496 / 541
〜八月某日〜(全六話)
ETOILE初歌番組❥④
CROWNのパフォーマンスは大熱狂のうちに終了し、四組目のロックバンドが演奏を披露し始めると、最後の出番である葉璃と恭也は司会者の隣に座っていた。
聖南達CROWNはその後ろの席に居て、ETOILEのデビュー曲『silent』の作詞作曲を手掛けた聖南も交えてのトークのためにマイクを握ってスタンバイをする。
このロックバンドの後はランキングと今週の特集コーナーになるので、緊張しきりな葉璃のドキドキはもうしばらく続く事になりそうだ。
『今週の一位は、先ほどパフォーマンスを披露してくださったLilyの皆さんでした! おめでとうございます!』
『ありがとうございます~♡』
今週のシングルのセールスランキングで一位になったLilyというグループを、聖南は彼女らがデビューした三年前から知っていた。
複数女性のダンスアイドルグループであるLilyは、葉璃の姉である春香が所属するmemoryとは似て非なるものである。
memoryは若年層をターゲットにした衣装や振付だが、Lilyは色気を漂わせた「妖艶さ」をコンセプトにしていて、今日の衣装もかなり際どいミニスカートだ。
大人の女性を模した詞とリンクした振付はとても凝っていて、歌唱力はともかくダンスの総評は聖南の中で悪くなかった。
聖南は、司会者とLilyのトーク中にモニターで彼女らを眺めた後、葉璃の後頭部を見た。
何故だろう。
今日もふわふわと巻かれた焦げ茶の髪だけで、聖南を高揚させる。
モニターに映るどの女性達よりも、葉璃の後頭部の方が可愛い。
前室に居る時から感じていたLilyのメンバーからの視線が、今もビシビシきている。
アキラとケイタにもその視線は注がれていて、CROWNの三人は前室に居る時から身の置き場が無かった。
どうにか馴れ馴れしく話し掛けてきませんように、と三人揃って無言の圧力オーラを放っていたところに、葉璃と恭也が来てくれて非常に助かった。
『続いてのアーティストはETOILEのお二人です! よろしくお願いします!』
司会者の女性が紹介すると、カメラは葉璃と恭也を抜いた。
葉璃の肩がピクッと揺れたのを見逃さなかった聖南は、笑いを堪えるのに必死だ。
初々しくて、すごくいい。
「よろしくお願いします」
「よろしく、お願いします……」
こうした場面では、いつもの恭也の語り口が葉璃に移行する。
肝が座っている恭也は実にスラスラと喋る事が出来るので、いつもこの調子で葉璃の上がり症をカバーしてやっているのだろう。
『先月デビューしたばかりのお二人のデビューシングルは、CROWNのセナさんが作詞作曲との事ですが』
段取り通り、司会者から聖南にトークを振られた。
アキラとケイタもマイクを持っているので、出来る限り聖南達が時間を引き伸ばしてやる。
「そうなんすよ。 CROWNの弟分が出来たのが嬉しくて、俺出しゃばっちゃった」
「今回のETOILEのデビュー曲なんですが、元々はCROWN初のバラード用にって作ってたんですよ、セナ」
「そうそう。 でもCROWNにバラードはまだ早えからさ。 っつってももうデビューから八年だから、早え事もないか」
「って事で、冬にCROWN初のバラード発売予定でーす!」
『ETOILEの話題がCROWNの宣伝に利用されちゃいましたね、恭也さん』
「そうですね。 お兄さん方は宣伝上手です」
そう言ってはにかむ恭也の控え目な笑顔に、客席が湧いた。
やはり少々強面な恭也の優しげな笑みは、女性のハートを鷲掴みにするらしい。
声も意外なほどソフトで穏やかに話すため、司会者の女性もやや前のめりになって恭也に話を振る。
『ETOILEのお二人はCROWNのツアーにも同行なさってるとか? 連日芸能ニュースで話題になっていますね!』
「はい。 ありがたい事です。 デビューしたばかりの新人の僕らを、あんなに大きなステージに立たせてもらっているんですから。 CROWN様々です」
「CROWN様々ー! 俺浮かれていい!?」
「セナはさっきからはしゃぎ過ぎなんだよ」
「番組冒頭でスタジオ走り回ってたの、セナだけだからな。 袴ではしゃぐなよ、仮にもETOILEのプロデューサーなんだぞ」
和装で落ち着いた印象の聖南が満面の笑みを浮かべると、あらゆる方向から「キャーッ♡」と悲鳴が上がる。
装いとは真逆の聖南の無邪気なはしゃぎっぷりに、他の出演アーティストも笑いを堪えきれていない。
『セナさんがETOILEのプロデューサーに抜擢された経緯は?』
「あーっと、それは俺が立候補したんすよ。 silentはすげぇ思い入れ込めて作ったし、これから聴いてもらうと分かるんですけど、めちゃくちゃ細かくパート割りしてます。 それは二人の声の個性に俺が惚れたからで、絶対的にいいものにしたかった。 レコーディングにもミックスにも関わった俺なら、二曲目、三曲目も二人を最大限に活かせるものを生み出せる、そう思ったから立候補しました。 ……うわ、俺いま超プロデューサーぽくねっ?」
「プロデューサーだろ」
「ぽい、じゃダメだよセナ……」
「ETOILEのプロデューサー、セナです! ETOILEをよろしくお願いします!」
『こんなに真面目に答えて下さるセナさんは久しぶりかもしれません……! ありがとうございました! ……さて、もうお時間がきてしまったようです。 ETOILEのお二人、スタンバイお願いしまーす!』
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。