13 / 17
7 裁判①
しおりを挟む
裁判。
それは罪の疑いのある被告人に対し執り行われる、真偽の裁定。
これにより被告は有罪か無罪か、あるいはどれほどの罰を課せられるか決められる。
そう、俺のことだ。
「ユリウス様! このガキ、絶対に許してはなりません!」
桃色の髪の女が、一際大物そうな男に向かって話しかける。
いや、話しかけるというより叫びかけるとでも言った方が正しいかもしれない。
「アリア、まずは落ち着け。詳しい話を聞かない限りには、俺もどうすることもできん」
「落ち着いてられません! コイツ、浴場で欲情してたんですよ!」
嘘だろ。俺、そんな洒落みたいな罪状で裁かれるの?
騎士に抑えつけられ、膝をつく俺は絶望した。
「フム、君が彼女たちの風呂場に立ち入ったというのは本当か?」
「ほ、本当です」
ユリウス。そう呼ばれている騎士の凄みに、怯みながら答える。
「いや、それ以前に、どうやってここに入ってきた?」
「……」
言えない。
まがりなりにも、兄が世話になる師匠。
その職場で身内が忍び込んで問題を起こしたと知ったら、兄さんはどうするだろうか。
間違いなく、俺の首を飛ばす。
このことは、墓場まで持っていかなければならないのだ。
「黙秘、か……仕方ない、適当なところに放っておこう」
「なっ!? ユリウス様、そんな甘くて良いのですか! ライラの身を汚した人間ですよ! 極刑です、極刑!」
桃色髪は、腕を大きく振り上げながら訴えると、隣を指した。
そこには赤色の髪のその人がいた。
そう、俺の真正面に居た第一被害者の彼女だ。
今は何故か、巻かれた布のせいで瞳が見えない。
それでも、風格から絶対的な可憐さを感じた。
「ライラ! ライラは良いの?」
「私は……別に。彼も、悪意がありそうじゃなかったし……」
天使だ。
天から舞い降りた、慈悲と慈愛の御使いだ。
思わず涙がちょちょぎれる。
「し、正気じゃない……! 王国騎士団一番隊副隊長、齢十九にしての鬼才、人間国宝よ!」
おそらく、この場で一番正しいのは桃色髪の奴だ。
他がおかしいのだ。普通、極刑にされたっておかしくないくらいのことを俺はしている。
ユリウスは徐に口を開いた。
「ライラも許すと言っているんだ、多めに見てはくれないか。相手は子供じゃないか」
「子供がなんですか……もしかしたら敵国のスパイかもしれませんよ!」
「女風呂を覗くために騎士団に潜入するスパイがいるなら、是非ともお目にかかってみたいものだな」
それは確かに。
それからしばらくして、俺の処遇は決まった。
「——この少年はひとまず禁固刑としておく。処遇は魔術師の奴らに任せておこう」
「了解しました、隊長」
俺を拘束していた騎士たちは、敬礼をすると俺の腕を引っ張り上げた。
「奴らは確か人体実験の材料を欲しがっていたみたいだし、そうなるのならそれもまた一興だろう」
「……え?」
今、何かとても物騒なことを言わなかったか?
人体実験の材料?
もしかして、臓器を取られたり、皮膚を剥がされたり、機械人間にされちゃったり?
瞬間、ユリウスの瞳の奥に冷徹な光がゆらめいた。
——ああ、分かった。
こいつ、見た目からは想像できないくらい、中身がヤバい類の奴だ。
優しげな言葉遣いも、態度も、全ては中身を隠すためのカモフラージュ。
そうなるのならそれもまた一興だろう、だって?
