美醜の価値観が混沌とした異世界で三人の男たちに愛されて崇め奉られる。

flour7g

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娼―それは大きな勘違い

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三人の困惑と感動の表情は、
一瞬で「歓喜」と「決意」へと変わった。

 グラウスは涙を流しながら、
 ゼンジは蒼白な顔で、
 ディアロスは瞳を潤ませながら、
僕に一歩、また一歩と近づいてくる。


「か、可愛い……! こんなにも愛らしい生き物が、この世に存在したとは……!」
 グラウスが、感極まったように僕の前に片膝をつき、震える手で僕の足元に触れようとする。
その巨体から発せられる熱気が、火照った僕の肌にまとわりつく。


「これは……我々が、どれほどの対価を払うべきか……ッ、いや、対価などでは足りぬ。この身を捧げても余りある……!」
 ゼンジは、顔こそ引き締まっているものの、その目には理性では抑えきれないほどの情熱が宿っていた。


「……我らが至らぬばかりに、あなたのような麗君に、このような汚れた場所で、身をやつさせているとは……」
 ディアロスは、僕の背後からそっと腕を伸ばし、麻の布越しに僕の肩を抱きしめるような仕草を見せる。
その冷たい指先が、僕の熱い肌に触れる。


(え、え、ちょっと待って!? 何、この距離感…圧が凄い、雰囲気がおかしい!??)

 三人の尋常ではない熱気に、僕は本能的な危機感を覚えた。


「おい、グラウス! 君が先に触れるなど、許されることではない!」
 ゼンジが、嫉妬にも似た声を上げ、グラウスを牽制する。

「いや、これは私が先に助けを助けを求められたのだ! もし……もしも……我が主と認めてくださるのなら、命すら惜しくない!」
 グラウスも負けじと反論し、熱い視線を僕に送る。

「ふ、ふざけるな。この方は、我々のような汚らわしい男に、自ら触れてくれるなど……っ、ああ、その透き通るような肌……、あ、ありのままの姿で、我々のような男たちの前に……ッ」
 ディアロスは、僕の肩に顔を埋めるようにして、甘く蕩けるような声で囁く。
その言葉は僕の耳元で熱を帯び、背筋に悪寒が走った。


 どうやら、彼らは僕を「クルチザンヌのような高級な娼年」か、
あるいは「囲われて貢がれるべき高価な存在」とでも勘違いしているらしい。


そして、自分たちがその「対価」として「奉仕」しなければならない、と考えているのだ。


「ち、違う! 僕は、そんなんじゃない!」

 僕は慌てて身を捩り、ディアロスの腕から逃れた。

「僕は、ただの……たまたま迷い込んだ人間で、その、こことは違う文化や価値観のある……
かなり遠い場所から来たんだ! 
 だから、その……『奉仕』とか、『対価』とか、そういうのは、えっと、無しで!」

 僕の必死な言葉に、三人はまたしても動きを止めた。
異世界から来た、とハッキリ言うことはできなかった……。



「なし……?」
 グラウスが、困惑したように首を傾げる。

「だが、これほど美しく、幼い君が、何の見返りも求めずに我らの前に現れたというのか?」
 ゼンジが、疑わしげな視線を向ける。
その目は、僕の言葉を理解しきれていないようだった。

「……ならば、どうすれば、あなたは、我々に、その……『美』を、許してくれる?」
 ディアロスが、僕の目を見つめながら、切羽詰まった声で尋ねた。その瞳は、まるで迷子の子供のように不安に揺れている。



(ああ、もうダメだ。この人たち、僕の話、全然通じてない……!)

 この美意識が混沌とした世界で、
「自分はただの一般人だ」と説明しても、彼らには「謙遜」としか映らないのだろう。

 僕が普通であればあるほど、彼らの「飢え」は深まっていく。

「あのね、僕は『ご奉仕』されるんじゃなくて、君たちの街や生活のこととか、色々教えてほしいんだ!」

 精一杯、懇願するように言葉を続けた。僕はまだこの街の名前すら知らない。

「だから、その、まずは落ち着いて……あと、もう少しだけ、普通に、座ったりしてくれると嬉しいな……」

 僕の言葉を聞いて、三人は互いに顔を見合わせた。
そして、まるで「どうするべきか」と無言の議論を交わしているようだった。

 やがて、グラウスがゆっくりと立ち上がり、ゼンジとディアロスも僕から一歩距離を取った。


「わかった……君の言う通りにしよう。だが……」
 グラウスは、まだ納得しきれないような表情で、僕の細い腕を見つめた。


「……君の望む通りに。我々が、この世界のすべてを教えよう。
だが、せめて、この身を以て、君の身の回りの『お世話』をさせてはくれまいか?」
 ゼンジが、ややあって深々と頭を下げる。


「……我らが、あなたの『護衛』として、常に傍に侍ることを許してほしい。それが、我らの、唯一の願いだ」
 ディアロスは、視線を僕の顔から胸元へと滑らせながら、低く囁いた。
その言葉の裏には、やはり「独占欲」と「執着」が垣間見えていた。


(結局、僕の世話は焼きたくて、
あわよくば僕の傍を離れたくない。ってことか……)


 僕は大きくため息をついた。この世界の三人の「イケメン」に、とんでもない誤解をされている。そして、その誤解は、今後も簡単に解けそうにない。

 だが、とりあえず「娼年」扱いは避けられたようだし…

何も知らないまま、
住まいもなく、
また彷徨うより、

きっと彼らのそばが良いはずだ。

 ……たぶん。
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