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白銀の悪夢_ディアロス視点
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――ディアロスの過去
深い夜の底、三人の中で最も静かに、 そして最も激しく、
ディアロスは過去の呪縛に引きずり込まれていた。
夢の中に現れるのは、
冷たく光る白蛇の鱗。
傲慢で嫉妬深い、白蛇獣人の父。
その巨大な蛇の身体が、
屋敷の使用人であった儚い母にのしかかる光景。
暴力的なまでの体格差。
逃げ出そうとする母を、
ディアロスごと暗い部屋へ閉じ込めた監禁の日々。
(……やめてくれ。母様を、これ以上……っ)
幼いディアロスが目にしたのは、
父の戯れに身も心も擦り切れていく母の姿だった。
弱り、枯れ果て、
それでも最期の瞬間まで自分を庇って冷たくなった母。
その凄惨な記憶は、
彼の心に「女性に触れることへの拒絶」という深い傷を刻み込んだ。
母が亡くなった後、父はディアロスの腰の後ろ側や太ももの付け根に、
自分と同じ「白い鱗」が芽生えているのを見つけ、
初めて彼を息子として、
あるいは「便利な道具」として扱い始めた。
皮肉にも、父から受け継いだその忌まわしい血が、彼に高度な魔導の才を与えたのだ。
(憎い。……この魔力も、この肌に張り付いた鱗も、すべてあの男の残滓だ)
魔導士として名を上げ、父の元を離れても、ディアロスは自分を「半端な汚物」だと蔑んでいた。
血色感のない青白い顔も、伸びた銀髪も、母を偲ぶためのよすがでしかない。
鏡を見るたび、彼は自らの内側に潜む「蛇」の影に怯えていた。
――そんな私は、あの日、あなたに出会った。
「……っ、……はぁ……っ」
眠りの中で、ディアロスの指先がシーツを強く引き絞る。
一目惚れだった。
生まれて初めて知った、
純粋で、眩しいほどの「恋」。
けれど、その恋心が芽生えた瞬間、
彼の中に眠っていた父譲りの「蛇」の特性ともいう感情が鎌首をもたげた。
(ああ、その細い首……締め上げたい。
身体を、
折れるほど強く抱きしめて……
すべて丸呑みにしてしまいたい。
誰の手も届かない、
俺の、腹の奥底に、君を隠してしまいたい……!)
湧き上がる、歪で暴力的な独占欲。
その恐ろしさに、ディアロスは夢の中で絶叫した。
自分を苦しめた父と同じ「蛇」の衝動が、自分の中にも確かに息づいている。
愛すれば愛するほど、
自分が怪物に近づいていくような恐怖。
「……う、あ……っ」
ディアロスは跳ね起きるように目を覚ました。
冷や汗が銀髪を濡らし、荒い呼吸が狭い部屋に響く。
隣では、あなたが何も知らずに、安らかな寝息を立てている。
その白く、壊れそうな喉元を見つめると、またしても黒い欲望がせり上がってきた。
「私は、…………怖いんだ」
ディアロスは震える手で、自分の口元を覆った。
あなたを愛している。
けれど、この愛が、あなたを壊してしまうかもしれないことが、何より恐ろしい。
そっと、自分の腰にある見えない鱗を爪が食い込むほどに握りしめた。
「私は……あなたを、あの男のように扱うことだけはしたくない。
……なのに、どうしてこんなに、
あなたを壊して、しまいたいんだ……」
青い瞳に、後悔と執着が混ざり合った涙が浮かぶ。
魔導士としての誇りも、人としての理性も、あなたを前にすれば簡単に溶け落ちてしまう。
私は横たわるあなたの手に、壊れ物に触れるような仕草で、
けれど指が白くなるほどの力で、自分の指を絡ませた。
白蛇の血を引いてしまった男の、終わりのない葛藤。
