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第8章・生滅
#6
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「宇佐美――――ッ!!」
突然、激しい衝撃を受けて、宇佐美は背中から床に倒れ込んだ。と同時に、凄まじい屋鳴りがして、辺りが大きく揺れる。
体の痛みを感じるよりも早く、宇佐美は野崎に抱き起されると、そのまま屋外へと連れ出された。
外に飛び出すのとほぼ同時に、家屋が一気に倒壊する。野崎は、猛烈な勢いで襲い掛かってくる瓦礫から宇佐美を庇う様に蹲った。
――
――――
――――――どのくらい、時間が経っただろう。
野崎は咳き込みながら、体に付いた瓦礫の破片を振り払うと、足元に蹲る宇佐美を抱き起した。
「おい……大丈夫か?」
「ッ!」
宇佐美も激しく咳き込むと、しばらく苦しそうに肩で息をついた。そして喉をさすりながら野崎を見ると、微かに笑ってみせる。
「よかった……」
それを見てホッと息をつくと、野崎はその場に座り込んだ。
「まったく……自分が何をしようとしてたか分かってるのか⁉」
「ごめん……」
俯いて軽く咳き込む宇佐美に、野崎は言った。
「お前の意思じゃないと思いたいけど……あと少し駆けつけるのが遅かったら――」
そう思うとゾッとする……という様に首を振る。そして、すっかり崩れ落ちた家屋の残骸を見て言った。
「ヤツには会えたのか?」
宇佐美は黙って頷いた。
「そうか……」
そう呟いて再び問いかける。
「ヤツは?消えたの?」
その問いに、宇佐美は「分からない……」と首を振った。
「成仏したのかな……」
野崎の呟きに、宇佐美は「死神は成仏なんてしない」と言って、かつて家があったその場所をじっと見つめた。
「死にたいと思う人の数だけ存在するんだ」
時に姿を変え、形を変え――弱い人の心に忍び寄る。
あれは、自分が見た死神の姿。
父の姿をした、弱い自分の姿だ――
項垂れる宇佐美を見て、野崎は言った。
「ヤツは目的を果たした訳じゃないのか――なら……また俺たちの前に現れるんじゃ?」
「かもね……執念深いヤツだから、俺が死ぬまで諦めないかも」
力なく笑う宇佐美を見て、野崎は「そうか……それは困ったな……」と言って苦笑した。
「お前が死のうとするたびに駆けつけるわけにもいかないし……」
どうしたもんかな……
そう呟いてしばらく黙っていたが、「でも――」と言って宇佐美を見た。
「お前の所に死神が現れない方法がひとつだけあるよ」
野崎は言った。
「自分を許してやることだよ、宇佐美」
「……」
宇佐美の肩が微かに震えた。
「母親が死んだのはお前のせいじゃない。お前が傍にいてもいなくても……結果は変わらなかったと俺は思う」
「……」
「ヤツが殺したかどうかなんて俺には分からない。でも、お母さんは心を病んでいた。死にたいと思う人間を、救うことは難しい……どんなに救いたくても救えないことだってある」
宇佐美は野崎を見上げた。
「例えそれが医者でも……息子であっても――」
「……」
じっと自分を見上げる宇佐美の目を見て、野崎は言った。
「それでも自分なら何とかできたって思うか?なら思い上がるなよ。お前の能力は万能じゃない。現にお前も死のうとしてた。俺が止めなきゃ――今頃あそこで首括ってた」
「……野崎さん」
「彼女の事は俺には分からないけど……でも彼女はお前を責めたりしたか?」
宇佐美は黙って俯いた。
「お母さんは?お前を責めた?責めてないよな……俺だってそうだ」
「……」
「誰もお前を責めてない。お前はもう十分苦しんだ。そうだろう?だからもう許してやれよ」
「野崎さん……」
「お前は悪くない」
「……」
「お前のせいじゃない――」
宇佐美は、溢れる涙を必死に拭った。その様子に野崎は小さく笑うと、「そういえば、まだ言ってなかったな」と呟いて、誇りまみれの宇佐美の頭を軽く撫でて言った。
「誕生日おめでとう」
「――」
その言葉に、宇佐美は堪え切れず声を上げて泣いた。
闇の中から光の方へ這い出して叫ぶ――
それはまるで、この世に生を受けて初めて上げる産声のようだった。
野崎は何も言わず。
ただ、赤子のように泣きじゃくる宇佐美の肩を優しく抱き寄せた。
木々の隙間から覗く青空をそっと見上げる。
張り詰めていた空気が、ほんの少し緩んだような気がした。
突然、激しい衝撃を受けて、宇佐美は背中から床に倒れ込んだ。と同時に、凄まじい屋鳴りがして、辺りが大きく揺れる。
体の痛みを感じるよりも早く、宇佐美は野崎に抱き起されると、そのまま屋外へと連れ出された。
外に飛び出すのとほぼ同時に、家屋が一気に倒壊する。野崎は、猛烈な勢いで襲い掛かってくる瓦礫から宇佐美を庇う様に蹲った。
――
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――――――どのくらい、時間が経っただろう。
野崎は咳き込みながら、体に付いた瓦礫の破片を振り払うと、足元に蹲る宇佐美を抱き起した。
「おい……大丈夫か?」
「ッ!」
宇佐美も激しく咳き込むと、しばらく苦しそうに肩で息をついた。そして喉をさすりながら野崎を見ると、微かに笑ってみせる。
「よかった……」
それを見てホッと息をつくと、野崎はその場に座り込んだ。
「まったく……自分が何をしようとしてたか分かってるのか⁉」
「ごめん……」
俯いて軽く咳き込む宇佐美に、野崎は言った。
「お前の意思じゃないと思いたいけど……あと少し駆けつけるのが遅かったら――」
そう思うとゾッとする……という様に首を振る。そして、すっかり崩れ落ちた家屋の残骸を見て言った。
「ヤツには会えたのか?」
宇佐美は黙って頷いた。
「そうか……」
そう呟いて再び問いかける。
「ヤツは?消えたの?」
その問いに、宇佐美は「分からない……」と首を振った。
「成仏したのかな……」
野崎の呟きに、宇佐美は「死神は成仏なんてしない」と言って、かつて家があったその場所をじっと見つめた。
「死にたいと思う人の数だけ存在するんだ」
時に姿を変え、形を変え――弱い人の心に忍び寄る。
あれは、自分が見た死神の姿。
父の姿をした、弱い自分の姿だ――
項垂れる宇佐美を見て、野崎は言った。
「ヤツは目的を果たした訳じゃないのか――なら……また俺たちの前に現れるんじゃ?」
「かもね……執念深いヤツだから、俺が死ぬまで諦めないかも」
力なく笑う宇佐美を見て、野崎は「そうか……それは困ったな……」と言って苦笑した。
「お前が死のうとするたびに駆けつけるわけにもいかないし……」
どうしたもんかな……
そう呟いてしばらく黙っていたが、「でも――」と言って宇佐美を見た。
「お前の所に死神が現れない方法がひとつだけあるよ」
野崎は言った。
「自分を許してやることだよ、宇佐美」
「……」
宇佐美の肩が微かに震えた。
「母親が死んだのはお前のせいじゃない。お前が傍にいてもいなくても……結果は変わらなかったと俺は思う」
「……」
「ヤツが殺したかどうかなんて俺には分からない。でも、お母さんは心を病んでいた。死にたいと思う人間を、救うことは難しい……どんなに救いたくても救えないことだってある」
宇佐美は野崎を見上げた。
「例えそれが医者でも……息子であっても――」
「……」
じっと自分を見上げる宇佐美の目を見て、野崎は言った。
「それでも自分なら何とかできたって思うか?なら思い上がるなよ。お前の能力は万能じゃない。現にお前も死のうとしてた。俺が止めなきゃ――今頃あそこで首括ってた」
「……野崎さん」
「彼女の事は俺には分からないけど……でも彼女はお前を責めたりしたか?」
宇佐美は黙って俯いた。
「お母さんは?お前を責めた?責めてないよな……俺だってそうだ」
「……」
「誰もお前を責めてない。お前はもう十分苦しんだ。そうだろう?だからもう許してやれよ」
「野崎さん……」
「お前は悪くない」
「……」
「お前のせいじゃない――」
宇佐美は、溢れる涙を必死に拭った。その様子に野崎は小さく笑うと、「そういえば、まだ言ってなかったな」と呟いて、誇りまみれの宇佐美の頭を軽く撫でて言った。
「誕生日おめでとう」
「――」
その言葉に、宇佐美は堪え切れず声を上げて泣いた。
闇の中から光の方へ這い出して叫ぶ――
それはまるで、この世に生を受けて初めて上げる産声のようだった。
野崎は何も言わず。
ただ、赤子のように泣きじゃくる宇佐美の肩を優しく抱き寄せた。
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張り詰めていた空気が、ほんの少し緩んだような気がした。
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