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17話 それぞれの夜

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 寮に帰ったらまた遥くんにクンクンニオイを嗅がれた。

「あ、あの……僕臭い?」

 今まではそんなに気にしたことなかったけど、今日は散々臭い臭い言われたので、どうしても気になってしまった。

「普段はいい匂いだけど、今日は臭い」

 恐る恐る聞いた僕に、遥くんはピシャリと言い切った。

 すごい不機嫌そうな顔で言われてしまった……。

 そっか……僕やっぱり臭いんだ……。

「臭いから今日はこのままシャワー浴びよう」

 不機嫌そうなままの遥くんに手を引かれてシャワー室に入る。

 今日は遥くんにお願いして、特に念入りに洗ってもらった。

 何故かすごい嬉しそうに洗ってくれた。



 お風呂から上がった後、寝る前のお兄ちゃんタイム。

 そこでも聞いてみたけど、『大丈夫、そんな事無いから心配するな』と励まされてしまった。

 これは……本当か気を使っているのかどっちだろう……。

 自分のニオイは自分では分からないって聞いたことあるけど……本当なんだろうか?

 すごい怖い。



 ――――――――



 優太とおやすみの挨拶をしてスマホを切る。

 今日の優太の様子は明らかにおかしかった。

 学校に入ってすぐに友だちが出来たみたいで、しばらくは楽しそうに報告をしてきてくれていたんだけど、今日はやたらと自分のニオイを気にしていた。

 実際に変な臭いはしないのでそう伝えたのだが、それでも何度も何度もしつこく臭くないか確認をしてきた。

 これは間違いなく誰かに臭いと言われたのだろう。

 …………またイジメにあっているんじゃないだろうか?

