美醜の価値観が混沌とした異世界で三人の男たちに愛されて崇め奉られる。

flour7g

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三者三様、じゃない方。

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―赤髪、緑の瞳、筋骨隆々で大楯大槍を担ぐリーダー
ランサー_グラウス

―黒髪、金の瞳、剣士、軽やかな黒装束の補佐人
ローグ_ゼンジ

―長い銀髪、青い瞳、煌めくマジカルスタッフを持つ魔導士
ソーサラー_ディアロス



僕を迎え入れてくれた三人は、
僕をソファに座らせると、
まるで壊れ物を扱うようにぎこちなく周囲をうろつき始めた。



「坊……いや、き、君。その……まずは食事でもどうだろうか」
 グラウスが、耳先まで赤く染めて分厚い指で戸棚を指差す。
その指先が微かに震えているのが分かった。



「この食べ物は、口に合うだろうか。無理に食べる必要はないが、腹が減っていては落ち着けないだろう」
 ゼンジは、僕の目の前に簡素な皿でシチューを置いた。


恐らくこの世界の一般的な食事なのだろう。だが、見るからに色が濃い緑で、獣肉と乱切りの野菜。
良く言えば非常に野生的なグリーンカレー。


「……倒れられては、困る」
 ディアロスが冷たい口調で言うが、その視線は僕の小さな手に釘付けだった。
 

三人の言葉と態度から、彼らが僕を心底大切に思っていることが伝わってくる。

その優しさに、荒んでいた心が少しだけ和らいだ。

しかし、この世界の食物を口にする勇気はまだない。

万が一、食物アレルギーで倒れたりしたら……どうしようもなくなってしまう。


「ありがとう。でも、少し疲れていて……」
 
僕が弱々しく首を振ると、三人は途端に狼狽した。


「そ、そうか……申し訳ない。無理をさせてしまった。焦る必要はないんだ」
 グラウスが、まるで大罪を犯したかのように眉を下げた。


「では、せめて身を清めてから休んでくれ。風呂は狭いが……湯は沸かしてある」
 ゼンジが、隣の仕切りのない寝室の奥を指差す。そこには、湯気を立てる大きな木桶が見えた。


 その言葉に、はっとする。そうか、僕はこの世界に来てから埃をかぶったままだった。
彼らの部屋に上がり込んでいるのだから、せめて身綺麗にしておかないと…。


「わかった、ありがとう」

 僕が立ち上がると、三人の視線が一斉に僕のブレザーの裾を追った。


 学園の制服しかない僕が困っていると、ディアロスがおもむろに奥から白い麻の布切れを持ってきた。

「……これしか、ない。古着だが」

 それが、この世界の寝間着なのだろう。
 木桶に張られた湯は、異世界の植物だろうか、独特の香りがした。

 まさか、いきなり彼らの前で服を脱ぐわけにはいかない。
僕は恐る恐る振り返った。


「あの……悪いんだけど、少しだけ、一人にしてもらえないかな?」

 僕の言葉に、
三人はまたもや固まった。


「……やはり俺たちのような男たちには、安心できないだろうか?」
 ゼンジが絞り出すような声で尋ねる。その顔には、絶望の色が浮かんでいた。


「そうじゃなくて!そんなことない!
ただ、その……羞恥心っていうか、習慣だから!」
 僕が慌てて否定すると、三人は安堵したように息を吐いた。


「……そうか、よかった」
 グラウスが、まるで重い荷を下ろしたように呟いた。


「では、俺たちは隣の部屋に。何かあれば、すぐに呼んでくれ」
 ゼンジがそう言って、他の二人を促し、部屋の隅にある簡素な仕切りの向こうへと姿を消した。


 僕は改めて一人になり、制服を脱ぎ始めた。

 慣れない湯に身を沈め、一日の疲れを癒す。この数時間で起きた全てが、まるで夢のように思えた。


 しばらくして、湯から上がり、ディアロスがくれた麻の布を体に巻いた。

 再び寝室に戻ると、三人はすでに仕切りの向こうからこちらを伺っていた。

 そして、僕の姿を見るや否や、彼らは一斉に――息を呑んだ。


「ひゅ、ひゅっ……!?」
 グラウスが、大きく見開かれた目を見開き、喉から奇妙な音を漏らした。
その顔は真っ赤に染まり、大きく息を吸い込んでいる。


「こ、これは……なんという……っ、し、神々しい……!」
 ゼンジは、顔色を失い、かろうじて床に手をついて倒れるのを堪えている。
その視線は、僕の肌に張り付いたまま離れない。


「……は……ぁっ、あ……」
 ディアロスに至っては、言葉を失い、ただ口を半開きにして僕を見つめているだけだ。
その銀色の髪が、まるで興奮を抑えきれないかのように微かに揺れていた。


 彼らの視線が、僕の体中を這い回る。
 特に、露出した僕の白い肌、細い手足、そして華奢な鎖骨に、彼らの目は吸い寄せられているようだった。


(え、何? 僕、もしかして変なものにでも憑かれてる!?)


 困惑する僕の前で、

グラウスは過呼吸を起こしたように浅い呼吸を繰り返し、
ゼンジは額に手を当てて真っ青になり、
ディアロスは今にも倒れそうなほど顔色を失っている。


「き、君……その……まさか……ッ」
 グラウスが、途切れ途切れに言葉を紡ごうとする。


「し、白い、肌……透き通るような……っ」
 ゼンジが、まるで触れてはならない神聖なものを見るように、震える指を僕に向けていた。


「……は……ぁ……美しい……っ」
 ディアロスは、瞳に涙を湛えながら、恍惚とした表情で僕を見つめている。



 彼らの反応は、まるで僕が彼らにとっての“女神”や“天使”であるかのような――


いや、それ以上に、彼らがこれまで見たことのない、途方もなく「尊い存在」でも見たかのようなものだった。


 この世界の美醜の価値観は、
僕の想像を遥かに超えて……。
よく分からない方面に狂っていた。


 僕は、ここで一体、どうなってしまうのだろう。
 涙目になり背筋を冷たいものが走り抜けた。
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