迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

文字の大きさ
83 / 223
⑨恋慕

─迅─②

しおりを挟む



 ヤツを待ってる間、動きの無え画面を睨みつけて心ン中ではずっと「は?」を連呼。

 各テナントのスタッフが次々と出入り口から出てきて、その度にビビられる俺ってそんなにコワモテか? いや今はそうか。

 なんたって人生で一位二位を争うくらいキレてっからな。


「わっ、ビックリしたぁ。 迅クンじゃん。 今上がり?」


 知らねぇスタッフに「お疲れっす」と挨拶して十数人目。

 やっとお目当ての人物が現れて、出会い頭にも関わらずつい喧嘩越しに詰め寄った。


「どういう事っすか」
「何が?」


 俺がここでお前を待ってる理由なんて一つしか無えだろ。

 すっとぼけてキョトン顔してんじゃねぇよ。

 性格がキツそうな女バージョンの束バッキー先輩を、タイマン張るみてぇに物陰に引っ張り込んで「てめぇ」と言わなかっただけマシだろーが。

 ギャル化した雷のツラが目に焼き付いて離れねぇから、色んな事がぶっ飛んでいく。

 ほんとは直接乗り込みに行きてぇけど、アイツはまたどうせ下手な言い訳並べて誤魔化すに決まってる。

 その誤魔化し方が俺には予想も付かねぇ言動だってのも分かってっから、理解に相当の時間かけるくらいならコイツの方が話が早え。


「何がって、分かってんだろ。 なんで雷にゃんをそっちの道に引きずり込むんだよ」
「……その言い方は全ドラァグクイーンに失礼よ」
「分かった、訂正する。 ……なんで雷にゃんに女の格好させてんの。 アイツが望んだのか? 違うだろ?」


 聞いたことの無え単語だったが、ツラを見る限りガチで失言かましたと分かった俺は素直に詫びた。

 直後に追及を再開したけど。

 ニこ上だか何だか知らねぇが、俺がどんだけ睨みをくれても飄々としてる、コイツの態度がマジで気に入らねぇ。

 これが野郎バージョンだったら確実に胸ぐらを掴んでた。


「聞いてんのか。 答えろよ」
「はぁ……。 ったく、喧嘩っ早いわねぇ」
「うるせぇな! どうなんだよ!」
「ギャルになりたいって、雷が望んだの」
「だからなんで……っ」
「それは雷に聞きなさいよ。 雷が望んだから、あたしは手助けしただけ」
「………………」


 声を荒げたのなんか、何年ぶりだっつーの。

 しかも何だ? あれは雷が望んだ? は?

 なんでいきなり、雷がギャルになりてぇなんて望むんだ……って、まさか。


「アンタ、ちょっと時間ある?」
「………………」


 辿り着いたかもしれねぇ正解が見えた瞬間、束バッキー先輩もピンときたらしい。

 雷が言ってた台詞とか、微妙に噛み合わねぇ会話とか、いきなりのギャル願望とか、諸々の答え合わせを今すぐ雷としてしまいたい。

 匂わすだけ匂わせて決定打をくれてやらなかった俺が、雷に言いてぇ事は一つなんだ。

 一人でヘンな方向に突っ走ろうとしてる雷を止めてやれるのは、俺しか居ない。


「待って。 話、あるの」


 雷に電話しようとスマホを取り出した腕を、ガシッと強めに掴まれた。

 見てくれは長身の美人だが、俺と同じ類の場数を踏んでそうだと睨んだ通り、さすがの怪力。 腕が上がらなかった。

 この状況で話があるって、百パー雷の事だよな。


「………………」
「………………」


 腕を掴まれたまま睨み合う。

 あー、……これガチだ。 目を見りゃ分かる。

 これはめちゃめちゃ〝真面目な話〟だ。


「……少しなら」
「夕飯奢るから付き合いなさい」
「………………」


 マジトーンな束バッキー先輩に連れられて入った店は、モールから歩いて五分のファミレスだった。

 いや店はどこでも良かったんだけど、こんな近場で俺とコイツがメシ食ってたら後々めんどくさい事になりそうだ。


「何食べる?」
「いや俺は食わねぇんで」
「え? ダイエット中? ダメよ、食事抜きは。 筋肉落ちちゃうわよ」
「話って何すか」


 席に座って十秒で本題を切り出す。

 ウキウキでメニュー捲ってるとこ悪いが、メシでも食いながら楽しくおしゃべりしようぜ、のテンションじゃねぇんだよ、こっちは。

 てか俺がダイエットなんかするかよ。 筋肉落ちる心配も無え。 毎日もっさん抱えてスクワット、背中にチビ三匹乗せて腕立て伏せ、その他筋トレしてるっつーの。


「あたしは食べるわよ、お腹ペコペコなんだもーん」
「……勝手にしろ」


 もう敬語も使わねぇ。 明らかに野暮用がありそうな俺を引き止めて、話があるっつったのはコイツだろ?

 夜勤のパートのおばちゃんと短い世間話してる暇あったら、さっさと話してほしい。

 こうしてる今もスマホの画面から目が離せねぇんだ。 俺の必死さ分かんだろ?

 敵なのか味方なのか、未だにコイツの事がよく分かんねぇ。


「雷から連絡きた?」
「……いいや」
「でしょうねぇ」
「なんだよ。 何か知ってんなら全部吐け。 今すぐ」


 重要そうな話ってのも五分で頼む。

 相変わらず既読のつかねぇ画面を消して、先輩の前でも堂々と位置情報アプリその二を起動した。 こっちのアプリはちょっとクソだから、読み込むまで二分はかかる。

 この時間だから確実に家に居るんだろうけど、念の為だ、念の為。

 雷の迷走を知ってしまったからには、何がなんでも今日必ず決着をつける。

 シチュエーションもムードも関係あるか。

 暴走して俺の目の届かねぇとこに行っちまう恐れのあるバカ雷にゃんに、もう猶予は与らんねぇよ。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

君は幼馴染み

石月煤子
BL
【隠れスケベ男前×流され平凡=幼馴染みBL/すけべmain】 『小学校一年の頃からずっと好きだった』 『あわわわわ……』 『俺と付き合ってくれないか、幸太』 バスケ部エースなハイスぺ幼馴染みに告白された平凡男子。 「お前とこーいうことするの、堪らない、何なら一日中シてたい」 (昨日も、一昨日も、その前にも「こーいうこと」をしたのに。簡単に流されちゃうおれって、おれって……もしかしてちょろい……?) ▲表紙イラストは[ジュエルセイバーFREE]様のフリーコンテンツを利用しています http://www.jewel-s.jp/

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

処理中です...