 高校に入ってからやけに明るい話しかしてこないから、かえって不安には思っていた。

 優太は記憶と同時に知識的なものも失ってしまっていて、元々不登校であったせいもあって高校の勉強について行けるとは思えない。

 それなのにそのことには一切触れずに「学校は楽しい」と繰り返すのだ。

 不安に思わないわけがない。

 もしかしたら、友達が出来たという話も嘘なのかもしれない。

 それどころか前と同じくイジメを受けているのではないだろうか……。

 そう考えたとき、優太が自殺したと聞いた時の恐怖が蘇ってくる。

 …………一刻も早く部屋を見つけないと。

 実際にどうするかは優太次第としても、もしもの時に逃げることが出来る場所が有ると無いとでは大違いのはずだ。

 本当だったら、大学なんて辞めて働きたいところだけど後々のことを考えるとそうもいかない。

 ある程度いい職につかないと、優太を養うことが出来ない。

 優太は……多分、ずっと独り身だろうから俺が面倒を見ることを考えないと。

 そういうことを考えると、教育学部に入ったのは失敗だったかもとも最近思っている。

 本当は転部や転入を考えたいところだが、両親の許可が必要になるのがネックだ。

 現実的なことを考えていなかった過去の自分が恨めしくなってしまうけど、仕方ない。

 とにかく今は新しい部屋を……。

 いや、まずは優太の分のスマホの契約を済ませよう。

 そして、スマホを渡しがてら様子を見に行ってみよう。

 そうなるとバイトと講義の空きを見つけて……入学したばかりでまだ拘束時間が長いのが厳しい。

 もう少しすれば自由になる時間が増えるんだけど……。

 もう少しの辛抱だから……あんまり無理はしないでくれよ、優太。



 ――――――――



 布団に潜り込んで結構な時間が経ったけど、まだ全然眠れる気がしない。

 …………坂東くんのグロチンとその匂いが頭から出て行ってくれない。

 あれからずっと体が発情しっぱなしになっちゃってる。

 思わずあそこに手が伸びちゃうけど……流石にここでするのはマズイ。

 女の子もみんなオナニーしてるっていうのは坂東くんが教えてくれた。

 今まで「そんなわけ無い」と思い込んで調べてすらいなかったけど、改めてネットで調べてみたら本当に別に珍しい話じゃないって書いてあった。

 色々と安心したけど、かと言って、流石に人がいるところでするのは話が違うと思う。

 どうせ坂東くんにはオナニーしてたの知られちゃってるんだからって、目の前でしちゃったのは流石にまずかったかもって今になって少し後悔してる。

 …………いつもよりすっごく気持ちよかったのが、本当にマズかったと思う。

 もともとオナニー大好きだったけど、今まで以上に癖になっちゃいそう。

 だって、坂東くんのグロチンでするオナニーは気持ち良すぎて、まだこんなに……。

 また気づけばあそこに手が伸びていて、慌てて止める。

 まだ我慢しなくちゃ。

 ここでそんな事しちゃダメ……。

 今日は……体力を使ったから流石に眠くなってきた。

 体は火照ったままだけど、このまま寝ちゃおう。

 寝れば明日になる。

 明日になれば……また坂東くんと……。

 また…………気持ちいいことが………………。

 …………また……………………。



 ――――――――



「野田くぅん♡ああんっ♡イクッ♡イッちゃうよぉ♡♡」

「ユミっ!俺もイクぞっ!!イクッ!!ううううぅっ!!!」

「ああぁっ♡♡ダメって言ったのにまた中に出してるぅ♡♡」

「わりぃ、ユミのことが好きすぎて思わず……」

「もう、野田くんったら♡」

 俺のものが抜けてポッカリと空いたユミの膣口から今出したものがドロリとたれてくる。

 ふふ、この瞬間、何度見てもたまんねぇな。

 ユミは顔はいまいちだけど体が最高だからたっぷり出ちまった。

 都のやつ、今日もお高くとまりやがって……そのうちお前にもイヤって言うまで中出ししてやるからな、覚悟しておけよ。



 ――――――――
 


 最近ゆーたくんが女の臭いを付けて帰ってくる。

 なにがあったのか分からないけど、マーキングされているみたいですごく嫌だ。

 …………………………よく洗わなきゃ。



 ――――――――


 
 いつも通り遥くんに起こしてもらって、シャワーを浴びて身繕いをする。

 …………なんか今日のシャワー長かった気がするけど、寝ぼけてたし気のせいかな?

 身繕いをしたあとは遥くんの作ってくれた朝食を食べてから登校。

 今日も念のためホームルームギリギリに教室に入るけど……。

 うん、松戸くんたちは今日も人混みに囲まれていてこれなら朝からイジメられることはない。

 ちょっとだけ心配していた佐倉さんも今日はこちらを見てきたりしないので、もしかしたら今日は野田くんに殴られることもないかもしれない。

 物事は何でも明るく良い方に考えないとねっ!

 そう思いながら席について、雨雲で覆われた空を見上げる。

 ………………うん。

 放課後嫌だよぉ……。

 空元気で乗り切るのは無理。



 その日はもうお昼の時から不穏な気配が漂っていた。

 今日もイジメっ子グループが絡んでくることはなくて、学食で平和の昼食を一人で満喫しようとしてたんだけど……。

 僕が開いてる席に座ってすぐに、隣の席が埋まった。

 学食はいつも混んでいるから誰かと相席になるのは珍しいことじゃないんだけど……今日隣りに座ったのは佐倉さんだった。

 …………なんで?

 いつものイジメっ子グループは?

 と思ったところで、そう言えば昼休みのときに松戸くんが「今日からは昼休みも練習するから」とか言ってた気がする。

 それで今日はバラバラに食べることになったのかな?

 そこまでは分かるけどなんで隣に……。

 座るときにチラッと僕の方を見た佐倉さんと目があったし、僕に気づかずに座っているわけではないと思うんだけど……。

 ど、どう言ういじめの前フリなんだろうか?これ?

 やっぱり、後で野田くんに殴らせる系?

 こちらから話しかけて良いのかもわからないし、そもそも話しかける話題もないしで黙って昼食のサンドイッチを頬張っているんだけど……緊張しすぎて味がしない。

 佐倉さんは佐倉さんで隣りに座ったあとはこちらに見向きもせずにスマホを見ながらカレーを食べているし……本当に単にたまたま隣になっちゃっただけなんだろうか?

 とにかく早く食べちゃおうと思って急いでサンドイッチを口の中に詰め込んでいく。

「あら、都、あんた坂東なんかとお昼食べてんの?」

 頑張って急いで食べていたんだけど、食べきる前に佐倉さんとは別の聞き覚えのある声が聞こえてきてしまった。

「……え?坂東くん?……あ、本当だ」

 え?いや、まるで『初めて気づいた』みたいなこと言ってるけど佐倉さん、席につく時にチラリとだけど結構ガッツリと目合ったよね?

 絶対気づいてたよね?

「ほんとミャーコってスマホばっか見てて周り見てねーよな」

 そんな事情なんて知らない白井さんが楽しそうに笑う。

 確かに佐倉さんはスマホばっかり見てて注意力が低い印象はあるかも。

「…………坂東は気づかなかったの?」

 一宮さんは訝しげにそう言うけど……。

「僕は気づいていたけど、なにも話しかけてこないし気づいてないのかな……って」

「ふうん……」
 
 ウソ混じりではあるけどだいたい本当のことだし、一宮さんも「そうなんだ」といった程度の表情をしてる。

「……それより綾香たちはどうしてここに?
 コーキくんたちと一緒にお弁当食べるんじゃなかったの?」

 なるほど、それで佐倉さんだけ別行動になってたのか。

「それがさー、アキたちがお弁当買いに行っている間にコーキたち準備室に鍵かけて練習始めちまってやがんの」

 ちょっと怒った様子の白井さんの言葉を聞いて、佐倉さんは少し苦笑いを浮かべている。

 ちなみに『アキ』っていうのは白井さん自身のことだ。

「ま、そういうことだから今日は久しぶりに都にデザートでも奢ってもらおうかと思ってね」

 そう言いながら佐倉さんの向かいの席に座る一宮さんと白井さん。

 デザートを奢ってもらう?

 佐倉さんはそう言われた瞬間、少し体を震わせていたみたいだけど……どうしたんだろう?

 まあ、何はともあれ僕には関係ない話みたいだし、ご飯も食べ終わったところでお先に……。

「でも、坂東がいるんなら坂東に奢ってもらうことにするわ」

 なんでっ!?

 なんで急にこっちに話し飛んできたのっ!?

 理不尽すぎるけど、結局逆らうことなんて出来ないので三人分のデザートを奢らされた……。
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