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8 再開①
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「隊長。ユリウス一番隊隊長からの指令です」
「なんじゃ、クロム。遠征直後で疲れておるんじゃ、仕事は受け付けんぞ」
老爺——ルネ・クロード・クレマンは面倒くさげにため息をついた。
王国騎士団七番隊。通称『魔術師隊』はここ数日王都を離れていた。
遠くの地へ赴き、さまざまな問題解決、あるいは調査を行うのが遠征。
老人の体には負担の大きいその行程を終えて、ルネは一秒でも早く帰宅して休みたい気分だった。
「そう言われても、指令は指令です。こなさなければ、僕ら『魔術師隊』が潰れるだけでしょう」
「分かっておる。で、その指令とやらの内容は?」
「構内に忍び込んだ輩が居たそうです。訓練室に身柄を捕獲しているので、処理をしろと」
なんて無鉄砲なやつがいたもんだ。
「で、今の状態は?」
「三日前に禁錮して以来、何も確認していないとのことです」
「はあ!? それを先に言わんか!」
ルネは飛び上がって声を上擦らせた。
重力加重の訓練室は、常日頃体を鍛え続け、それでも物足りなさを感じる者に対して『魔術師隊』が発明した高級者向けの訓練装置だ。
常人が挑めば、指を動かせるようになるまでに一ヶ月はかかる。
三日もの間、あの重圧に攻め続けられ起き上がることすら許されなかったとしたら、その負担はどれほどのものになるだろうか。
しかも、食事も水分も与えられずにだ。
ひょっとしたら、命の危機に瀕している可能性があっても不思議ではない。
ルネは飛ぶように訓練室へと向かった。
「——あれ、誰か来た」
奥から声がする。
まだ息はあるようだ。
「おい、大丈夫か! 今助けるぞ!」
装置の重力加重設定を切る。
室内に続くドアを開け放って、ルネは中へと飛び入った。
「体の状態を教えろ! 痛むところは! 意識は! 呼吸、は……」
そして、絶句する。
——ゴールデンスライムの蜜を口に貼り付けている、その少年を目にして。
「「あ」」
お互いに、声が重なった。
魔術師、ルネ・クロード・クレマンは目を見張る。
勇者候補の出来損ない、レンジ・ベリオスは指をさす。
それは、感動的なまでに間抜けた再開だった。
「なんじゃ、クロム。遠征直後で疲れておるんじゃ、仕事は受け付けんぞ」
老爺——ルネ・クロード・クレマンは面倒くさげにため息をついた。
王国騎士団七番隊。通称『魔術師隊』はここ数日王都を離れていた。
遠くの地へ赴き、さまざまな問題解決、あるいは調査を行うのが遠征。
老人の体には負担の大きいその行程を終えて、ルネは一秒でも早く帰宅して休みたい気分だった。
「そう言われても、指令は指令です。こなさなければ、僕ら『魔術師隊』が潰れるだけでしょう」
「分かっておる。で、その指令とやらの内容は?」
「構内に忍び込んだ輩が居たそうです。訓練室に身柄を捕獲しているので、処理をしろと」
なんて無鉄砲なやつがいたもんだ。
「で、今の状態は?」
「三日前に禁錮して以来、何も確認していないとのことです」
「はあ!? それを先に言わんか!」
ルネは飛び上がって声を上擦らせた。
重力加重の訓練室は、常日頃体を鍛え続け、それでも物足りなさを感じる者に対して『魔術師隊』が発明した高級者向けの訓練装置だ。
常人が挑めば、指を動かせるようになるまでに一ヶ月はかかる。
三日もの間、あの重圧に攻め続けられ起き上がることすら許されなかったとしたら、その負担はどれほどのものになるだろうか。
しかも、食事も水分も与えられずにだ。
ひょっとしたら、命の危機に瀕している可能性があっても不思議ではない。
ルネは飛ぶように訓練室へと向かった。
「——あれ、誰か来た」
奥から声がする。
まだ息はあるようだ。
「おい、大丈夫か! 今助けるぞ!」
装置の重力加重設定を切る。
室内に続くドアを開け放って、ルネは中へと飛び入った。
「体の状態を教えろ! 痛むところは! 意識は! 呼吸、は……」
そして、絶句する。
——ゴールデンスライムの蜜を口に貼り付けている、その少年を目にして。
「「あ」」
お互いに、声が重なった。
魔術師、ルネ・クロード・クレマンは目を見張る。
勇者候補の出来損ない、レンジ・ベリオスは指をさす。
それは、感動的なまでに間抜けた再開だった。
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