迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑩カレシが出来ました!

─雷─⑦

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 俺は先週この当たり屋野郎と、カノジョの誕生日に贈るためのネックレスを選んだ。

 君にあげたいな、なんてナンパな最低発言してたから説教して、でも最終的にはめちゃめちゃ感謝されていい感じにバイバイしたから、よく覚えてる。

 ちなみに一時間近くかけて選んだネックレスの色は、ピンクゴールドだった。


「良かった、覚えててくれたんだ?」
「覚えてるよー! 当たり前だろー!? 付きっきりでカノジョへのプレゼント選んでやったもんな!」
「そう、……あの時はありがとう」
「どういたしましてー! で、どうだった? カノジョ喜んでくれた? あッ、誕生日に渡すんだっけ?」


 話をした感じでは、コイツは口下手というか普段思ってる事をバシッと言えないヤツ。

 初めてのカノジョの誕生日をきちんと祝いたいって言うから、他のお客さんよりもコイツを優先して俺もマジで真剣に選んだ。


「それが……実は……」
「うんうん!」
「これ、やっぱり……君にあげたいなと思って」
「うんうん!! ……んッ!?」


 なんだって? いま空耳聞こえた?

 ぱちぱちっとまばたきをして、男の顔をジッと見つめる。

 男女トイレの境目、多目的トイレが目の前にあるここはシンプルに通行人の邪魔だ。

 てか……一人で照れて一人でモジモジするなよ。 気の強そうなギャル彼女が、見るからに貧弱そうな彼氏のトイレを我慢させて公開SMプレイしてる……とか思われてたらヤなんだけど。

 迅とのルンルンハッピーな妄想中の時は人の目なんて気になんねぇのに、赤の他人であるコイツとカレカノ誤解されるのは不愉快でしかねぇ。

 激ニブ鈍感認定されてる雷にゃんでも、さすがに今のセリフがヤバイって事だけは分かるぞ。

 このモジモジ男……カノジョ持ちのくせに何言ってんだ。

 誕生日プレゼントとして買った大事なモノを別の女に渡そうとしてるって、最低最悪チン○野郎のすることだぞ?


「……あのさ、今空耳が聞こえたんだけど」
「空耳じゃないよ。 俺、ギャルには怖いイメージしかなくてあんまり好きじゃなかったんだけど、君はなんだか……とても可愛げがあって、元気いっぱいで、……他人のプレゼントを真剣に選んでくれる真面目なところとかすごく好印象で、ギャルのイメージが覆ったというか、……その、……」
「そ、……そっ……」


 おいおいッ! それは仕事だからだぞ!?

 いやダチだったら真剣に選ぶけど! お前は赤の他人で、雷ギャルにとってはお客さんだからな!?

 先週あれだけ説教したってのに、無駄だったらしい。

 ヤバいセリフを重ねてきた男のモジモジ具合にドン引きして、ひっくり返りそうになった。

 コイツ……髪型は今風で、ガリガリの細身体型で草食系っぽいのに、雷ギャルによそ見しちまう肉食系なところも持ち合わせてる。

 ガチの目をしたモジ男と視線が合ったまま、動けない。

 けどこれ、絶対逃げた方がいい雰囲気だよな?

 トイレなら同じフロアにも別の階にもいっぱいあるはず。 こんなバカげた話に付き合ってて漏れたら大変だ。

 よし、ズラかろう!と動いたその瞬間、両肩をガシッと掴まれていよいよ逃げられなくなった。


「う、うわッ、何ッ!?」
「君の事が好きになってしまったんだ!」
「えッ? えぇぇぇッッ!?」
「これは君が選んでくれたものだから、気に入らない事はないだろうっ?」
「いや、えッ、いや、……えッ!?」
「受け取ってほしいんだ! いきなり付き合ってほしいなんて言わない! お友達からでもいいからお願い!」
「……えぇッ……!?」


 なんだそれ!? 雷ギャル大パニック!!

 迅いわく俺の脳ミソは小せえから、肩掴まれてゆっさゆっさと揺さぶられると頭ン中がゴッチャゴチャ。

 それでもハッキリしたのは、雷ギャルに告りながら今カノへの誕プレを横流し(?)しようとしてるってこと。

 マジで最低最悪チン○野郎が確定した。

 この場を軽やかに立ち去るにはどうしたらいい? 考えろ、雷!

 ──でも俺、告られ慣れてねぇから、どう返事を返すのが正解か分かんねぇ……!

 こんな通行人行き交う場所で、草食系のナリした肉食系野郎に告られるとは何たる不覚! そんで雷ギャル罪作りな!

 てか肩が痛てぇよッ。 そんなヒョロヒョロなくせに、しっかり男の腕力使うなっての!

 クソぉぉ……ッ! 考えろ、考えろ、……穏便に済ませて逃げるためにはどうしたらいいか……!

 ……あッ、そういやコイツ、付き合ってほしいわけじゃないって言ってたよな?

 よし、それだ!! それしかねぇ!!


「お、お友達でもいいってこと?」
「ああ、もちろん!」
「ネックレスは要らねぇけど、……ダチでいいなら……」


 俺の返事にパァッと表情が明るくなったモジ男の力が、もっと強くなった。

 いやいや、これ正解じゃなかったのかよ……ッ。

 そろそろマジで痛てぇから手を離してくれ、モジ男……ッ。


「いいよ、お友達からで! じゃあ名前と連絡先教えてくれるかなっ? いいよねっ?」
「うッ、痛てぇってば……ッ」


 いい加減キモいよぉ……離せよぉ……ッ。

 肩から二の腕に移動したモジ男の力が、全然緩まねぇ。

 左手でしっかり俺の腕掴んで、右手にスマホをスタンバイしたコイツは何が何でも雷ギャルとダチになりてぇってのか。

 モジ男にしつこく絡まれて、草食系男にさえ力じゃ敵わねぇし、その上今にもおしっこ漏れちまいそうな危機的状況の俺は、もはや半泣きだった。 



 ──ただし俺には、こういうピンチの時に颯爽と現れて守ってくれる、最高に強くてイケメンな彼ピッピがついている。

 勘違いじゃなければ、いま通路を走ってるこの足音はたぶん、……。


「ねぇ、いいでしょ? 君の名前、知りたいなぁっ」
「い、いや……」
「……はぁ、っはぁ、……っ、俺? 俺の名前は藤堂迅」
「────ッッ♡」




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