必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 午後二時過ぎ、作業を終えた聖南は車に乗り込むとサングラスを掛け、すかさず葉璃に連絡を取った。

 聖南が来るならと、あまり人気のない、駅から少し入った路地に佇む昔ながらの古い映画館で恭也と待っているとの事で、すぐさまその場所へ走り出す。

 今日は待ちに待った葉璃との映画デートだ。

 恭也との先約があると言われた時は嫉妬に狂いそうになったが、聖南も行くと言っても「先約は恭也だから断らないよ」と譲らなかった強い姿勢に、そう言えるまでになった葉璃の成長を若干喜んでしまった。

 聖南が居ても恭也を断らないという事は、恭也をヤキモチの対象として見ないでと葉璃の無言の訴えであるかのようにも思えた。

 弱々しく、守ってやらなければと思っていた頃からすれば見違えるような変化で、以前聖南が渡した大量の食べ物のおかげでクラスにも馴染めていると聞いた時は耳を疑った。

 まさかそんな事になっているとは思いもせず、「聖南さんがそういう風に仕掛けてくれたんでしょ?」という意味深なメッセージが送られてきた時は、なんの事だと首を傾げたものだ。

 目的地付近のパーキングに車を停め、ルームミラーで一応自身を確認する。

 サングラスまですると、ここに芸能人がいますよと自ら触れ回っているようなものなので外し、帽子を目深に被ってマスクをしただけの簡単な変装をしてみた。

 それでもやはり周囲にバレてしまうかもと危惧しながら車を降り、視線だけで二人の姿を探した。

 だがちょっと探しただけで難なく見付かり、聖南は少しだけ眉間に皺を寄せる。

 暖簾のようだった前髪は無造作に後ろに撫で付けてあって男前な恭也と、パンツスタイルの私服の葉璃が仲睦まじく会話をしていた。

 そしてやけに二人の距離が近い。

 さながらそれはお似合いのカップルのようで、今日はヤキモチは焼かないと決めていた聖南もつい奥歯をギリッと噛んでしまった。


『我慢だ我慢……。 葉璃にとっての大事な友達で、ユニットの相方でもあるんだから……』


 私服だと葉璃はより中性的なのだ。

 そんな葉璃と二人きりで映画デートなどしては、万が一周囲に聖南だとバレた時またもスキャンダルとして取り沙汰される恐れもあって、その点、恭也が居てくれれば危険は回避出来るのだ。

 決して二人きりのデートとは言えないが、同じ時間を娯楽で、しかも外で葉璃と過ごすのは初めてなので、聖南はこの日を待ち望んでいた。


「よぉ、待たせたな」


 二人の元へ歩み寄ると、気付いた葉璃が少しだけ笑顔をくれた。

 一ヶ月以上会っていなかったため、いきなりの葉璃の微笑みに早速キュンキュンが止まらない。


「大丈夫ですよ」
「……こんにちは」


 恭也も礼儀正しくペコッと頭を下げてきて、先ほどの恭也への嫉妬が申し訳なく思えるほど、非常に好感が持てた。


「早く入りましょ。 こっちに来るとき、モーゼみたいに人波別れてましたよ。 すでに注目浴びてます」
「……モーゼ……。 うまいね、葉璃」


 チラッと聖南を見てクスクス笑う恭也に、いい度胸だと呟きながらデコピンをお見舞いしてやると、葉璃を挟んで三人は映画館の中へと入って行った。



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