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⑧極めてみようと思います!
─雷─⑤
しおりを挟むビビったーー……ッッ!!
い、い、いつの間に俺の隣に居た!?
俺ン家目前、めちゃめちゃナチュラルに会話してた相手は噂のデリカシーゼロ男だった。
しばらく着信もメッセも止まってたから、とうとう元祖とホテルにでも行っちまったんじゃねぇかと考えてた……ってのはウソで、脳ミソが大破してる俺はなんっっにも考えてなかった。
咄嗟に紙袋を後ろに隠して、ササッと迅から離れる。
それなのにヤツは、ローテンションな怒りイケボでこう言いながらジリジリ近付いてきた。
「よぉ、雷にゃん。 ツラ貸せや」
「うわッ、そんな物騒なセリフやめろよな! 俺のツラは貸せねぇ! 大体、俺のツラなんて借りなくても自分のツラで満足だろーが!」
「誰が顔面の話してんだよ。 お邪魔しまーす」
「あッ!? おい!! 勝手に上がるな!!」
いっつも硬派なヤンキー気取りで真顔な迅が、いきなりニコニコ笑顔になったのが超怖え。
俺の左ポケットから玄関のカギを抜き取って、我が物顔で不法侵入しようとした迅のブレザーを引っ張った。
「迅ッッ!」
「親は? 今日遅い感じ?」
「二人とも帰りは七時過ぎだよッ」
「なんだ、じゃあゆっくり出来ねぇな」
「ゆっくりする気だったのか!?」
信じらんねぇ! コイツどんな神経してんの!?
さっきあんだけ俺を泣かせといて、よくそんないけしゃあしゃあと……ッ!
って、いや……俺が勝手にチクチクメソメソして泣いてただけなのかもしんねぇけど!!
とりあえず親フラあって良かった。
こんなエログッズ持ち帰ってることバレたら、「そんな必死なんだ」って笑われる。
「今までどこに、誰といた?」
「う、ッ……?」
家ン中は初見のはずの迅が一発で俺の部屋を当てて、来いよと腕を引っ張られた。
俺ン家なのに。 迅の野郎……我が物顔が板についてる。
絶対に見られたくねぇ紙袋は隠したまま、俺は壁際に追いやってくる迅を見上げて不必要に笑って見せた。
当然、俺の逃げ一択の笑顔はシカトされる。
「アンスコすれば俺の監視から逃げられると思った?」
「あ、あんすこッ? あんすこってなんだ?」
「アンインストールのこと。 アンインスコとも言う」
「へぇ! 勉強になりますッ」
それは位置情報ナンチャラアプリのこと言ってんだな?
所有者に無断でインストールして、所有者の行動を監視してた行き過ぎたダチ行為。
まぁそれは見逃してやるさ。
〝目を離したらスグ面倒事に巻き込まれるトラブルメーカー雷にゃんを見張るためだった〟って言われたら、ぐうの音も出ねぇ。
あんまり現実を突き付けられたくもねぇし、俺はその点についてはスルーを決め込む。
だってもう、先輩が〝あんすこ〟しちまったし。
「束バッキー野郎に泣きついたのか」
うおッ。 迅の追及はまだ続いてたのか。
どこで誰と居たかってやつ、俺に聞かなくても迅は知ってんだろ。 あんすこ直前まで監視してたっぽいからな。
「どうなんだよ。 なんでよりによって束バッキー野郎のとこに行った? アプリの話になる流れになんのもおかしいじゃん。 モールの後はアイツの家かホテルにでも行ってた? 俺の電話もメッセもシカトするぐらい、忙しかったんだよなぁ?」
「……い、忙しいっていうか……」
「下見るな。 俺の目を見ろ」
「────ッッ!!」
か、か、壁ドンきたぁぁッッ!!
見ろって言われても、そんな呼吸困難必至なコトされたら顔上げらんねぇよ……ッ。
脱ぎ散らかした部屋着や読みかけの漫画が散乱した、何の変哲もないマイルームが急にピンク色に見えてきたぞ!
後ろに隠したままの紙袋が、KYなことにガサッと音を立てる。
「雷にゃん」と促されて恐る恐る見上げると、左手も壁ドン。 これで両手で囲われちまったけど、俺の目線よりちょっと高い位置のそれなら逃げようと思えば逃げられるのに、体が動かなかった。
ドキドキする。 呼吸がうまく出来ねぇ。
目が乾くのにまばたきも出来なくて、見下ろしてくる迅の黒目に吸い込まれそうになった。
汚ねぇ俺の部屋が異空間になったみたいに、辺りはマジでピンク一色。
先輩が余計なこと言うから、〝すき〟の単語が頭ン中を行ったり来たりする。
〝迅、そんなに見るなよ……〟
そう言おうにも、声まで出なかった。
脱出が簡単そうな壁ドンから逃れることもしない、偉そうな「俺の目を見ろ」発言には従う、心臓バクバクドキドキは止まらねぇ、トドメは俺の部屋をピンク空間にした迅の視線。
これはもう、……誤魔化せねぇ。
〝すき〟なのか。
俺は迅のこと、〝すき〟なのか。
言ったことも言われたことも無え、童貞男子な俺には無関係でむしろ敵対してた〝すき〟の気持ち。
──ドサッ。 ゴロゴロ……ッ。
とうとう、俺の手のひらから紙袋が滑り落ちた。
見つめ合ってた迅の視線が、転がり出たその中身に移る。
「…………へぇ、……」
バレた。
俺がドキドキして脱力したばっかりに、紙袋の中身がモロバレした。
でも迅は、笑わなかった。
興味深そうにジロジロッとは見てたけど、壁ドンはそのままですぐに視線は俺に戻ってきた。
うッ……またドキドキする……ッッ。
「なぁ雷にゃん」
「………………」
何だよッと強めに言ってやるつもりが無言になった。
口を開くと、「ほえっ?」みてぇなヘンな鳴き声を上げそうだったから、黙ってた。
じわじわ、迅の顔が近付いてくる。
うわ、どうしよう、キスされるッ?
こんな呼吸困難中にベロ入りのオトナキスなんかしたら、俺ガチで死んじゃうけどッ?
……と焦りながらも目をつむった俺は、ほっぺた熱くして唇待機。
ところが五秒待っても、十秒待っても、二十秒待っても、待機した唇に温かいのが下りてこない。
キス待機顔見られてんのかと思うと、目が開けらんねぇ。
──今こそ恥ずか死ぬ。
「雷にゃん、俺の言葉って……どこまで伝わってんの?」
恥ずか死ぬ寸前だった俺の耳に、なんだか気弱にも聞こえるイケボが響いた。
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