迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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②迅が不機嫌なんですけど

─雷─4

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 とあるカラオケボックスにやって来ると、見たことない制服の女子が五人、すでに部屋の中で待っていた。

 一人ずつ簡単な自己紹介をして、とりあえず順番に歌って、ランダムに席替えして隣の人と喋って、……。

 うーーん。 これが合コンなのか。

 いまいちテンション上がんねぇな。

 っていうか、初っ端から女達が迅と翼に群がってるせいで、後輩連中の立場が無えじゃん。

 陽キャな翼はともかく、迅なんてずっと不機嫌なツラしてジュースのストロー噛んでるよ。

 全然楽しそうに見えないのに、両隣の女が必死に話し掛けて迅の腕とか肩とかを触ってるけど……あんなに触られても動じないのは、やっぱりリア充のたまものなのかなぁ。

 未知の世界過ぎてついてけねぇよ。

 俺には免疫ってやつが無さ過ぎる、とも言う。


「雷にゃん見てるか? こうなるから、後輩達はみんな迅の不参加を熱望してんのよ」


 ここに来て一時間も経つと、迅翼&女五人:後輩三人&俺っていうどう考えても不平等な図が出来上がっていた。

 お菓子食べてれば時間が潰せる、くらいに思ってた気が乗らない俺の隣に、翼が滑り込んでくる。

 その隙に後輩達が女達の方へぞろぞろっと向かって行った。

 お前らどんだけ飢えてんだよ。


「なるほどなぁ。 てか合コンってあんまり楽しくないな」
「なんでそう思うんだ? 俺らのガッコは八割男だから男子校と変わんねぇ。 女と触れ合える貴重な時間だぞ?」
「んー。 そもそも俺、お前らと居る方が楽しいから女と喋りたいって思ったことないんだよなー。 今日だって合コン体験してみたかっただけだし」
「おーいーっ、雷にゃん可愛過ぎかよ♡」
「はぁ?」


 俺はほんとの事、すなおな気持ちを言ったまでだ。

 迅に女と話す機会を取られて不貞腐れてるわけじゃない。

 ほんとに早く帰りてぇと思ったんだもん。

 みんな、何が楽しくて「合コン」なんてすんのかな。

 先輩が言ってた通り、俺には相応しくないものだった。 「雷は楽しめないと思うし、来ても退屈だって思うだけだ」って。

 ガチのガチでその読み、大当たりだったよ、先輩。


「雷にゃん。 トイレ行こ、トイレ」
「えっ? 俺別におしっこしたくな……」
「連れション、ダチとは行くもんだろ? ガッコではついて来てくれんのに、ここでは嫌なんだ?」
「わ、分かったよっ」


 なんだよその翼ルールは。

 前のガッコでは『連れションはダチと』、なんて決まりは無かったぞ。 ……中まで付き添わなきゃいけねぇし。

 そそくさと合コンルームを出る翼に引っ張られて向かったのは、突き当りにあるまぁまぁ小綺麗なトイレ。

 ダチの小便の音なんて聞きたくないから、鏡で金髪を触りながらささやかな疑問を投げる。


「なぁなぁ」
「んー?」
「迅の影に隠れてるけど、もしかして翼もヤリチンなのか?」
「ぶはっ……雷にゃんお前……っ」
「なんだよ、そのニヤニヤ! また俺をバカにしてんな!?」
「してねぇって。 てかまぁ……それ、俺は答えた方がいいのかにゃあ?」
「もう分かった! 分かったから、エロピアス降臨なツラして近寄るな! 手を洗え!」
「どんなツラよ」


 用を足した翼がじわじわと近寄ってくる。

 あのエロエロな目で、俺を壁際に追いやる翼は舌ピアスをカチャカチャ鳴らした。

 壁に手を付いたエロピアス翼から見下されて、「ヤリチンだけど何か?」みたいに慣れた調子で耳にふぅっと息を吹きかけられる。


「あ、だからおいっ、ちょっ……翼! ひぁっ♡」
「雷にゃんマジで耳弱えよなぁ。 もっと開発してぇ~」
「何を開発するってんだよ! もうっ、翼! 触るなって言って……んにゃっ」


 まだ手を洗ってないぞ、翼! って、いやいや、手を洗ったら触っていいわけじゃないけど!

 すぐに喘いでしまう俺のビンカンさって、どうしても足りない経験値がそうさせてんのかな?

 俺の耳たぶに付いた丸ピアスにチュッとされると、また声が出た。

 変な感覚になってぽわぽわ~っとなるから、いつの間にか現れていたモテモテ迅が、俺達の様子をガッツリ見てた事にも気付かなかった。


「雷にゃんは男相手の方がいんじゃねぇの?」
「───はっ? 迅っ?」
「帰るぞ」
「えっ? えっ? あっ? えっ?」
「バカ面してねぇで、早く」
「いや、えっ? 帰るってでも……っ」
「アイツらと翼が居ればいい。 翼、雷にゃん連れて帰るからな」
「え~もう少し居れば? 雷にゃん誰とも話せてねぇから合コン体験出来てないぞ」
「もう充分体験しただろ。 な、雷にゃん?」
「えぇっ? 俺にそれを聞きます? ヤリ迅さん?」
「てめぇ……ついに変なあだ名作りやがったな」


 ご丁寧に俺の鞄まで持って、帰る気満々な迅の登場にまた救われた。

 でもな、迅様。 合コン体験は出来てねぇ。

 お前と翼のせいで、見てるだけーの見学しか出来なかったよ。

 ま、俺は今こうして三人で居る時間の方が好きだったりするから、見学すらしなくて良かったかもって思ってるけどな。

 だからそんな、ヤリチンと迅を合わせてコンパクトにしたあだ名が気に入らねぇからって、おっそろしいツラしないでよ。


「わぁぁっ、怖えっ! 迅はマジで般若顔が上手いな!」
「誰が般若顔だ」
「お前だ! ヤリ迅!」
「そのあだ名マジで嫌だ。 生意気だぞ、チビ雷」
「チビって言うな! もっと縮んだらどうすんだ! お前の背分けてくれんのか!?」
「縮んだら俺様のポケットに入れてその辺ウロウロしてやるよ」
「ポケットぉぉ!? ……それ楽しそう」


 この、何にも興味ありませんってツラの迅がポケットサイズになった俺を可愛がるとは到底思えないけど、軽口を叩いて嫌味を言ってくる迅のわりには楽しい妄想だ。

 でもあんまりチビチビ言われると困るから、それだけはしっかり拒否っておかないとな。

 ほら、ホクロは数えたら増えるって言うじゃん?

 それと一緒で、身長も、もしかしたら「チビ」って言われるごとに少しずつ小さくなっちゃうかもしんねぇ。

 俺がこれ以上小さくなったら、マジで迅のポケットにお邪魔する事になるぞ。


「……お前の人生の方が楽しそうだ」
「まぁね! 俺毎日ウキウキ楽しいよ!」
「フッ……」


 ……迅、笑い方分かんねぇのかな。

 そばで俺達のやり取りを見てた翼の方が、いい笑顔してるってのに。




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