小学生に戻ってるっ!?……の裏側で ~引きこもり高校生と入れ替わった小学生がいつの間にかハーレムを築いている話~

日々熟々

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11話 佐倉さんと二人きり

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 僕に話しかけてるわけじゃないと自分を信じ込ませて、返事をしないでみる。

 どう考えてもこの教室には僕と佐倉さんの二人しかいないんだけど、信じる者は救われると信じる。

「ちょっと……聞こえてんでしょ」

 さ、佐倉さんは誰に話しかけているんだろう?

 フシギダナー。

「ちょっと……無視するんじゃないわよっ!」

ドンッ!

「は、はいぃっ!」

 いつの間にやら近づいてきていた佐倉さんが僕の机を叩いた。

 流石にこうなったら気のせいだと思い込み続けるわけにもいかない……。

「あんた、私の事無視するとか立場分かってんの?」

「す、すみませんっ!!ま、まさか僕に話しかけてるとか思わなくてっ!!」

 実際には思いたくなかったんだけど、流石に口に出したら殴られそう。

 そう思うくらい佐倉さんは機嫌が悪く見える。

 変に無視しちゃったからだろうか……。

 こんなことなら最初から諦めて素直に返事しておけばよかった……。

「あ、あの……なにかご用でしょうか?
 か、傘なら野田くんに取られちゃってないです……」

 外はまだ土砂降りだし、佐倉さんが話しかけてくる理由なんてそれくらいしか思いつかない。

「は?野田くん傘持ってたわよね?
 なんで取られんのよ」

「は、はい……。
 僕にもよく分かんないです……」

 本当になんで取られたのか僕には意味が分かんない。

「…………情けな」

 …………うん、自分でもそう思う。

「ま、いいわ。
 ちょっとついてきなさい」

 あごをしゃくってそういう佐倉さん。

 大人しそうな見た目の佐倉さんだけど、こういう仕草が堂に入っているところなんかはイジメっ子グループなんだなぁ……と実感する。

「は、はい……分かりました……」

 この雰囲気、イジメられ慣れた勘が言ってる。

 絶対にろくな目に合わない。

 それが分かっていても、イジメっ子には逆らうことが出来ずについていくことしか出来なかった……。



 佐倉さんの後をついて、今まで来たことのなかった廊下を歩く。

 部活棟。

 部活に入っていない僕にはまるで縁のなかったところだ。

 この大雨でも室内でやる部活には関係ないらしくてまだ結構な数の生徒が残っていた。

 文化部だけじゃなくって筋トレをしている運動部の姿もちらほら見える。

 小学校では見たことなかった光景をちょっと物珍しい思いで見ながら廊下を歩く。

 『サッカー部』。

 佐倉さんが足を止めたドアにはそうプレートが張ってあった。

 サッカー部といえば松戸くんと野田くんが入っていて一宮さんも白井さんも佐倉さんも……というか、イジメっ子グループの女子全員がマネージャーをしている部活だけど……。

 ちなみに、館山くんは空手部らしい。

 松戸くんも野田くんもバンドの練習で帰っちゃってるし、部室自体明かりも消えて誰もいなさそうだけど……。

 なんなんだろう?と不思議に思っている僕の前で、ポケットから鍵を取り出した佐倉さんが部室のドアを開ける。

「ほら、入りなさいよ」

「で、でも……」

 イジメっ子と密室に入る。

 悪いことの起こる予感しかない言葉にどうしても怯んでしまう。

「……早く。
 動画……バラ撒くわよ?」

「は、はいっ!!」

 ただでさえイジメっ子には逆らえないのに、『ソレ』を出されたら言うことを聞くしか無い。

 僕と二人で部室に入った佐倉さんはドアにカギをかけると、ドアの窓の部分にカーテンのようなものをかけてから部室の電気をつけた。

 これでもう部室の中のことは誰にも気づいてもらえない……。

 悪い予感がどんどん増してきて、心臓が痛いくらいに鳴っている。

 部室の中は左右の壁にロッカーが所狭しと並んで、その間にベンチのような椅子が置いてあった。

 そして…………なんていうか臭い。

 佐倉さんもそう思っているのか、ちょっと顔をしかめている。

 外が土砂降りじゃなければ窓を開けて換気したそうだし、僕もしたい。

 そんなことを考えながら初めて見る部室を見回していると、佐倉さんが置いてあるベンチの上に腰を下ろした。

 そして…………そのままなにをするでもなく、スマホをいじりだした。

 …………えっと?

