小学生に戻ってるっ!?……の裏側で ~引きこもり高校生と入れ替わった小学生がいつの間にかハーレムを築いている話~

日々熟々

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29話 佐倉さんと(その他と)ファミレス

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 慌てて佐倉さんのところに駆け寄って、困った顔をしている佐倉さんとナンパしているらしい男の人の間に体を入れる。

「す、すみませんっ!
 この人は僕と待ち合わせしてるんですっ!」

「はぁ?
 ……どいてろよチビ、お前じゃ不釣り合いだよ」

 む、むぅ、たしかに僕なんかじゃ説得力がない……。

 でも、ここは引く訳にはいかない。

 そう思って言い返そうとした僕の腕が、なにか柔らかくて暖かいもので包まれた。

「ごめんなさい、私はその『チビ』のほうがいいので。
 行こ、坂東くん」

 僕の腕を抱え込んだ佐倉さんが、僕を引っ張ってこの場を離れようとする。

「お、おいっ!待てってっ!」

「なんですか?
 ここまで完璧にフラレてるのに、みっともないですよ?」

 佐倉さんはちょっと怖いくらい毅然とした態度をしていて……あれ、これ僕必要なかったやつじゃ……。

「…………ちっ、お高く止まってんじゃねーぞ、ブスッ!」

 あん?なんだと?佐倉さんはすごく可愛いぞ?やるかこら?

 僕らしくない野蛮な考えが頭に浮かぶけど、声に出せるだけの度胸はない。

 ただ睨みつけるだけしか出来ない僕をひと睨みした後、男の人は踵を返して人混みの中に消えていった。

 こ、怖かったぁ……。

 佐倉さんが困っているように見えたから思わず間に入っちゃったけど、今になって足がガクガクしてきてる。

「…………怖かったよぉ……坂東くぅん……」

「え?え?さ、佐倉さん?」

 佐倉さんに抱え込まれていた腕が、ギュウウッとさらに強く抱きしめられた。

 柔らかいものが腕に強く押し付けられてドキドキしちゃうけど……。

 同時に、プルプルと小さく震えているのも伝わってきた。

「あの……ごめん、もっと早く気付けば……」

 すごいしっかりした態度で撃退していたからもっと余裕があるのかと思ったら、全然そんな事なかったみたいだ。

「ううん、今度も来てくれたらから、良い」

 そんなことを言いながら、僕の指に指を絡めるように手を握ってくる。

 すごい恥ずかしくなってしまうけど……。

 絡んできた手がすごく冷たくなっていたので、ここは佐倉さんに好きにしてもらおう。

 ただ、恥ずかしいので話題だけでもずらそう。
 
「あ、あの……時間まだなのに、結構早く来てたんだね」

 まだ待ち合わせの時間まで一時間近くあるはずだ。

「う、うん……楽しみになっちゃって、待ちきれなくって……」

 そう言う佐倉さんはただの普段着とは思えないくらい可愛らしい格好をしていて……。

 な、なんと言いますか、さっきの台詞といいこの格好といいイジメにあるまじき雰囲気といいますか……。

 予想外の状況にドギマギしている僕に声がかけられる。

「……おい、坂東、その子って……」

 あ、鹿沼くんたちのこと忘れてた。



「坂東くん?その人達は?」

「え、えーと……」

 突然知らない人たちから声をかけられて、僕から離れた佐倉さんが不思議そうな顔をして聞いてくるけど……。

 ど、どう説明すればいいんだろう。

「あー、俺等、小中でそいつの『唯一の』友達だったんスよ」

「そーそー、俺らだけがそいつと仲良くしてやってたんだよなー?」

「まあ、ぶっちゃけ、俺らの下っ端だったんスよ、そいつ」

 鹿沼くんたちはここぞとばかりに佐倉さんにアピール?している。

 後ろで彼女さんたちがすごい顔しているけどいいんだろうか……?

