個人授業は放課後に

須藤慎弥

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 キスで誤魔化される質量ではなかった。

 ずちゅ、と粘膜とローションの擦れる音と共に、ついに橘の巨砲が挿入ってきている。

 由宇は橘からの舌を受け止めながら、抱え上げられた足先に力を込めた。

 大きな背中に腕を回し、物凄い質量と圧迫感に絶えるために全力でしがみつく。

 思わず橘の舌を噛みそうになって顔を背けたが、それだけで眉を顰めて不機嫌になる鬼教師に睨まれてしまい、喉の奥で呻いた。


「んんんっっ……こ、わい……っ、せん、せ……俺……こわいよ……!」
「何が怖いんだよ。  てか力抜け。  ぐっちょぐちょなのに全然入んねーよ」
「むり言う、な……!」
「しょうがねーな」


 力を入れているつもりはなかった。

 体全体が力んでいる自覚はあっても、それをどうやって緩めればいいのか分からない。

 入らないと言いながら、少しずつ粘膜を押し拡げて挿入ってくる悪魔の背中にしがみつく度に、指先に力が入った。


「締まりやべぇな。  俺の巨砲が食い千切られそう」
「んっ……せん、せっ……くるし……い……」
「痛みは?」
「ちょっと、だけ……っ」
「それでいい」
「っっっ!?」


(な、なんでここで笑うんだよ……!  ほんとに悪魔……いや、魔王様が降りてきてる!)


 痛みがあると言えばやめてくれるだろうと思ったのに、あてが外れた。

 入口は微かにピリピリとした痛みを感じるが、それはあんな巨砲が入ってきているのだから当然だ。

 魔王が降臨してしまっているため、由宇はもはや逃げる事は諦めた。

 喜ばせるだけだと分かっているから我慢していた声も、挿入しないでと無意識に力んでしまう全身も、すべて魔王に預ける。

 ズル、ズル、と襞が擦られる毎に圧迫感が増し、苦しくて異物感も物凄くて正気ではいられない。

 由宇は痛い方が感じるだろうとあえて性急に貫こうとする橘の、苦し気なのに凶悪なまでの綺麗なしたり顔は、悔しいが今まで見た中で一番格好良く見えた。


「うぅっ……せんせー……っ、抜いて、よ……やだ、も、……やだ……っ」
「まだ三分の一しか入ってねぇぞ。  さーて、残りは何分の何でしょう?」
「さ、三分の、二……っ」
「正解。  賢いな」
「小学生の問題だろ!  ……ぅぁぁっっ………」
「基礎が出来てねーとな」
「せ、んせ……っ、くる、しい……!  どうにか、して……っ、おねがい、……!」


 こんな時にふざける橘が憎くて憎くて、背中に爪を立ててやろうと力を入れてみたが、……やめた。

 由宇の方こそ、そんな事をしている余裕など無い。

 ジリジリと容赦なく侵入してくる熱いものを、かたく瞳を閉じて精一杯力まないように気を逸らしながら受け入れるのは至難の業だった。

 苦しい。  とにかく苦しい。

 本来は受け入れるべき所ではない場所を、無理矢理押し拡げて襞を擦っているのだ。

 火傷してしまいそうなほど熱くて、由宇の口にはとても収まりきらない大きなそれが、限界まで拡がった後孔に突き立てられている。

 今までの慣らしで使用していた大人のオモチャの数々は、本当の意味での「慣らし」だったのだと、この時ようやく思い知った。


「ぅぅっ……んんっ……んぁ……っ」


 由宇の薄く開いた唇からは、喘ぎと呻きの混じった苦しい吐息がひっきりなしに漏れる。

 橘はそんな由宇を至近距離から見下ろし、じわじわと中への侵入を継続していた。

 広がった足を持たれ、グッと折り畳まれて「痛くないか?」と聞かれたが、それにはすぐに首を振っておく。

 すると傷跡をさらりと撫でられて、ついでにお尻を揉まれた。


「おい、そのタオル取って。  俺汗だく」
「へっ……?  あ、これ……」


 いつからそこにあったのか、由宇の頭上からタオルを取ってやると「熱ちぃ…」と呟きながら汗を拭っている。


「先生……?  あの……」
「何」
「えっ、……あの……入ったの……?」


 あまりの熱量に、瞳を閉ざして魔王の凶器を感じ取っていたが、現在どうやらピタリとハマりきっている気がする。

 夏場でも涼しげな橘のこの汗だく加減からして、これでも由宇の負担にならないよう慎重に時間をかけて挿入てくれていたのだと分かった。

 残りの三分の二が収まったのだと知ると、少しだけ気が抜けた。

 それだけ、初めて挿入られた衝撃は凄まじかったのだ。


「入った。  でも動けねーな。  これじゃ擦れねーよ、お前のいいとこ」
「ぁんっ……ちょっ、……だめ、……やだ、いやっ……」
「ふっ……いいな。  もっと言え。  ギチギチでも動いてやっから」
「んんんん──っっ!  やめ、やめ……っ!  やぁぁっ……!」


 まだ早い。  このギッチリとしたフィット感のなか動かれてしまったら、由宇はどうなってしまうのか。

 そんな由宇の不安を一蹴するように、橘はゆるゆるとピストンを開始した。

 今まで知らなかった、最奥を突かれて腹内部が破れたかと思った。


「やっ、こわ、い……!  やだ、やめて……っ、せんせ……っ、俺の体、こわれる……っ」
「奥まで届いてんだろ?  俺様の巨砲は太さも長さも兼ね備えてるからな」
「そ、んなこと……知らない!  やっ……ほんと、……やめ、て!  まだむり、俺にはまだ、エッチはむり……!」
「もうしてんじゃん」
「……うっ……っっ」


 気持ちいいのか、そうじゃないのか、よく分からない。

 開発され始めたばかりの後孔が、橘の熱によって蕩けて失くなってしまうのではないか。

 由宇は、ひたすら橘の動きを受け止める事しか知らない初心者中の初心者で、快楽を追う事よりもまず自身の身を案じた。



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