美醜の価値観が混沌とした異世界で三人の男たちに愛されて崇め奉られる。

flour7g

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重すぎる!愛の包囲網

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バザールで買い出しを終え、
家へと向かう。

僕は慣れない世界に疲れ切った体で、
あのこじんまりした家が今は恋しくて堪らない。

ゼンジが新調してくれた白いシルクのシャツは、肌に吸い付くように滑らかで、彼らの視線の熱をダイレクトに伝えるようで少し落ち着かない。

 だが、安息の時間は長くは続かなかった。
「……やはり、来たか」
 ディアロスが冷たく呟き、玄関の方を睨む。

直後、地響きのようなノックの音が狭いリビングに響き渡った。


 そこに立っていたのは、あの薄紫肌の魔族だった。
 背後には、荷車を引いた数人の男たちが控えている。


「……これを。我が番の喉を潤すのに相応しい酒と、繊細な胃を満たす食材、そして流行りの菓子だ。
それと、夜の冷え込みに備えた最高級の毛皮とベッドも持ってきた」


 運び込まれる「山盛りの貢ぎ物」は、三人の質素な十帖ほどの部屋をまたたく間に埋め尽くした。

「おい、魔族! ここは俺たちの家だ。入り切らないと言っているだろう!」
 グラウスが、天井に届きそうな毛皮の山を支えながら、
近隣の住民に配慮したのか、静かに魔族に詰め寄った。


「狭いこの家が悪い。我が番が窮屈な思いをされる。……外に捨て置けというのか?」


「そうは言っていない! だが、物理的に限界があるだろう!」

 魔族男とグラウス、
巨漢二人による「静かめな口論」は、それだけで部屋の空気を震わせる。


 僕はその様子をソファの隅で小さくなって眺めていたが、ディアロスが僕の肩に手を置き、耳元で冷たく囁いた。

「気づいているか? この家の周囲……不自然な魔力の壁ができている。
昨日私が張った結界を、外側からさらに強固な結界で包み込んでいる」

「えっ……?」
 ディアロスの青い瞳には、隠しきれない不快感が滲んでいた。
――僕は魔力もないし、魔法なんて分かりません!と心の中で叫んだ。


 すると、窓際で外の様子を伺っていたゼンジが、自嘲気味に鼻を鳴らした。

「……流石だな。隣近所や、向かいの宿屋と酒場も、住人が丸ごと入れ替わっていやがる。
町人のふりをしているが、あの足捌きは間違いなく訓練を受けた私兵だ。
……魔族、貴様、この地区ごと買い上げやがったな?」


 魔族は悪びれる様子もなく、僕に視線を向けた。

「……当然だ。我が番を狙う不逞の輩は多い。
ここを丸ごと俺の管理下に置けば、鼠一匹通さぬ、安全が手に入る」



「……勝手なことを」
 ディアロスが魔力を昂ぶらせるが、グラウスがそれを制した。


「……君が、安全が第一なのは確かだ。……おい、魔族。
せっかくだ、お前も座れ。食事は無駄にできない……用意した夕食を始めるぞ」


 こうして、
三人の男たちと魔族男と僕、という歪極まりない「五人の晩餐」が始まった。


 テーブルの上には、グラウスが怪力で丹念にすりおろした果実と、魔族が持参した最高級の柔らかい肉や新鮮な魚が並ぶ。


「慌ただしくて、すまない…まずはこれを。……俺が毒味は済ませてある」
 グラウスが甲斐甲斐しく肉を小さく切り、僕の口元へ運ぶ。


「……無作法だな。俺が飲み物を用意した。口に合うかはわからんが、俺の古着の『お返し』に受け取ってほしい」
 ゼンジが、部屋着として自分の古着を を着ている僕を見て、恍惚とした表情でグラスを差し出す。


「その肉は脂が強すぎるだろう、こちらを飲め。身体の芯から温まる魔法薬を混ぜたスープだ」
 ディアロスが至近距離からスプーンを差し出す。


「皆、甘いな。我が番よ、俺の持ってきた最高級の菓子を。なんとも、小さな唇だ……俺が指先で菓子を砕いてやろう」
 魔族までもが、大きな指で繊細な菓子を摘み、僕に迫ってくる。


 四つの熱い視線が、僕の口元、指先、そして首筋を這い回る。

 彼らは互いを牽制し合いながら、あわよくば僕の「一番」になりたいという独占欲を、隠そうともしなかった。


(……温かくて美味しい食事のはずなのに、味がしない)


 魔族が買い占めた安全な地区の、結界で守られた小さく質素な家。


 四人の男たちに囲まれ、
僕は逃げ場のない愛の巣の中にいた。


「……どうした、顔色が赤いな。」

「……熱があるのか?」

「……は……ぁあ……」

「それとも、我らの奉仕に、感じ入っているのか?」

 
四人の低い囁きが、
静かな部屋に溶け込んでいった。


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