迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑰仕返し

─迅─⑥

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 このツラは明らかじゃん。

 不躾で余計な世話でしかなかった翼の発言が、俺の口角を上げさせた。

 面白えほど、妄想がどんどん膨らむ。

 俺と同じく〝これはいいネタだ〟と翼もニヤついた。


「お、いい兆し。雷にゃん顔真っ赤じゃん~」
「……雷にゃん、イジろうとしたんだ? どうだった? デキた? そん時イッた? 泣きベソかきながらやってた? それともワクワクしてた? 中指? 人差し指?」
「ぶはッ……! 迅もエロピアス降臨してんな」
「~~ッッ、翼はともかく、迅までそんなエロピアス降臨させて食い付くなよ! 俺いま穴があったら入りてぇ大ピンチ状態なんだぞ!」


 いやだって気になるじゃん。

 俺に隠れてこっそりレッスンやってたなんて朗報は、もっと早く知っときたかった。

 雷の事だから、まーた俺を驚かせるつもりだったんだろ。


『実は俺、迅とのエッチ(小声)のためにレッスンがんばったんだぜ! なんとイチジクもマスターした! 迅、早くエッチ(小声)しよッ♡ 早く早くッ♡』


 ……ってな。

 浣腸済みの雷が、ローション片手にベッドに寝転んで俺を誘うとこが目に浮かぶぜ……。

 あくまでも完全な妄想だが、あながち外れちゃいねぇと思うんだ。

 雷は、レッスンはまだ怖がって腰が引けてるけど、俺とのセックスに対する意欲だけは充分。

 可愛いじゃん。

 恋人がエロエロなのは嫌いじゃねぇよ。

 俺だって、……俺だってなぁ……。


「……俺も早く雷にゃんの穴に入りてぇよ」
「ぴぇッ?」
「俺も~! 俺も入りてぇ!」
「はぁッ!?」


 俺の真似して右手を上げた翼が怖かったのか、雷が体を擦り寄せてきた。

 この野郎……俺と雷のイチャ会話に割って入るんじゃねぇ。おまけにビビらせやがって。

 雷の前でそういう発言するなって、何回コイツに忠告したと思ってんの?

 ピキッた俺は、雷を抱き締めて右手に拳を作った。それを翼に見せつけながら、目を据わらせる。


「おい翼、どさくさに紛れて何言ってんだ。鳩尾いくか?」
「鳩尾はおやめになって! 翼ジョークは華麗にスルーしろって言ってんじゃん!」


 お前のはジョークに聞こえねぇから、華麗にスルー出来ねぇんだよ。

 翼が男も女もイケるなんて無駄情報、知らなきゃ良かった。コイツも俺の事を卑下出来ねぇくらい、遊びでセックスを楽しんでるヤツだ。

 雷を見る目が変わったら、いつヤバイ事になるか分かんねぇだろ。

 ま、その時は鳩尾一発じゃ終わんねぇけどな。


「迅~~ッ、コイツさっきから何言ってんのッ? なんか俺……身の危険を感じるんだけど……!」
「ヨシヨシ。危機感持ってるならそれでいい。能天気に頭の上に花咲かせてっと、食われちまうよ、雷にゃん」
「ひぇぇ~~! お前ダチにまで手出す愚か者なのかッ!? てか俺だぜ!? 俺! 想像してみろよ、キモいだろ!?」
「おい雷にゃん、何を……」


 バカ、想像なんかさせるなよ。

 キモくねぇから狙われてんだぞ。


「え、想像していいの? じゃ遠慮なく……」


 本人直々に妄想の許可を得た翼が、その場で座禅を組んで瞑想に入った。

 胸元で「翼のヤツ、何してんの?」って……さっそく能天気雷にゃん参上してるし。

 エロピアス翼に狙われてるって意識を持ってたのは意外だが、こうも天然おバカだとマジでこの先が思いやられる。

 瞑想してる翼はシカトだ、シカト。

 アイツが黙ってるうちに、こっちはこっちでイチャイチャさせてもらう。


「なぁ雷にゃん、個人レッスンどうやってたのか見せろよ」
「えぇぇッッ!? こ、ここ、ここで!?」
「バーカ違えよ。二人っきりの時だ」
「あッ……♡ そうか、そうだよな。デヘッ♡……じゃなくて! 見せるわけねぇだろッ! 俺が恥ずか死んでもいいのかよッ!?」
「雷にゃんが死ぬ時は俺も死ぬ時だ。どっちかが独り身になるなんて耐えらんねぇよ。そうだろ?」
「う……ッ! たしかに……! 俺も迅が居なくなるとか考えらんねぇ! てか考えたくねぇ!」


 そうだよな、うん。可愛いヤツめ。

 俺が居なくなるのは考えたくねぇ、か。

 て事は、雷は一生俺のもんだよな。

 白髪ジジイになっても、ヨボヨボで歩けなくなっても、とりあえず二人で同じ時間を過ごせたらシアワセ。

 欲しかった満点の答えに機嫌を良くした俺の視界から、瞑想中のエロピアスが消えた。

 チビで華奢な雷を抱っこして頭の悪りぃ会話してたら、ンなもんあっという間だ。


「でもな、迅……」
「ん?」


 クルッと反転させると、こっちを向いた雷はまたほっぺたを真っ赤にしていた。

 言いにくそうに俺のブレザーを人差し指でツンツンしてきながら、可愛い唇がぷにっと突き出る。


「あのな、白状するけど、俺……一人でやってみようとしたことはあったんだ。でも指一本もムリだった……痛くはなかったけど、なんか怖くて……」
「俺の指じゃねぇから?」
「そう、かも……」


 はぁ~~? そんな事を、そんな卑猥な上目遣いで、今にもキスしてくれと言わんばかりに突き出た唇で言う~~?

 個人レッスンをしてみようとしたけど、俺の指じゃなかったから出来なかった……って何?

 「レッスンは迅お願い♡」って遠回しに誘われてる?

 また俺、忍耐力試されてんのか?

 どちらにせよ、──。


「はぁぁ……可愛い……」
「か、かわッ……!」


 感想は、その一言。

 雷を抱き締めて、後頭部ヨシヨシして、耳にキスして、……仕上げに「好きだよ」と囁く。

 くぐもった鳴き声が胸元から聞こえた気がしたけど、そんなもん知るか。

 可愛すぎて呆れた。もうため息しか出ねぇよ。

 俺の腕に囲われた雷は、「好きだよ」でノックアウト中。

 この鈍感童貞処女は、いつ俺をドキッとさせるか分かんねぇって事を俺は肝に銘じとくべきだ。


「………………」
「………………」


 ラグの上で瞑想してたはずの翼と、抱き締めた金髪越しに目が合った。


「……言いたい事あんなら言えば?」
「いや、別に。俺には修行が足りねぇな、と。精進しねぇとな、と。思いました」
「翼、出家でもすんの?」
「しねぇよ」


 修行とか精進とか言うから、たった数分の瞑想で悟りを開いたのかと思った。




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