必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
284 / 541
44❥

44❥9




 聖南の発表タイミングに疑問を抱いていたアキラ同様、社長にはお見通しかと聖南は上体を乗り出した。


「麗々がボイスレコーダー持ってたからだよ」
「…………?」
「あの時俺は、迫ってくるアイツにボイスレコーダー持ってんの分かってて、面倒だったから俺は恋人いるってぶっちゃけた。 アイツは今後モデルとして下火の一途だろうから、逆恨みされてそれマスコミに流される前に、俺が言わなきゃいけなかった」


 去年のスキャンダルが記憶に新しい聖南は、その事もかなり危惧していて。

 麗々がある事ない事吹聴しながらあのボイスレコーダーをマスコミにリークすれば、いよいよ聖南が危機的状況になるのは目に見えていた。

 聖南を手に入れようとこちらの事務所までボイスレコーダー持参で出向いた神経の図太さからして、麗々はやり兼ねない。

 謝罪に行ったら聖南に迫られた、と、ボイスレコーダーの中身を麗々の都合よく編集した後、世間に晒されるかもしれないのが分かっていて、手を打たないわけにはいかなかったのだ。

 葉璃を安心させてやりたい、不安など感じなくて済むように公に宣言して葉璃の心までも縛れたら、という思いと、この麗々の件が一割乗っかった交際宣言だった。


「……なるほど」


 いつになく聖南が真剣に語った事で、社長も真摯に受け止めてくれたようだ。

 聖南にとっては父親代わりでもあるこの社長には、いつか必ず葉璃との事を打ち明けたい。

 もし反対されたら、という不安は消えないけれど、何故かこの社長なら戸惑いながらも祝福してくれそうな気がした。


「社長には分かっててほしい。 俺は今付き合ってる子が生涯の相手だと思ってる。 俺の過去も全部話した」
「ほう、過去をもか。 ……そうか。 ……セナの事は信頼しているよ。 いつか話してくれる日まで待つさ」
「ありがとう。 事務所大変だろうけど、今回は俺が動ける以上はこないだのスキャンダルよりも騒ぎは長引かねぇと思うから、幹部連中とスタッフにもそう言っといてくれると助かる。 俺がマスコミ相手にごちゃごちゃ言うと、なかなか余波が切れねぇかもしんないから何も言わねぇって事もな」
「そうだな、その方がいい。 ともあれ、相手が心配だな。 今の世はすぐに相手を割り出されるぞ」
「それは1000%大丈夫。 断言する」


 言い切った聖南には絶対の自信があった。 だからこその交際宣言だった。

 たまに聖南の自宅にやって来る葉璃を恋人だとは誰も思わないだろう。

 たとえ顔を割り出されても、もうじきデビューを控えた事務所の後輩だと調べればすぐに分かるはずなので、マスコミも追いようがない。

 女好きな聖南がよもや男に走るとは誰も想像も付かないはずだと、そこからの断言だ。


「なかなかの自信だな」
「任してよ」


 二人はフッと笑い合って、煎餅をかじった。

 聖南は香ばしい美味しさのあまり三枚目に突入していたが、煎餅は結構腹にくるなと、少し時間が経って食べ過ぎた事を後悔した。



感想 3

あなたにおすすめの小説

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

元アイドルは現役アイドルに愛される

BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。 罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。 ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。 メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。 『奏多、会いたかった』 『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』 やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)