 結局僕はどうすれば良いんだろう?

 単に部室見せてくれただけ?

 そんなわけはないと思うんだけど、佐倉さんはなにも言わずにスマホ見てるし……。

 …………いや、あれ本当にスマホ見てるのかな?

 なんか指の動きがおかしい気がするし、目もキョロキョロ視線が定まってない気がする。

 一体何なんだろう……?

 どうしていいか分からず、ドアのところでボーッと突っ立っていると、ようやく佐倉さんが覚悟を決めたような感じで口を開く。

「そ、そこに立って」

 上ずった調子で短くそう言われたけど……。

「え、えっと……?」

 そこと言われても……。

「は、早くそこに立ってよ。
 逆らったら動画バラ撒くわよっ!」

 い、いや、逆らうと言うか意味が分からないだけなんだけど……。

 意味は分からないけど、動画のことを出されたからには言う通りにするしか無い……。

 なんか勘違いしてて怒られませんように……。

 そう祈りながら、佐倉さんの指す『そこ』、ベンチに座る佐倉さんの目の前に立つ。

「そ、そうよ、素直に言うこと聞けば動画はバラ撒かないであげるから……。
 こ、これから言うことに全部、し、従うのよ……」

 どうやら本当にここに立てってことで良かったみたいで、怒られはしなかったけど……。

 その代わりと言うんなんというか、更に怖いことをいい出した。

「い、言う事……ですか?」

「そ、そうよ……だ、黙って素直に言うこと聞いてるうちは動画バラ撒かないであげる」

 重ねて動画のことを持ち出して念入りに脅された……。

 佐倉さんも緊張している様子だし、なにさせられるんだろう……。

 ほ、骨とか折られちゃうのかな……。

 あんまり痛いことじゃありませんように……そう祈る僕のすぐ斜め下で、佐倉さんが何度か口をパクパクさせてためらったあと、命令を口にした。

「パ、パンツおろして」

 へ?

 パンツって…………あ、ああ、女子はズボンのことパンツっていうんだっけ?

 前なんかで読んだことある。

 え?でもなんでズボン下ろすの?

「早くっ!」

 意味が分からないでいる僕を、なぜか切羽詰まった様子で怒鳴りつけた。

 また「間違ってませんよーに」と祈りながらベルトを外して制服のズボンを下ろす。

 ベンチに座る佐倉さんのすぐ前に僕立ってるから、な、なんていうか……ボクサーパンツの股間がさくらさんの顔のすぐ前に来ちゃってるけど……本当にこれでいいんだろうか?

 もし違って、怒った佐倉さんに目の前のものを殴られでもしたら……。

 恐ろしすぎる想像にタマタマがキュッとしたのが分かる。

 でも、そんな心配をよそに、佐倉さんは黙って目の前のパンツを見つめているように見える。

 うぅ……ウェストサイズだけで選んだからなんていうか……パツパツに膨らんでるから恥ずかしいんだけど……。

「な、なにしてるのよ……早く脱いで」

「え?」

 見えてる通りズボンは脱いだけど……。

 やけに目の前のパンツを凝視しているし佐倉さん急に目が見えなくなった?

「早くパンツ脱いでってばっ!!
 動画バラ撒くわよっ!?」

 キレた様子の佐倉さんに重ねて言われて、さらに動画のことも出されてようやく分かった。

 なるほど、つまり今日のイジメは撮影会ということか……。

 ようやく納得がいった。

 たしかに動画撮影なら佐倉さん一人でも問題ないから、こっそり僕の弱味を増やしておこうってことなんだろう。

 さらに言えば、僕に「お前はイジメられっ子なんだぞ」と忘れないようにする意味もあるのかもしれない。

 本当に松戸くんは性格が悪い。
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