普通に零興だろ、零興。
そんな心中も虚しく、屈強な騎士たちに俺は連行されていく。
「——グエっ!」
床に放り投げられた。
起きあがろうとして、それができないことに気づく。
「なんだぁ、これ?」
「重力増強装置が稼働している訓練部屋だ。常人では起き上がることもできない」
せいぜいそこで待っていることだな。
そう言って騎士たちは去っていった。
「……これは、拙いことになったなあ……」
床に張り付きながら、俺は虚しく呟いた。
それは罪の疑いのある被告人に対し執り行われる、真偽の裁定。
これにより被告は有罪か無罪か、あるいはどれほどの罰を課せられるか決められる。
そう、俺のことだ。
「ユリウス様! このガキ、絶対に許してはなりません!」
桃色の髪の女が、一際大物そうな男に向かって話しかける。
いや、話しかけるというより叫びかけるとでも言った方が正しいかもしれない。
「アリア、まずは落ち着け。詳しい話を聞かない限りには、俺もどうすることもできん」
「落ち着いてられません! コイツ、浴場で欲情してたんですよ!」
嘘だろ。俺、そんな洒落みたいな罪状で裁かれるの?
騎士に抑えつけられ、膝をつく俺は絶望した。
「フム、君が彼女たちの風呂場に立ち入ったというのは本当か?」
「ほ、本当です」
ユリウス。そう呼ばれている騎士の凄みに、怯みながら答える。
「いや、それ以前に、どうやってここに入ってきた?」
「……」
言えない。
まがりなりにも、兄が世話になる師匠。
その職場で身内が忍び込んで問題を起こしたと知ったら、兄さんはどうするだろうか。
間違いなく、俺の首を飛ばす。
このことは、墓場まで持っていかなければならないのだ。
「黙秘、か……仕方ない、適当なところに放っておこう」
「なっ!? ユリウス様、そんな甘くて良いのですか! ライラの身を汚した人間ですよ! 極刑です、極刑!」
桃色髪は、腕を大きく振り上げながら訴えると、隣を指した。
そこには赤色の髪のその人がいた。
そう、俺の真正面に居た第一被害者の彼女だ。
今は何故か、巻かれた布のせいで瞳が見えない。
それでも、風格から絶対的な可憐さを感じた。
「ライラ! ライラは良いの?」
「私は……別に。彼も、悪意がありそうじゃなかったし……」
天使だ。
天から舞い降りた、慈悲と慈愛の御使いだ。
思わず涙がちょちょぎれる。
「し、正気じゃない……! 王国騎士団一番隊副隊長、齢十九にしての鬼才、人間国宝よ!」
おそらく、この場で一番正しいのは桃色髪の奴だ。
他がおかしいのだ。普通、極刑にされたっておかしくないくらいのことを俺はしている。
ユリウスは徐に口を開いた。
「ライラも許すと言っているんだ、多めに見てはくれないか。相手は子供じゃないか」
「子供がなんですか……もしかしたら敵国のスパイかもしれませんよ!」
「女風呂を覗くために騎士団に潜入するスパイがいるなら、是非ともお目にかかってみたいものだな」
それは確かに。
それからしばらくして、俺の処遇は決まった。
「——この少年はひとまず禁固刑としておく。処遇は魔術師の奴らに任せておこう」
「了解しました、隊長」
俺を拘束していた騎士たちは、敬礼をすると俺の腕を引っ張り上げた。
「奴らは確か人体実験の材料を欲しがっていたみたいだし、そうなるのならそれもまた一興だろう」
「……え?」
今、何かとても物騒なことを言わなかったか?
人体実験の材料?
もしかして、臓器を取られたり、皮膚を剥がされたり、機械人間にされちゃったり?
瞬間、ユリウスの瞳の奥に冷徹な光がゆらめいた。
——ああ、分かった。
こいつ、見た目からは想像できないくらい、中身がヤバい類の奴だ。
優しげな言葉遣いも、態度も、全ては中身を隠すためのカモフラージュ。
そうなるのならそれもまた一興だろう、だって?
普通に零興だろ、零興。
そんな心中も虚しく、屈強な騎士たちに俺は連行されていく。
「——グエっ!」
床に放り投げられた。
起きあがろうとして、それができないことに気づく。
「なんだぁ、これ?」
「重力増強装置が稼働している訓練部屋だ。常人では起き上がることもできない」
せいぜいそこで待っていることだな。
そう言って騎士たちは去っていった。
「……これは、拙いことになったなあ……」
床に張り付きながら、俺は虚しく呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる