっとうってつけの人間がここにはいるんですよ」
その言葉に、要はハッとした。
「ねぇ。薬は出来たんでしょう?早く」
そう言って姿を見せた円香を見て、要は思わず叫んだ。
「逃げろ!!この男はアンタを――ウッ!?」
江戸川は要の腹部を思い切り蹴り上げると、素早く円香の腕を掴んで引き寄せた。
「なに!?」
円香は何が起きたのか分からず混乱した。
江戸川は円香を羽交い絞めにしたまま、小瓶の中身を素早く注射器で吸い上げて、それを円香の首元に突き立てた。
「何するの!?」
「面白い物を見せてやるって言ったろ?今それを見せてやる」
「やめて江戸川!!」
唯人は狂ったように叫んだ。
小瓶の中身は、全て注射器の中だった。
そんな大量に……しかもあの濃度では――
「やめて!いやぁぁぁ!!」
円香は絶叫した。
逃げようと必死にもがくが、江戸川はきつく抑え込んだまま、中身をすべて注入すると、素早く注射器を引き抜いて円香から離れた。
一瞬の静寂があった。
が、次の瞬間――――突然獣のような唸り声をあげて、円香がもがき始めた。
「グォォォ!!グォォォォ!!」
カっと目を見開き、顔面が真っ赤に充血し、喉を激しく掻きむしる。
口から大量の血泡を吹き出して、のたうち回る円香の姿に、唯人も要も唖然となった。
苦しそうに手足をバタつかせ、床の上のをたうち回る円香の姿は、凡そ人の苦しみ方とは思えない姿だった。
「――っ!」
唯人は目を閉じて、思わず顔をそむけた。要は恐ろしさに身動きできず、その様子をただ呆然と見つめていた。
「これが……これが【眠り姫】の――【野獣の薔薇】の効果……?」
要はそう呟いて、唯人を見た。
(これが、本当にこの子が作った薬なのか?マインドコントロールって……この状態で?)
唯人はしかし、あまりの恐怖で言葉も出なかった。
恐ろしさに体が震え、叫び声に耳を塞ぐ。
江戸川は、そんな円香の様子を冷ややかに見下ろしていた。
空になった注射器を床に放り、苦しみもがく円香を見て薄く笑う。
「……どういうことだ?これが本当に薬の効果なのか?」
要はそう呟くと、傍に座り込んでいた唯人に向かって言った。
「アレは本当に君が作った薬なのか?何か別の――別の薬じゃないのか?」
「確かに彼の作った薬ですよ……」
江戸川はそう言うと、手元に残った空の小瓶を見た。
「ただし、多少濃度は違いますが――」
「なんだって?」
「――それは原液そのものだよ……」
唯人はそう呟くと、恐ろしい物を見るように江戸川を見た。
「それは20倍に薄めて使うんだ。それでも強いって聞いた。それを――そのまま全部使うなんて!」
「そんな……」
要は震える声で円香を見た。
円香は大量の血泡を吹き、両目を開いたまま微動だにしなくなった。
暴れ過ぎたのか、着ていた服は千切れ、スカートから剥き出しになった両足が乱暴に扱われた人形の様に床の上に放り出されている。
それは、つい先程まで艶やかに微笑んでいた女とは思えないほど、惨めで無残極まりない姿だった。
「し……死んだのか?」
要の言葉に江戸川は円香の傍にしゃがむと、力を失った腕を取って静かに頷いた。
「ひどい……どうしてこんなこと……」
唯人は立ち上がって江戸川に走り寄ると、その腕を掴んで言った。
「なんであんなひどい事!」
「唯人君!そいつに近づいちゃダメだ!」
要に止められ、唯人は振り向いた。
「なんで?」
「その男は江戸川千景なんかじゃない。本当は北岡誠一郎という、恐ろしい復讐鬼なんだよ!」
「北岡、誠一郎?」
答えを求めるように、自分を見上げる唯人に、江戸川は言った。
「昔話をしてあげますよ、唯人さん。私が、ちょうどあなたぐらいだった頃の――遠い昔の話だ」
「……ここにあるよ」
唯人はそう言って、小さな瓶を江戸川に差し出した。
そして、両手を縛られ床に座り込んでいる要に気づいて、慌てて駆け寄った。
「要さん!」
「唯人君」
ケガは?と、心配そうに覗き込む唯人に、要は「大丈夫」と笑った。
「約束だよ江戸川。要さんを自由にしてあげて」
「いいですけど……これは本当に、あなたが教えてもらった通りに作った薬でしょうね?」
それを聞いて、唯人は怒ったように声を荒げた。
「僕は教えられた通りに作っただけだ!おかしなことはしてない。それよりも」
「だとしたら、この薬の効果が本物かどうか――まずはそれを試してみたいですね」
「え?」
嫌な予感に唯人は顔を曇らせた。要も思わず息を飲む。
「まさか……要さんに使う気じゃ――」
「それもいいですけど、もっとうってつけの人間がここにはいるんですよ」
その言葉に、要はハッとした。
「ねぇ。薬は出来たんでしょう?早く」
そう言って姿を見せた円香を見て、要は思わず叫んだ。
「逃げろ!!この男はアンタを――ウッ!?」
江戸川は要の腹部を思い切り蹴り上げると、素早く円香の腕を掴んで引き寄せた。
「なに!?」
円香は何が起きたのか分からず混乱した。
江戸川は円香を羽交い絞めにしたまま、小瓶の中身を素早く注射器で吸い上げて、それを円香の首元に突き立てた。
「何するの!?」
「面白い物を見せてやるって言ったろ?今それを見せてやる」
「やめて江戸川!!」
唯人は狂ったように叫んだ。
小瓶の中身は、全て注射器の中だった。
そんな大量に……しかもあの濃度では――
「やめて!いやぁぁぁ!!」
円香は絶叫した。
逃げようと必死にもがくが、江戸川はきつく抑え込んだまま、中身をすべて注入すると、素早く注射器を引き抜いて円香から離れた。
一瞬の静寂があった。
が、次の瞬間――――突然獣のような唸り声をあげて、円香がもがき始めた。
「グォォォ!!グォォォォ!!」
カっと目を見開き、顔面が真っ赤に充血し、喉を激しく掻きむしる。
口から大量の血泡を吹き出して、のたうち回る円香の姿に、唯人も要も唖然となった。
苦しそうに手足をバタつかせ、床の上のをたうち回る円香の姿は、凡そ人の苦しみ方とは思えない姿だった。
「――っ!」
唯人は目を閉じて、思わず顔をそむけた。要は恐ろしさに身動きできず、その様子をただ呆然と見つめていた。
「これが……これが【眠り姫】の――【野獣の薔薇】の効果……?」
要はそう呟いて、唯人を見た。
(これが、本当にこの子が作った薬なのか?マインドコントロールって……この状態で?)
唯人はしかし、あまりの恐怖で言葉も出なかった。
恐ろしさに体が震え、叫び声に耳を塞ぐ。
江戸川は、そんな円香の様子を冷ややかに見下ろしていた。
空になった注射器を床に放り、苦しみもがく円香を見て薄く笑う。
「……どういうことだ?これが本当に薬の効果なのか?」
要はそう呟くと、傍に座り込んでいた唯人に向かって言った。
「アレは本当に君が作った薬なのか?何か別の――別の薬じゃないのか?」
「確かに彼の作った薬ですよ……」
江戸川はそう言うと、手元に残った空の小瓶を見た。
「ただし、多少濃度は違いますが――」
「なんだって?」
「――それは原液そのものだよ……」
唯人はそう呟くと、恐ろしい物を見るように江戸川を見た。
「それは20倍に薄めて使うんだ。それでも強いって聞いた。それを――そのまま全部使うなんて!」
「そんな……」
要は震える声で円香を見た。
円香は大量の血泡を吹き、両目を開いたまま微動だにしなくなった。
暴れ過ぎたのか、着ていた服は千切れ、スカートから剥き出しになった両足が乱暴に扱われた人形の様に床の上に放り出されている。
それは、つい先程まで艶やかに微笑んでいた女とは思えないほど、惨めで無残極まりない姿だった。
「し……死んだのか?」
要の言葉に江戸川は円香の傍にしゃがむと、力を失った腕を取って静かに頷いた。
「ひどい……どうしてこんなこと……」
唯人は立ち上がって江戸川に走り寄ると、その腕を掴んで言った。
「なんであんなひどい事!」
「唯人君!そいつに近づいちゃダメだ!」
要に止められ、唯人は振り向いた。
「なんで?」
「その男は江戸川千景なんかじゃない。本当は北岡誠一郎という、恐ろしい復讐鬼なんだよ!」
「北岡、誠一郎?」
答えを求めるように、自分を見上げる唯人に、江戸川は言った。
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