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僕の甘美な眠り姫⑳
しおりを挟むもふもふの尻尾ごと千里を抱き締めて横になると、ふわふわした耳が久遠の鼻先をくすぐった。
初夜にしては濃厚過ぎて、後始末をする時も、お風呂に入れている時も、恥ずかしがって千里は少しも久遠を見てくれなかった。
今もまだ久遠の腕の中で耳まで真っ赤にして照れていて、尻尾を抱いて丸まっている。
「ちー君、眠いなら寝てもいいんだよ?」
「眠くない…眠れない…」
「どうしたのかな? チンチラちゃんだからかな?」
「…………そうだけど、違う」
「ふふ、どっちなの」
千里の照れ隠しなのか、力いっぱいギュッとしがみついてくるのは少しだけ久遠の理性を試されているようでツラかった。
だが口元のニヤけは止まらない。
愛する人と愛し合う行為をすると、これほど感動させられるとは思わなかった。
たとえヒトと獣人が結ばれても血は絶えないのだと言ってから、千里が素直になってくれた事で久遠の決意が固まる。
何があっても千里を守り通す。
秘密を知った直後から久遠の騎士生活は始まっていたのだから、なんの事はない。
千里の隣に居られるならば、久遠はいくらでも美味しい飴玉を用意するし、鬱陶しいくらい溺愛してあげるし、災いや困難など絶対に与えたりはしない。
千里に婚約者が居ようが、久遠の一族から反発を食らおうが、隣に千里さえ居てくれればすべての弊害から守り抜いてみせる。
「…どうやら僕は、出会った頃からちー君 一筋だったみたいだね」
「………久遠、飴玉くれるから好き」
「飴玉は眠らないようにって意味だったけど、明日からはどうしようか? ほしい?」
久遠は、つれない千里の顎を取り、上向かせて冷たい顔をして見せた。
「…ほしい。 ……口でちょーだい」
「ふふ、まかせて」
大きな秘密を長年抱えていたせいで、そう簡単には素直になりきれない千里からの甘い誘いは、久遠のハートを鷲掴みにした。
これからいくらでも時間はあるのだから、千里の心に寄り添う時間も相応にある。
心が通ったと分かれば番になるべく項を噛もうと上体を起こすと、唐突に千里がキスをねだってきた。
「久遠……おやすみのキスして」
千里の積極的な発言に目を瞠った久遠は、少しの間の後に麗しく微笑みーーー。
「僕の眠り姫は起きてる時にキスするんだね」
童話になぞらえてそう言うと、意味が分かっていない千里から「早く」と言わんばかりに唇を押し当てられた。
───なんと強引で、甘美なのだろうか。
~END~
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