 それより……佐倉さんに、僕が昔もイジメられていたことを知られてしまったことのほうが重要だ……。

 なぜか分からないけど佐倉さんにはあんまり知られたくなかった……。

「へぇ……そうなの?坂東くん」

「う、うん……」

 今更嘘をついても仕方ないので素直にうなずく。

「だから、そんなやつほっといて今日は俺たちと遊ばない?」

「チビバンといるより間違いなく楽しいっすよ?」

「あ、チビバンの由来知ってます?
 チビな坂東じゃなくってチビリの坂東なんスよ。
 俺等にちょっとからかわれただけでチビっちまってやがんの」

「ちょーっと、遊んでやってただけなのになぁ?」

「なぁ?」

 完全に僕をバカにする口調でニヤニヤ笑いながら言う鹿沼くんたち。

 うぅ……小学生の頃のエピソードをバラされてしまった……恥ずかしい。

「へぇ……坂東くんなっさけなーい♪」

 鹿沼くんたちの話を聞いた佐倉さんは、楽しそうに笑っている。

 しょ、所詮はイジメっ子。

 佐倉さんにそんな事言われたって……言われたって…………ズシンと来た。

 ちょっと泣きそう。

「そうなんすよ、情けないやつなんすよ」

「もっと色々面白い話あるっすよ?」

「全部チビバンがイジられてる話だけどな」

「おごりますから、ちょっとお茶していきません?」

「坂東なんてほっといて遊びましょーよー」

 楽しそうに笑って話を聞いている佐倉さんに手応えを感じたのか、鹿沼くんたちが押してくる。

「えー、どうしよっかなー?」

 楽しそうに悩む素振りを見せている佐倉さんが、ちらっと後ろで憮然とした顔をしている彼女さんたちを見てから。

「本当に奢ってくれますぅ?」

 上目遣いで可愛らしく言った。

「奢る奢るっ!」

「お茶もその後も奢るから遊ぼうよっ!」

「チビバンなんかといるより絶対楽しいっすよっ!!」

 『可愛い』で殴りつけてくる佐倉さんに鹿沼くんたちが興奮した様子で言い寄ってくる。

「それじゃ、お茶させてもらっちゃおうかなぁ?」

 そ、そんなぁ……。



 その後、佐倉さんは鹿沼くんたちとファミレスに入って行って、僕は一人寂しく電車で寮にとんぼ返りした。

 ……なんてことにはならず、なぜかファミレスの大人数用のテーブルに佐倉さんと並んで座っている。

 鹿沼くんたち三人が「なんでテメーまで来てんだよ」って顔で睨んできているけど、僕にもなんでいるのか分からない。

 どう考えても僕だけ一人残される話の流れだったのに、佐倉さんが上着を掴んだまま離してくれなかった。

 これ遥くんの上着だから取られちゃうわけには行かなかったし……。
 
 今僕らは大きなテーブルの片方に僕と佐倉さん、向かいに鹿沼くんたちと彼女さんたちが三人ずつ固まっている。

 佐倉さんの前に男子三人が、僕の前に女子三人が座っているという変な並びだ。

「って事があったんスよー」

 また僕の恥ずかしいエピソードが一つ語られ終わった。
 
「うわぁ、中学の頃の坂東くんほんとなっさけなーい♪」

 それを聞いた佐倉さんは、『実に楽しい話を聞いた』というふうにニコニコと笑っている。

 話をしていた佐野くんも手応えを感じてるみたいで、嬉しそうに佐倉さんの顔を見ている。

 中学時代のエピソードは僕の記憶には残っていなくて……なんか妙に悲しくなった。

 僕……大変だったんだなぁ……。

 佐倉さんには情けないって言われちゃったけど、聞いている僕としては当時の僕がどれだけ頑張っていたか分かる気がする。

 正直もう帰っちゃいたかったけど、テーブルの下で佐倉さんが手を握ってきているから帰るに帰れない。

「でしょー、本当に情けないやつだったんスよー」

 そう言いながらチラチラと佐倉さんの胸を見る乃木くん。

 佐倉さんの普段着は可愛らしいんだけど……ただでさえ大きな胸が少し目立つような感じで、鹿沼くんたちはチラチラと頻繁に盗み見ている。

 それもなぜかイラッときて、無理にでも帰ろうという気になりきらない。

「ああ、あとはチビバンが小学生の頃なんすけどー」

 今度は鹿沼くんがイジメエピソードを語りはじめた。

 いつまでこの僕の恥ずかしい話暴露大会は続くんだろう……。

 佐倉さんが楽しそうに聞き続けるからもう一時間以上ずっとこんな話が続いてる。

 男子たちは必死にすら見えるくらい興奮しながら話しているけど、彼女さんたちは完全にシラケた様子だ。

 鹿沼くんと佐野くんの彼女さんはつまらなさそうにスマホを見ているし、野木くんの彼女さんに至ってはもはや僕に同情の目を向けてきている。

 鹿沼くんたちは佐倉さんに夢中で彼女さんたちが酷い有様になっているのも目に入っていないみたいだ。

 鹿沼くんの彼女さんがつまらなそうな顔をしたまま紙ナプキンになにかを書くと、そっと僕の方に滑らせてきた。

 なんだろうと思って見てみると、LINEのIDだった。

 驚いて彼女さんの方をみると、こちらを見てスマホを軽く振っていたので慌ててLINEに追加する。

『これマジ話?』

 『めぐ』さんを友だちに追加した途端、メッセージが入る。

 ちょっと迷うけど、今更隠しても仕方ない。

『うん』

『流石にひくわ』

 それだけでめぐさんとのやり取りは終わるけど……そうだよね、普通イジメの話をされてもひくよね。

 佐倉さんが楽しそうに聞いているから鹿沼くんたちは調子に乗って話しているけど、本当ならそんな自慢げに話すようなことじゃないと思う。

 ちょっとイジメっ子たちの感性が分からない。
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