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⑧極めてみようと思います!
─雷─③
しおりを挟む一回、深呼吸した。
迅のこと考えるとマジで息が出来なくなって、自分が今何をしてるのか、何をしようとしたのか、分かんなくなる。
いつの間にか、ティーカップの中身が空になった。 気付かねぇうちにぜんぶ飲み干してた。
俺はその空っぽのカップを持ったまま背もたれに寄りかかって、今は男らしい先輩を観察する。
「……なぁ修也先輩。 前から思ってたんだけど、女の格好したり男に戻ったり忙しいよな」
「別にそうでもねぇよ。 メイクすりゃ女になるってだけ」
「それってさ、……心も?」
「心も」
「じゃあ先輩は、修也先輩の時は女の人が好きで、メイクしてたら男の人が好きってこと?」
いきなりの質問に、ティーカップを傾けて黙り込んでた先輩がガバッと勢いよく俺を見る。
ブチキレられるかと思った。
でもこれは、女装が趣味だと知ってからずっとずっと聞きたかったこと。
聞いちゃいけねぇと思って今の今まで我慢してたけど、制御不能になった脳ミソが指令を送って口からポロポロッと出ちまった。
俺も同じ道を走ろうとしてるし、そういう意味でも先輩なんだからいいかなって。
「は? メイクしててもしてなくても男が好きだけど」
「えッッ!?」
いかにも〝何言ってんの〟口調だった。
俺の質問自体おかしいってくらい当たり前な反応に、今度は俺がガバッと体を起こす。
「ま、まままマジで!?」
「あーいや、男だけが好きってわけじゃねぇ。 女もいける」
「ヒェェッッ!? 先輩もヤリチンじゃん!!」
「なんでだよ。 俺付き合ったら長えんだぞ?」
「長かったら男も女もいけるなんて発言出来ねぇよ!!」
「おぉ、確かに。 雷冴えてんじゃん」
あははっと笑いながら俺の頭をポンポンしてくる先輩。
どっちが恋愛対象なんだろって疑問だったけど、まさか両方だとは……なんてお得な人生なんだ。
このあっけらかーんとした感じから、そういう事で悩んだりも一切してなさそう。
挿れる穴が無いってメソメソしてる俺の方が、マジでおかしいみてぇだ。
先輩は気が済むまで俺の金髪をグシャグシャにした。
空になったティーカップを俺から奪って、テーブルに置いてからもグシャグシャされた。
心臓のチクチクと先輩の爆弾発言に、さらに俺の頭ン中が真っ白け。
てか、知らない世界をこんだけ立て続けに知ってくと理解が追い付かねぇよ。
男女オッケーな先輩も、ダチにセクハラする翼も、常時数人のセフレが居ないと満足しねぇ性欲モンスターも、一体どんな感覚で生きてんだ。
「なぁ雷。 お前の引っ越しが決まった時、俺言ったよな?」
「…………?」
「そんなに簡単に人を信用するなよって」
「……言ってた、……かも」
「猫追いかけ回して門限破るのは大目に見てたけど、他は許さなかったじゃん。 なんでか分かる?」
「…………俺がバカだから」
「そう。 雷は困ってる奴見かけたらほっとけねぇし、弱えくせに売られた喧嘩買うし、楽しいコトしようぜって誘われたらよく考えもしねぇで誰彼構わずホイホイついてくぐらいバカじゃん?」
「ちょっ、修也先輩……俺のHPが……」
「俺の言いつけ破ってこっちのダチを信用した結果がコレ。 セフレだか何だか知らねぇけど、言いくるめられて遊ばれてるだけだって気付けよ。 なんで雷がアイツ好みになろうとしてんの? そんなの向こうの思う壺だろ」
「ツ、ツボ……ッ!? ……うぅぅッッ!」
慰めてくれてると思って黙って聞いてたら、どんどんHP削られて最後にKOされた。
元々瀕死状態だったのに……防御なんかゼロに近かったのに……。
こみ上げてくるもんのせいで、目の前がぐんにゃり歪む。
「……ふぇ、ッ……そんな……そんな言わなくていーじゃん……ッ、俺が何も言えねぇからってぇぇ……」
だって……だって……ッッ!
性欲モンスターな迅がヨソに行かねぇようにするには、俺がギャルになるしかねぇじゃん!
穴はどうにもなんねぇけど、俺とするエッチで満足してもらいてぇからそれもいっぱい研究する。
お得な性感覚を持った先輩なら知ってるはずだろ? メソメソな俺をKOするほどダメージ与えなくていいから、そこんとこ教えてほしいよ。
「はぁ……。 そんだけ泣くって事は、雷はアイツのことが好きなんだな?」
「…………?」
「セフレでもいいからコッチ向いててよーって事だろ? アイツ好みのギャルになりてぇとか言い出してんだから」
「…………ッ」
……す、……き……?
すきって、好き?
俺が? 誰を? ……迅?
え? 好きなの? 俺、迅のこと好きなのか?
セフレなのに? 好きとかあんの?
え? ……え? どういうこと?
俺が迅のこと好きだったら、迅はどうなんだ?
このセフレ契約には契約書が無えから、その辺めちゃめちゃアバウトだけど?
説明されたところで俺の頭の上に〝?〟がいっぱい並んじまうと思うけど、そんな大事なことは根気よく教えてくれないと困んじゃん。
真っ白けだった俺の頭ン中で、ついに、どこからともなくやってきた爆弾が爆発した。
先輩の顔を見つめる。
男くさくねぇツラは、迅とは真逆だ。 ……って、また迅のこと思い出してる懲りない俺。
さっきとは逆に、先輩が俺の顔の前で手のひらをヒラヒラ~ッとしてくる。
それがなんか、おまじないとか催眠術とかに見えてもっとクラクラした。
「──金髪貧乳ギャル目指してんだっけ?」
「…………へっ?」
「なる?」
「え……金髪貧乳ギャル?」
「あぁ」
頷いた先輩が、ニヤッと笑った。
そのニヤッはどういう意味。 また俺バカにされてんのかな。
瞬きを忘れてて、流れそうだった涙があっという間に枯れた。
いま俺の頭の上にあるのは〝?〟じゃねぇ。
たぶん、〝…〟だ。
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