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⑬クラスマッチ
─迅─⑥
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言い寄られるのには慣れてたはずだ。
名前も知らねぇ女から、学校、駅、道端、バイト先……場所は様々だったが、アプローチかけられると「別にいいけど」の常套句を使ってきた。
ガチで俺はモテてきた。
性処理に二日と空いた事なんかない。
こんなに我慢を強いられても不平不満を言わずにいられるのは、多分相手が雷だからだ。
クラスマッチでの優勝に向けて毎日ボールと戯れてる雷と、シフトを増やした俺は見事にすれ違い生活。
本番まであと一週間に迫った週末、やっと土日の休みをもぎ取った俺は一ヶ月以上ぶりに雷を家に呼んだ。
雷と付き合うとなって欲求不満は覚悟してたから、まだいい。 ガッツリ不機嫌オーラを撒き散らしてはいるが、それはしょうがねぇ事。
でも雷にずっと言えてねぇ面倒事が何日も続いてて、さすがの俺もイライラを極めていた。
「……はぁ」
もっさん親子と遊んでる雷を眺めて、猫もネコもどっちも可愛いなと心ン中は確かに和んでたのに、無意識に溜め息を吐いていた。
意外にめざとい雷が、若干嫌がってるもっさんを抱いて振り返ってくる。
「どうしたんだよ。 ンなでっけぇため息ついて」
「いや……」
「あ~♡ お前らマジで可愛いなぁ♡ ん~♡ もふもふ最高~♡ あッ、もっさん~逃げんなよ~!」
「……ほっといてやれ」
猫は気ままな動物だろ。 抱っこの気分じゃねぇもっさんは、最終的に雷の腕から飛び下りて走って逃げた。
三匹のチビ達も、もっさんを追い掛けて下の階までついていったんで、俺の部屋の猫密度が急激に下がる。
あ、ここにもう一匹ネコが居るか。
「……迅? マジでどした? 具合でも悪りぃの? 俺帰った方が良さげ?」
ベッドに寝転んだ俺に、心配そうな表情を浮かべた金髪ネコが近寄ってくる。
普段は鈍感まっしぐらなくせして、こういう時だけやたらと勘がいいのは何なんだ。
「だいじょぶ?」と首を傾げた雷が可愛くて、頭を撫でてやった。 これも無意識だ。
「帰るなよ。 やっと雷にゃんを独占できるのに」
「ど、どく……ッ! そうやってなぁ、キャラ変するなよ、迅! ドキドキしちまうだろッ」
「雷にゃん限定だけどな」
「ひぇ……ッッ♡」
そうやってすぐ照れるな。 クソ可愛いヤツめ。
俺は上体を起こしてベッドの上で胡座をかいた。 すると自然に雷が俺の胡座に来て、ちょこんと座る。
コイツ、マジで猫みたいなヤツだ。 それか、俺を椅子にするクセがついてるか。
体を預けてくる無防備な雷に、最近の俺の面倒事を話すのはちょっと気が引ける。
付き合う前、雷が心臓辺りを押さえて〝チクチクする〟と言ってた可哀想な顔がよぎった。
いや……でもまぁ、俺達はもう付き合ってんだし、話したところでチクチクさせるような事は無ぇか。
「迅、俺は頼りになんねぇかもだけど、話聞くくらいは出来るんだぜ?」
「んー……。 あんま言いたくねぇんだけど、雷にゃんに隠しとくのも違ぇから言うわ」
「うんうん。 やっぱ何かあったんだな? 任せとけ! この雷にゃんがビシッとバシッと解決してやろうじゃん! 泥船に乗った気でどうぞ!」
泥船って……前も間違えてそんな事言ってたが、泥船だと沈んじまうぞ。
って、雷は本気で俺の溜め息の理由を知りたそうにして、かつ心配までしてんだから余計な事は言うまい。
「……毎日女が待ち伏せしてんだよ」
「…………はぁッ!? 待ち伏せ!? はぁッ!? どういうことだッ!?」
ただでさえデカい目ン玉ひん剥いて、俺を見上げてきた。
「女って誰なんだ!」と騒ぎ出したんで、とりあえず「落ち着け」と細い体を抱きしめる。
瞬時におとなしくなった。
「俺、平日はほぼ毎日バイト入ってんじゃん?」
「うん、……」
「バイト先に来るんだよ。 入れ替わり立ち替わり色んな女が」
「そ、そそそそれって、迅の伝説相手?」
「雷にゃん風に言うとそうだな。 鬱陶しくてマジで困ってんの」
「なッ……そ、そんな……ッッ! 伝説相手……ッて、それ元祖セフレ達ってことか!?」
「そう」
「いッッ、いぃぃーーッッ!!」
「い?」
「イヤだぁぁ!!って言いたかったんだよ!!」
「ああ、なるほど」
チクチクを通り越した雷が、俺の胡座の上から飛び下りてガンギレ始めた。
予想とは違う反応だ。 メソメソされるより遥かにいいが、声量がバカになってんぞ。
雷も一緒に下校中だった時か、その現場に立ち会った事があるせいで話がリアルらしい。
あれからも、頻繁にとは言わねぇが待ち伏せされては断ってきた。 けどここ最近はそれが毎日なんだ。
場所を問わず、俺の「別にいいけど」を期待した女達は一人や二人じゃねぇ。
付き合ってるヤツ居るからと断っても、それがその場だけの断り文句だと誤解されてそうなんだよな。
めちゃめちゃめんどくせぇ。
「なるほどじゃねぇよ!! なんで元祖達はそんなしつこいんだ!! お前のテクニシャンっぷりが忘れらんねぇとか!? 迅様よりすんばらしい巨根はそうそう居ねぇから!?」
「……下品だぞ、雷にゃん」
「だってホントのことじゃん!! 迅ってやたらイケメンだし、イケボだし、スタイル抜群だし、甘やかし上手だし、えっちの時もめちゃめちゃ優しいし、大事にしまっせオーラがハンパ無ぇし、悪いとこ見つける方がムズイって!!」
「……ありがと」
「はぁッ!? 自分のイイとこ分かってなかったねぇくせに、簡単に感謝するな!!」
ベッドサイドに立って、生意気にも俺を見下ろす激ギレ中の雷の猫目が、マジだった。
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