迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑩カレシが出来ました!

─雷─②

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 心臓ぶっ壊れるから、俺を呼ぶな、触るな、舐めるなと三拍子叩き付けてやりたいとこなんだけど、その三拍子が無えとまたチクチクと戦わなきゃなんなくなる。

 ツラいぜ……迅が彼ピッピになってもこんなにしんどいとは思わなかった。

 これっていつか慣れるもんなのかなぁ?

 俺を見る目が優しい。 めちゃくちゃ包容力満点な彼ピッピの目だ。

 こ、これは……ヤバイ。 笑って細くなった目にまで見惚れちまう。

 半開きの口におやつをムギュッと押し込まれて、やらしい中指が離れてく。 ちなみに低い声で「あーん」って言われた。 甘々の垂れ流しだ。


「……あのさ、俺の存在忘れないでくれる?」


 迅と見つめ合っておやつをモグモグしてると、後ろからため息まじりの翼の声がした。

 うわ、ごめん翼! 忘れてた……!

 だってモグモグしてる俺のほっぺたを、迅が優しいツラしてムニムニしてくんだもん……ッ。

 ちょっと俺たちだけの世界に入り込んでて、迅のバックの夕焼け小やけがやけにロマンチックだぜ……なんて浸っちまってたよ!

 いつ見ても「痛くねぇのかな?」って心配になる舌ピアスを、器用にカチャカチャ鳴らしてる翼を振り返った。


「いやいや、わ、わ、忘れてねぇよ!? ドーンッとあぐらかいてんじゃん、翼! ヤッホー!」
「……ヤッホーって」


 そんな肩落とすなよ!

 迅が彼ピッピになったからにはもう俺にセクハラしてこねぇだろうし、二度と〝エロピアス〟なんて呼ばねぇからさ!

 見た目チャラ過ぎるコイツも案外イイ奴だから、訳分かんねぇ事言ってる俺が手を振ると振り返してくれた。

 すんげぇ苦笑いしてるけどな。


「あ、いい事考えた。 翼、お前明日から俺とクラス変われ。 黙ってりゃバレねぇよ」
「バレるだろ」
「バレるだろ!! 迅、ちょっと俺様が過ぎるぞ!!」


 それは何にも「いい事」ではないだろ!

 でもな、〝世の中は俺を中心に回ってるぜ〟発言、……俺は嫌いじゃないぜ。 何ならポポポポポッ案件。

 しれっといつものトーンで翼に無茶言う迅が、さらに不満を漏らす。


「大体、なんで翼が雷にゃんと同クラなんだよ」
「知るかよ。 雷にゃんと迅が鉢合わせたら問題起こすと思われたんじゃね? 転校初日に金髪で来たんだぞ、雷にゃん。 ヤンキー確定じゃん」
「あぁ、それで俺は二組だったのか! 一組には藤堂迅っつーボスが居るからって?」
「そうそう。 頼むから卒業まで問題行動起こすなって言われてたしな、迅は」


 へぇ……迅ってそんなに問題児扱いされてたんだ。

 クラスが違うから先生との事は全然知らねぇけど、ともかくこの学校みんなが迅にビビってるってのは見てれば分かる。

 まぁなぁ、俺以外を見る目が怖えもんな、迅は。

 視線だけで何人か殺っちまったんじゃねぇかってくらい睨みが鋭くて、俺でさえも「ヒェッ」て鳴いちまう。

 同クラじゃねぇのは残念だけど、あと五ヶ月で卒業なんだ。

 そんな無茶言って翼を困らせんなよ。 ガキじゃねぇんだからさ、ププッ。


「てか雷にゃん、いつまで翼見てんの。 こっち向けよ」
「んえッ?」


 不意打ちでいきなり首をグイッて……もげるっての!!

 そりゃ翼と話してたんだから翼を見るだろッ。

 強引な俺様迅様はまだ、甘々彼ピッピの奥に潜んでいらっしゃるらしい。

 首がもげそうなくらい強引に迅の方を向かされて、すぐ目の前に迫っていたツラの鼻同士がぶつかりそうになった。


「……って、おいおいおいおい!? いまチューしようとしただろ!! 油断も隙も無え!!」
「……チッ」
「舌打ちすんなっての!! 翼の前でそんなチュッチュ出来るわけねぇじゃん!」
「俺、別に気にしねぇけど」
「余計なこと言わないでくれよ翼ぁぁ~~! そこは気にしてくれぇぇ~~!」
「気にしねぇってさ。 雷にゃん良かったな」
「よくねぇ!! 迅と翼が気にしなくても、俺が気にすんの!!」


 元祖ヤリチンと現役ヤリチンにはついていけねぇ!

 キ、キスなんて、二人っきりの時にやるからドキドキしていいんじゃんッ。 俺はついチュッチュの合間も声出ちまうし、出来ればそんなの迅以外には聞かせたくねぇもんッ。

 ……お? てことは。

 逆に言うと、恥ずか死ぬ寸前を何回も見られた迅には、もう何を見せたってオッケーな気がしてるってことか。

 おぉぉッッ!! なんか付き合ってるって感じするな!!


「昨日さぁ、二人揃って休んでたじゃんー?」


 ……おっと……また翼の存在忘れてキャピってたぜ。

 ダメだな、誰かと付き合うのが初めてだからって浮かれ過ぎはよくねぇだろ、俺。

 でもニヤけちまうのは治んない。

 迅、おやつくれ。 モグモグでニヤニヤを誤魔化しときたい。


「あぁ、それが何?」
「その様子だと……迅さん、ついにっすか?」
「いいや、まだに決まってんだろ」
「はあ!? お前どんだけ奥手野郎に成り下がってんの!? 告ったんだろ!? 付き合ってんだろ!? 二人で一夜を明かしたんだろ!? ンなの、童貞でももう少し進展あんぞ!?」
「……っるせぇな。 雷にゃんは他とは違うから。 大事にしてぇんだよ」
「……ポポッ」


 迅の野郎ぉぉ~~!! イケメン過ぎて泣けるぅぅ~~!

 うっかり顔が熱くなっちまったじゃんッ!

 おやつが喉を通ってかねぇよッ。

 今ならSNSで流行りの〝キュンです!〟を全力で言える自信あるぜ!!


「……なんだ? 雷にゃん鳴いた?」
「今のは初鳴きだったな。 雷にゃんの鳴き声は他にもあるよな?」
「なに? 雷にゃんって鳴くようになったの?」
「あぁ、見てろ」


 ウソだろ、おい、……やめろ、やめてくれ!!

 翼の前だ。 分かってるよな?

 まばたきが出来なくなった俺を、迅がまたふわっと抱きしめる。

 コイツ絶対分かってねぇ。 あの言葉を言う気だ。

 俺の鳴き声を翼に聞かせてぇからって、こんなとこで俺様を発揮しなくてい、──。


「雷にゃん好きだよ」
「────!!」


 耳元で、たぶん俺しか聞こえないぐらいの声量で、迅のイケボが囁いた。

 それは電流みてぇに全身をビリビリッとさせて、まんまと感電した俺はこてんと迅の胸に寄りかかる。

 そして、……。


「…………ピィ……」


 迅の手のひらが、よくできましたと言いたげに俺の髪を撫でてくる。

 「ニャアじゃねぇのか」って翼の呟きに、迅がフフッと笑いやがった。

 畜生……してやられた。

 ……これ、ほんとにいつか慣れる日がくんの?

 ていうか迅は、電気属性だったんだ?





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