迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑰仕返し

─迅─⑦

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🐾 🐾 🐾



 雷がやたらとウキウキしてる冬休み到来。

 初日は俺が朝から晩までバイトだったから構ってやれず、雷を拉致ったのは冬休み突入して二日目からだ。

 ちょっと遠出して、もっさん達のメシの調達に大型スーパーに向かった先に、偶然一組連中三人と出くわした。

 そこからなぜか俺と雷の買い物デートについて回られて、まるで普通のダチ同士でスーパーをひやかしてる気分。

 俺がキャットフードコーナーで真剣にメシを吟味してる隣で、自発的にカゴを持った梶原って奴はなかなか使える。

 ちなみにここに居る三人は、全員雷から〝村上〟と呼ばれてる。「覚えらんねぇから村上で統一する!」とかワケの分かんねぇ事を言って、コイツらを苦笑いさせてた。

 ウチのチビ、バカ過ぎて可愛い。


「……あれ、雷にゃんは?」
「え? さっきまでここに……」


 一ヶ月分のメシを確保した俺がふと見回すと、隣に金髪の姿が無かった。

 梶原達も「えっ?」と慌て出す。

 すばしっこい俺のネコめ。あれだけチョロチョロすんなって言っといたのに。

 雷の行動を予測しながら、何分かスーパーの通路を練り歩く。すると柴田って奴が「あっ」と何かを発見した。


「藤堂さん、あそこに居ますよ」


 ここには出入り口付近に小せえペットショップがある。

 子犬が三匹と子猫が二匹、透明板の向こう側に居る様を金髪チビが凝視していた。

 無邪気なガキみたいな後ろ姿に、心配かけやがってと文句を垂れながら声を掛けた。

 雷が見てたのは、きなこ色のエキゾチックショートヘア。

 無類の猫好きな雷がガン見するはずだ。普通に可愛い。


「こら、雷にゃん。はぐれんなって言っただろ」
「迅~~ッ! 見てくれよコイツの顔~♡」
「小せえな。二ヶ月くらいか?」
「かなぁ?♡ にゃにぃ、お前へちゃむくれなのぉ♡ かわちぃなぁ♡」


 あーあ、子猫を前にした雷がぶっ壊れてる。

 自分が一番かわちぃくせに。


「水上って猫好きなの?」
「……っぽいな」
「だから藤堂さんに雷にゃんって呼ばれてんのかな」
「おい、お前らもコイツ見て存分に癒やされろ! けがれた心が洗われるぞぉ♡」
「俺ら汚れてねぇし」
「でもちょっと可愛いかも……」
「俺も犬より猫派なんだよなぁ」
「分かってるねぇ! ワンコもいいけどニャンコもいいんだッ♡ ニャンニャン♡ ニャンニャン♡」


 クソ可愛い。そんな可愛い芸は俺の前でだけ披露しろ。

 両手を使って〝ニャンニャン〟してる雷に釘付けになってた俺は気が付かなかったが、大型スーパーは人も多い。その分、かなりヘンテコな雷は俺だけじゃなく他方から好奇の目で見られていた。


「水上……注目浴びてんぞ」
「幼児化してるし」
「いや幼児化ってより猫化してね?」
「ニャンニャン♡」
「雷にゃん、もっさん達の買い物終わったぞ」
「えッもう帰んの!?」
「……まだへちゃむくれ見てたい?」
「うんッ!!」
「じゃあもう少しいいよ」
「ありがと迅~ッ♡」


 はしゃいでる雷は可愛い。

 そんで俺は、雷が身の回りの物まで猫柄で揃えたがるほどの猫好きだって知ってっから、気が済むまで見てたらいい。

 ペットショップに置かれた長椅子に腰掛けて、さながら従順な彼氏な俺は、透明板越しにへちゃむくれと戯れてる雷に目尻を下げる。

 ただ梶原達には、その光景が異様に映ったらしい。


「藤堂さんと水上のパワーバランスって、水上の方が上なんすか」
「あ? パワーバランスとか無えし」
「いやいや! 藤堂さんが誰かの言う事聞くとかマジ考えられねぇっすよ!」
「今まで俺らが誤解してたとこもあるけど、藤堂さんは誰に対してもオラオラだったじゃないっすか!」
「……まぁ、お前らまだ俺の事〝さん〟付けしてるし、敬語だしな?」
「ギクッ……!」
「グフッ……!」
「グハッ……!」


 座ってる俺に対し三人ともが立ったままで、もっさん達のメシがたんまり入ったビニール袋を柴田が持っている。

 頼んでもねぇのに、すっかり俺の下僕とか家来とかそんな風に見えちまうじゃん。

 まず俺と雷が付き合ってるって発想にならねぇのは当然かもしんねぇが、お前らがそんなにビビってんのになんで雷の方がパワーバランス上なんだよ。

 てか、そういうの嫌なんだけど。

 俺を遠巻きに見てたのってどういう理由なんだろ。

 この際だから聞いてみるか。


「なぁ、俺そんな怖えか? どこらへんが?」
「そ、そんな事無えっすよ! こ、こここここ怖いなんて、なぁっ?」
「そうっす! 怖いってかオーラがハンパねぇからビビるっつーか!」
「雰囲気と眼力で人殺やれそうとか思ってねぇっすよ!」
「……俺は人殺しに見えてんのか」
「そそそそ、そうじゃねぇっす!!」


 怖がるとかいうレベルじゃねぇじゃん。

 見た目だけで犯罪者扱いってなかなか凹むんだけど。


「しょ、正直に言いますと、俺らがビビってたのは藤堂さんに喧嘩無敗だって噂があったからで……」
「そうそう、間違いなくボコられるの分かってて話しかけらんねぇっすよ」
「機嫌損ねて半殺しの目にあったらたまんないんで……」
「いやでも! あの噂はガセだったんだなって今なら分かるっす!」
「藤堂さん普通に喋りやすいし!」
「俺らとんでもねぇ誤解してたよな!」
「あー……喧嘩無敗ってのはマジだけど」
「えっ!?」
「えぇっ!?」
「えぇぇっ!?」
「今まで雑魚ばっかりだっただけ」
「────ッッ!?」


 ……いや待て。

 ドン引きしちまったコイツらは、俺と喋ってみるとイメージ変わりましたよっつって、フォローしてくれようとしてたんじゃねぇのか。

 少しずつ後ずさる三人。

 ハハハッ……さすがっすね……と震えきった声が、人混みの喧騒にかき消される。

 あークソ……余計な事言っちまったな。




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