迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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②迅が不機嫌なんですけど

─雷─3

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 次の日の放課後。

 木曜日だからバイトも無いし、「リア充エッチは断った」なんて言ってた迅も合コンに参加する事になった。

 迅とは、こんな事が無かったらほとんど学校の外で遊ばない。

 だから来てくれたの普通に嬉しかったのに、三人の後輩と翼は見るからに嫌がってる。


「───なんで迅までついて来たんだよ。 男側の人数超過しちまうじゃん」


 ……あー、そっか。 合コンには身長制限じゃなくて人数制限ってのがあるのか。

 でも一人くらい増えたってどうって事ないだろ? そんなに堅苦しい集まりなのかよ。

 俺耐えられるかなぁ。

 でっかい男達に囲まれた俺は、知らない土地に引っ越してきた四月の頭みたいな心境で、何だか分かんねぇけど肩身が狭い。


「ほんとっすよー!」
「翼さん、迅さんは連れて来ない約束っしょ?」
「オレ今日負け確だわ……」
「………………」


 えぇ、そんなに言う??

 後輩達の嘆きを聞いてると、俺が向こうでハブかれてるかもって思ってた時に感じてた気持ちがふわっと湧いた。

 ムスッとした迅はそれが通常の表情だから、俺の右隣を歩いてる今も何を考えてるかさっぱりなんだけど……そこまで言わなくてもいいじゃん。

 その人数制限はそんなに言うほど厳しいのかって意味で、左隣を歩く翼の肩に手を置いて、ピアスだらけの耳にこっそり耳打ちしてみた。


「なぁ、迅が来ちゃいけなかったのか?」
「んー? すぐ分かるよ、雷にゃん♡」
「うぁっ……♡ おい! 外ではやめろよ翼! え、痛っ……迅……!」


 何がすぐ分かるんだよっ? しかもついでみたいにほっぺたにチュッとされて、顔が熱くなる。

 かと思えば右からグイッと腕を引っ張られてよろけるし……二人とも、俺よりデカいからっていつも好き勝手し過ぎな。

 腕を掴んできた迅にはギロッと睨まれて、ほっぺたにチュッのエロピアスからは最近滅多に見ないウインクをされて、俺はもう何がなんだか。

 不機嫌がデフォルトな迅がスっと腕を解放して、翼に「ちょっと来い」なんて言いつつ二人は俺より先を歩いて行く。

 中学校からのダチだっていう二人を後ろから見てると、付き合いの浅い俺にはまだまだ入る余地が無さそうだよな。

 ちょっとしょんぼりだ。


「雷にゃんさん大変っすね」
「転校初日で翼さんに気に入られたんっしょ?」
「迅さんがよく許したっすよね!」
「よく許したって……どういう意味?」


 顔だけ知ってて名前は知らない、三人の後輩が俺を取り囲む。

 いきなりそんな事を言われても意味が分かんねぇから、「いいなぁ、いいなぁ」と羨ましがってくるヤンキー達を見上げて首を傾げた。


「放課後のアノ時間っすよ」
「俺らも行きたいって何回もお願いしてんのに、二人は絶対まざらせてくんないんす」
「俺達だけじゃなくて、翼さんと迅さんのダチも全員あそこは立ち入り禁止なんすよ!」
「ガチで徹底してたから、俺らもあんまり言えなくなったんすけど……雷にゃんさんがすんなり許されたのが羨ましくて羨ましくて……!」
「へぇ?」


 あ~、あの教室……もとい、秘密基地の事を言ってんのか。

 高三にもなって放課後溜まってから帰るって聞いた時は「???」しか無かったけど、確かに今じゃあの時間がないと落ち着かないな。

 ていうか、へぇ……。 迅と翼って、そんなに憧れられてんの?

 羨ましいも何も、俺は二人が憧れられてんのも全然知らなかったぞ。


「へぇって! すごいことなんすからね!」
「雷にゃんさんはマジで迅さんのお気に入り確定っす!」
「ふぅん?」
「ふぅんって!」
「あ、見てみろ! あの二人もう女捕まえてんぞ」


 妙な相づちばっかり打つ俺の隣で、後輩Aが指差した先。

 異質なオーラというか、パッと見ただけでヤリチンな事が分かる俺のダチ二人は、ちょっと目を離した隙にもうリア充の道を走ろうとしていた。

 え、すご……。

 ひとりで出くわしたら、俺なら絶対回れ右しちゃいそうなギャル三人が迅と翼に華麗なボディタッチをしかけてる。

 あんまりモテなさそうな後輩達の嘆きが、すでに分かった気がした。


「これから合コンなのにさらにナンパまでしてんのかよ~」
「あの二人は相当な肉食だよな~」
「おこぼれ貰おうにも女が俺らじゃ満足しねぇって、俺ら来てる意味無え~~!」
「なぁなぁ、でもさ、あれは女の方から声掛けてんじゃねぇの? ほら、迅と翼は断ってんじゃん」
「それが憎いとこなんすよ~!」
「迅さんと翼さんと歩いてて、逆ナンされなかった事ないっす!」
「されなかった事がない……? いつもされるって事?? されないって事? どっち?? 日本語むずかしいよなー」


 そんなまどろっこしい言葉使い、しないでほしいよ。

 今はちょっと、ダチ二人とギャル三人のピンクな光景から目が離せないんだ。

 翼はいつものニヤけ顔だからいい。

 問題は、迅のあの……横顔だ。

 想像した事なかったけど、リア充ヤリチン男な迅は女とのああいうやり取りが日常茶飯事なんだよな。

 迅が女と喋ったりエッチしたりっていうの、マジで考えらんないんだけど……あんなに不機嫌そうなツラしてんのに、顔面がピカイチでイケてたらそんなのも関係無ぇって?

 女達の神経疑うぜ。


「雷にゃんさん……ガチ?」
「え? 何が?」
「いや、なんでもないっす」


 「雷にゃんさんマジで頭弱えな」って、そういう事はもっと小さい声で言えよ。

 俺一応先輩だぞ。

 そもそも俺が瞑想モードに入って人の話を聞かないなんて一大事で、でもそれは迅のせいだからあとでアイツの肩を小突いとこう。

 なんかすっごくイラつくからな。



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