84 / 223
⑨恋慕
─迅─③
しおりを挟むおい、このクソアプリ。 〝読み込みまであと2min〟から進まねぇんだけど、どういう事だ?
しっかりしろよ、その二。
はち切れそうな俺の血管がブチッといくまで2minもかかんねぇぞ。
「雷ってさぁ、超が何百個と付くおバカさんじゃない? あげく、記憶力も怪しい」
呑気にドリンクバーを物色していた束バッキー先輩が、スマホにキレていた俺にアイスティーを持ってきた。
ブラックコーヒーが良かったんだがまぁいい。 ありがたく頂く。
ども、と礼を言って先を促した。
「……それが?」
「あたしとあの子の出会いって知ってる?」
「は? そっから遡んの? 雷にゃんのギャル化と関係無えんなら俺行くぞ」
「関係大アリよ。 何言ってんの」
これだから高校生は……って、ナメんな。 これみよがしにため息を吐くな。
俺が仕事以外で、こんなにおとなしく誰かの話に耳を傾ける事なんて無えんだぞ。
今すぐにでも会いに行きてぇ雷絡みだから、俺はここに居るんだ。
「出会いはまぁいいとして、なんであたしが雷を束バッキーしてたか、なんだけど」
「……あ、あぁ」
左のほっぺたを引きつらせて、多分めちゃめちゃ下手くそな愛想笑いで頷く。
コイツのこと束バッキー呼ばわりしてたの知ってたのか。
ま、あれだけコイツの前で雷とヒソヒソ話してたら、そりゃ気付くよな。
ヘンなツラしたまま、アイスティーに手を伸ばす。 一口飲んで、紅茶ってこんな味だったっけと二口目を口に含んだ。
だがその直後、ため息を吐いた束バッキー先輩から信じられない話を聞かされた俺は、生まれて初めて口からものを吹き出した。
「あの子ね、……輪姦されそうになった事あんのよ」
「ぶッ……!! ま、まわ、……はっ!?」
「たまたまあたしとダチの溜まり場だったから未然に防げたんだけど……そうね。 雷は脛蹴りしか出来ないくせに喧嘩っ早くて、誰彼構わず向かってくようなおバカさんだから。 あの時も雷は、身の程知らずにも向こうの喧嘩を買ったのよ」
「…………っ!?」
「……で、あの低身長、モテる部類の女顔、生意気な口調。 相手は三人……四人だったかしら。 後から口割らせた時にそいつらが言ってたのよ。 腹いせに犯そうとしたって。 コイツならヤれそうだと思ったって」
…………は? …………は?
雷が、犯され……いや、輪姦されそうになった、だと?
誰に? 今からソイツら殺しに行く? 殺すだけじゃ足んねぇからあの世まで追い掛けてって地獄見せる?
俺が吹き出してテーブルに散ったアイスティーを、先輩が紙ナプキンで拭いている。
それを俺は、モノクロがかった視界で見ているだけ。
体内が沸騰していた。 対象者への明確な怒りが、俺の中で煮えたぎっている。
だってそれは、雷がおバカさんなのとは関係無えじゃん。
アイツが単に、可愛いからじゃん。
自分のツラを下の下だとか言って俺の顔面をひがんでるけど、男なの分かっててヤられそうになってんじゃん。
なんでそれで気付かねぇの? そんなヤバイ目にあってて、あんなに危なっかしいってどんだけ危機管理能力低いんだよ。
そしてさらに俺が腹立ったのは、……。
「……雷にゃん、ンなこと一言も……言ってなかった」
「言うはずないわよ。 だって覚えてないんだもん」
「……は?」
「助けに入ってすぐに、あたしがあの子を落としたの。 迅クンなら分かると思うけど、殴って意識を失わせる事ね。 咄嗟に鳩尾をこう、……えいって。 未遂は未遂だったけど、四人の男に囲まれて制服脱がされる寸前だったのよ? 雷はいつもの喧嘩だと思ってたんでしょうけど、ヤツらの思惑は違った」
「……雷にゃんを寝かせるために鳩尾殴ったのか」
「そう。 あたしとダチが始末つけてる現場を見せたくなかったしね。 そのあとよ、問題なのは。 家まで雷を送って、次の日あの子ケロッとして……なんて言ったと思う?」
「……さぁ」
「〝修也先輩マジ強えっすね!尊敬!大尊敬!あざっす♡〟だって。 自分が制服脱がされそうになった事も、鳩尾殴って寝かせた事も覚えてない……というより、あたしが物凄い立ち回りしてヤツらをぶっ飛ばしたって記憶にすり替わってる」
「………………」
なんだよそれ……。 そんな事があんのか。
もしかして雷は、分かってたのか?
実はショックだったんじゃねぇの? 犯されそうになってたって、頭では分かってたんじゃねぇの?
迫ってきた野郎どもの行動があまりにも衝撃的過ぎて、アイツの脳みそが〝忘れろ〟って指令出したんじゃ……?
そういや、俺はこの話を雷から直接聞いた事はなかったが、ずっと前にアイツは〝先輩のことマジで尊敬してる〟と言っていた。
……すり替わってる記憶が今も健在だって事か。
俺にも充分、衝撃的な話だった。
色々と複雑な気持ちにもなった。
断じて俺は無理やりはしてねぇと思うが、ほっぺた真っ赤にした雷の言葉の端々には記憶の切れ端ともとれる台詞が多々あった。
「でもいいの。 あんなの覚えてたっていい事ないし。 ……あたしが束バッキーしてた理由、納得したでしょ」
「…………あぁ。 癪に障るけど」
「ふふっ。 あたしね、引っ越した雷が心配でしょうがなかったのよ。 弟みたいなもんだから。 出来の悪い子ほど可愛いって言うじゃない?」
「それは分かる」
「でしょ? もうあんな目に合わないように、ウザいって言われるまでは遠距離束バッキーしようと思ったの。 ちゃんと門限守ってるのか、無闇に喧嘩買ってないか、とか」
「………………」
5
あなたにおすすめの小説
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる