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⑤御姉様
─迅─⑦
しおりを挟むたとえ色眼鏡を外してたとしても、雷のツラは最上位に決まってんじゃん。
コイツと初めて会った日、キンキラキンの髪を追い掛けていて思った。
これが後ろ姿美人ってやつなんだろーな、振り向いたら色んな意味で「おおっ」ってなるんだろーなって。
でも違った。 いい方の「おおっ」だった。
服装からの判断が難しかった雷は、性別も年齢も不詳で、その翌日男だって分かっても別に何とも思わなかった。 俺自身の神経を疑うくらいには。
声を掛けて振り返ってきたそのツラに、一瞬だけ息を呑んじまったなんて事は絶対本人には言わねぇけど。
「──風呂見てみようぜ」
「あっ、見たい見たい!!」
俺のセリフに食い付いた雷はあからさまにホッとしたツラで、絡まった帯と長過ぎる裾を引き摺って風呂と思しき場所へすっ飛んでいく。
追い掛けながら、俺は腕を組んで若干の自己嫌悪発動。
あれ以上〝ドキドキしてます〟な表情を向けられ続けると、内風呂も楽しまずに布団に直行だ。
いつでも冷静沈着なこの俺が、大照れした雷の表情にグラついてしまった。
さっきも束バッキー野郎に対して大人げなかったしな……オモチャを取り合う幼児みたいにムキになってた。
ま、それもこれも雷がアイツに尻尾振ってたからいけねぇんだが、こんなに何度も我を忘れるって経験をさせられるとマジで調子が狂う。
「……なんかうまくいかねぇな」
ここは学生二人で泊まるにしては背伸びしてるようにも見える広い部屋で、かつ、いやらしい内風呂付き。
恐らく寝間に敷かれているのは二組の布団。
女と付き合いたての男が初夜に気合い入れてる、……そんな雰囲気とムードがある。
もっとそれを活かしてミッション遂行に向けて動きたいんだが、初っ端から出鼻を挫かれた。
どう見てもサイズの合ってない浴衣を着る着ないで、三十分も費やしたんだぞ。
雷と居ると、エロい事で頭がいっぱいに……なんてなりようがない。 あんなに爆笑したの何年ぶりだっつの。
「おぉぉぉぉッッ、露天だー!!」
「マジだ。 すげぇ」
脱衣所からして風情のある引き戸をガラガラっと開いた雷が、まさしく目をキラキラさせた。
雷の背後に立って中を見てみた俺も、思わずハッとする。
あんま期待してなかった内風呂が、なんと露天風呂だ。 ……ちょっと寒い。 山ん中だし。
「なっ、すげぇなぁ! しかも意外と大きいんだな! 俺こんなの初めて!」
「…………エロいな」
「なんでだよ! 情緒どこいった!」
「そういうお年頃なんだよ、俺」
「どっかで聞いたことあるなそれ……って、俺が言ったやつじゃん!! ……あ、っ」
失言を茶化した事に気付いた今日の雷は、案外冴えてるかもしんねぇ。
温泉がなみなみ溜まった桧風呂を前に、また雷の顔面が少しずつ赤くなっていく。
そりゃあ、〝大きい〟だの〝こんなの初めて〟だの興奮気味に言われたら、お年頃な俺にはそうとしか聞こえねぇよ。
「自分が言った事の始末は自分でつけられるよな? 雷にゃん?」
「ぐぬぬぬ……ッッ」
「毛逆立てなくていいから脱げ」
「あぁっ、ちょっ……♡ お代官様ぁぁ、お止めになってぇぇ♡」
「……はっ……?」
何言ってんのコイツ。
もはや羽織っただけの浴衣を脱がそうとした途端、雷に変なスイッチが入った。
ヤバイ。 また出鼻挫かれた。
笑ったら負けだって分かってんのに、油断していた俺はつい吹き出してしまう。
「……ぷっ、やめろ、……今のでエロさ半減した」
「いやでもこのシチュはそうじゃん! 俺一人で盛り上がって恥ずかしいだろ!」
「へぇ? 盛り上がってたのか。 気付かなかったなぁ。 そうかそうか、そんなにはしゃいでたのか」
「えっ!? そ、そんなことは……ッッ」
「ムード作った方がいいなら手伝うけど?」
「はぁっ? なんで俺と迅にムードが……ンンッ♡」
うるせぇ口は塞いでしまうに限る。
パンツ一丁になった雷の細っこい腰を抱いて、すぐさま唇を奪った。
さっきのやり直しを試みると、やっぱり雷はアノ顔で俺を見上げてくる。
これだけ分かりやすく垂れ流してくんのに、なんでコイツはムードに流されねぇんだろ。
しょっちゅう開かれる不埒な大会だってそうだ。 ベロ入りのキスまでしてんのに、なかなかダチの境界線を越えさせない。
いい加減気付けって話。
「まだそんな事言ってんの」
「んへっ? や、やだ、お前……いつの間にキレ迅に……ッ?」
「今日はミッション攻略させてもらうからな」
「また映画の撮影かよぉぉ!」
「違うっての。 てか俺がイケメンお代官様なら、雷にゃんは町娘って事な?」
「いやそれでムード作んのッ?」
「その前に、お代官様って悪役じゃね?」
「えっ、知らねぇ! ちょっとググってみる?」
いい逃げ道キター!ってツラするな。
全部分かってんだよ。
俺の腕から逃げようとした雷を捕まえて、浴衣を脱がしてあんのになぜか腰に巻かれていた帯を解く。
どうやったら素肌に帯が巻けんだよ。
全裸になった天然記念物は、相変わらず理解不能だ。
「ググるのは、あとでな」
「ひぇ……ッ♡」
耳たぶを舐めて、雷が好きな声で囁きながら抱き締めてみた。
雷の口から漏れたのは色気もクソも無え声だったが、俺は今日何度だってコレをする。
ニブ過ぎるコイツには、やらしい事ばっか教え込んでも暖簾に腕押しってやつだから。
壁ドンがかなりの効果を発揮してた事を思えば、雷にはじわじわ攻める草食系な奴らの手法を使うしかない。
前の俺なら面倒極まりないと投げ出してた手法を、反応を見ながら嬉々としてやっちまうのはやっぱ……コイツがいちいち可愛いツラするからだろうな。
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