迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑥判明したんですけど

─雷─⑧

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 おぉっ、偶然に偶然が重なってる!!

 なんで先輩が迅のバイト先知ってるんだろーって不思議だったけど、その謎は解けた。

 喧嘩上等っぷりとヤリチン伝説がヤンキーネットワークで先輩の耳にも届いてたほど、迅は色んな意味で有名人。

 同じ建物内でオープンするショップの店長が、知らねぇはずないよな。


「そうなんだ!! じゃあちょうどいいな! 迅、今日もバイトだろっ? 何時から?」
「一時。 ちょうどいいの意味が分かんねぇけど」
「よーし! そんじゃ早速、先輩のお店にしゅっぱーつ!!」


 この流れ、一石三鳥じゃん!!

 そのいち、引っ越してくる前に俺もめちゃめちゃ利用してた、アクセショップの開店前の様子を今から覗き見させてもらえる。

 そのに、迅はそのままバイトに行ける。

 そのさん、俺は早々に帰れる。

 今頃、迅のばあちゃんが世話してくれてるもっさん達に会いに行きてぇのは山々なんだけど、今日はひとまず一人になりたい。

 童貞男子がいきなりセフレを作るなんて身の丈に合ってねぇから、とりあえず心と性欲を一旦落ち着かせたい。 迅にもそれを強く求める。

 毎日ヤリチンテクをぶつけられるのは普通に困るから。

 迅がご機嫌なのはいいことなんだけど。


「おーい、雷ー! 張り切ってるのはいいけどそっちは森だよー!」
「えっ!?」


 考え事をしながらずんずんっと二人を置いて勝手に進んでた俺の背中に、先輩の声と迅の「フッ」と吹き出す声が突き刺さる。

 足元しか見てなかった俺は、目線を上げてみた。

 するとすぐ目の前にモジャモジャした葉っぱを付けた木が何本もあって、もう少し進んでたら俺はその木にめり込んでたところだ。


「あぶねっ……」


 立ち止まったそこで、二人を振り返る。

 旅行鞄を肩に掛けたデキる女の格好をした先輩と、遠目で見ても嫌味なくらいイケメンな迅が、腕を組んで俺を笑っていた。

 ……いいなぁ、先輩。

 化けてる事を抜きにしても、先輩は背が高くて美人だから、迅の横に並んでても違和感が全然無い。

 俺が迅と居たって、周りから見た俺はどうせ上級ランクのイケメンに懐いて金魚のフンになってる、ただの金髪イキりチビにしか見えねぇだろ。

 どっちかっつーと迅の方が、セフレ願望引っさげて俺にアピってきたんだぞ? 嫌がる俺を言いくるめて、唇とちくびまで順番に堪能ときた。


「うぅぅ……また心臓チクチクする……」


 山道への細かな砂利を踏みしめて二人のところに戻る間、服の上から無意識に心臓を庇った。

 そういう現場を一回も見たことがなかったからバクゼンとしてたけど、これまで迅の隣には、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい……女が居たんだよな。

 迅はたぶん、俺をセフレにしたいとか言うくらいだからタイプとかは無いと思う。

 そこそこおっぱいがあって、そこそこ可愛ければなんでも摘んできたんじゃねぇかな。

 だってさ、数をこなさねぇと伝説なんて出来ねぇし、そもそもヤンキーネットワークに乗るような噂なんかも流れない。

 一人で張り切ってた俺が迅の前に戻ってくると、すかさず「そこ、どうした?怪我した?」と心配された。

 チクチク、チクチク、昨日から痛む心臓を服を握り締めて庇う俺に、トロ甘なセフレは今日もテクニック全開でくるらしい。

 やっぱ一秒でも早く帰んなきゃ。






 先輩が働いてたショップのアクセサリーのほとんどは、小遣いの少ねぇ若者が手を出しやすい金額だったから、俺は毎月のように世話になっていた。

 今付けてるピアスも、引っ越す前に先輩が厳選してくれたもの。 これはちなみに、そのショップではそんなに知られてないオーダーメイド?ってやつなんだって。

 だから大事にしてんだよ、俺。

 他のことでは何も褒めるとこが無えズボラ野郎だけど、毎日の耳の消毒だけは欠かさない。


「はぁ……」


 認めよう。 俺は今、かなり激しめに動揺してる。

 心臓がチクチクするのは朝起きたら治ってると思ってたんだけど、いまいちだった。

 モールの関係者入口から中に入って、オープン前の店内とキラッキラなアクセサリーを一通り見せてもらう間も、なんかうわの空。

 肩とか腰を抱いてカレカノ感を出そうとしてくる迅にいちいちドキドキして、心臓がキュッと萎んで、またチクチク。

 先輩ごめん。

 オープンしたら絶対遊びに来るから、せっかく色々説明してくれてたのに何にも聞いてなかったこと、怒んないでほしい……。


「はぁぁ……」
「……ねぇ、雷。 迅クンがバイトに行っちゃったからって、そんな寂しがることなくない? 何回ハァハァ言ってんのよ」


 バイトの時間が迫った迅を、先輩と俺はフードコートに残って見送った。

 当然のように迅から奢られたステーキは美味い。 でも時間かけて食べてたせいで肉がかたくなった。

 迅がバイトに行っちまって、こうやって何回もため息吐いてるからなんだけど。

 ちなみに、迅が放った「俺ン家で待ってろ」の命令を守る気はナイ。


「寂しいわけじゃねぇよ……俺むしろ早く帰りたい」
「えぇ、そんなこと言わないで。 せっかくなんだからアタシとデートしよう? 邪魔者は居なくなった事だしー」
「邪魔者って迅のこと?」
「当然でしょ」
「迅は邪魔者じゃねぇよ!! 先輩こそ、そんなこと言うな!」


 気心知れた元祖束バッキー先輩でも、迅を悪く言うのは許せねぇ!

 ここにちゃぶ台があったらひっくり返してるとこだ。

 プイッとそっぽ向いて、かたいステーキの端っこをモグモグする。 ステーキソースのかかったブロッコリーの方がやわらかくて美味しいなんて、俺どんだけ昼メシに時間かけてたんだろ。

 動揺って怖え……。


「そんな怒んなくても……って、あら? コレ……」


 俺のプンプン加減に苦笑いしてる美人の人差し指が、突然首筋にぴとっとあてられる。

 え? なんか付いてた? ソース? ご飯粒?

 そういや、迅にもよく言われるもんなぁ。 〝雷にゃん専用のよだれかけ買うか〟って。


「ちょっとアンタ達、まさか昨日……」


 たちまちキレ顔になってく先輩は、紙ナプキンを取ろうと伸ばした俺の腕を、まるで女性っぽくない力強さで掴んだ。




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