夜の闇は、
彼の歪な愛を飲み込み、
さらに深く、
重く沈んでいった
深い夜の底、三人の中で最も静かに、 そして最も激しく、
ディアロスは過去の呪縛に引きずり込まれていた。
夢の中に現れるのは、
冷たく光る白蛇の鱗。
傲慢で嫉妬深い、白蛇獣人の父。
その巨大な蛇の身体が、
屋敷の使用人であった儚い母にのしかかる光景。
暴力的なまでの体格差。
逃げ出そうとする母を、
ディアロスごと暗い部屋へ閉じ込めた監禁の日々。
(……やめてくれ。母様を、これ以上……っ)
幼いディアロスが目にしたのは、
父の戯れに身も心も擦り切れていく母の姿だった。
弱り、枯れ果て、
それでも最期の瞬間まで自分を庇って冷たくなった母。
その凄惨な記憶は、
彼の心に「女性に触れることへの拒絶」という深い傷を刻み込んだ。
母が亡くなった後、父はディアロスの腰の後ろ側や太ももの付け根に、
自分と同じ「白い鱗」が芽生えているのを見つけ、
初めて彼を息子として、
あるいは「便利な道具」として扱い始めた。
皮肉にも、父から受け継いだその忌まわしい血が、彼に高度な魔導の才を与えたのだ。
(憎い。……この魔力も、この肌に張り付いた鱗も、すべてあの男の残滓だ)
魔導士として名を上げ、父の元を離れても、ディアロスは自分を「半端な汚物」だと蔑んでいた。
血色感のない青白い顔も、伸びた銀髪も、母を偲ぶためのよすがでしかない。
鏡を見るたび、彼は自らの内側に潜む「蛇」の影に怯えていた。
――そんな私は、あの日、あなたに出会った。
「……っ、……はぁ……っ」
眠りの中で、ディアロスの指先がシーツを強く引き絞る。
一目惚れだった。
生まれて初めて知った、
純粋で、眩しいほどの「恋」。
けれど、その恋心が芽生えた瞬間、
彼の中に眠っていた父譲りの「蛇」の特性ともいう感情が鎌首をもたげた。
(ああ、その細い首……締め上げたい。
身体を、
折れるほど強く抱きしめて……
すべて丸呑みにしてしまいたい。
誰の手も届かない、
俺の、腹の奥底に、君を隠してしまいたい……!)
湧き上がる、歪で暴力的な独占欲。
その恐ろしさに、ディアロスは夢の中で絶叫した。
自分を苦しめた父と同じ「蛇」の衝動が、自分の中にも確かに息づいている。
愛すれば愛するほど、
自分が怪物に近づいていくような恐怖。
「……う、あ……っ」
ディアロスは跳ね起きるように目を覚ました。
冷や汗が銀髪を濡らし、荒い呼吸が狭い部屋に響く。
隣では、あなたが何も知らずに、安らかな寝息を立てている。
その白く、壊れそうな喉元を見つめると、またしても黒い欲望がせり上がってきた。
「私は、…………怖いんだ」
ディアロスは震える手で、自分の口元を覆った。
あなたを愛している。
けれど、この愛が、あなたを壊してしまうかもしれないことが、何より恐ろしい。
そっと、自分の腰にある見えない鱗を爪が食い込むほどに握りしめた。
「私は……あなたを、あの男のように扱うことだけはしたくない。
……なのに、どうしてこんなに、
あなたを壊して、しまいたいんだ……」
青い瞳に、後悔と執着が混ざり合った涙が浮かぶ。
魔導士としての誇りも、人としての理性も、あなたを前にすれば簡単に溶け落ちてしまう。
私は横たわるあなたの手に、壊れ物に触れるような仕草で、
けれど指が白くなるほどの力で、自分の指を絡ませた。
白蛇の血を引いてしまった男の、終わりのない葛藤。
夜の闇は、
彼の歪な愛を飲み込み、
さらに深く、
重く沈んでいった
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