美醜の価値観が混沌とした異世界で三人の男たちに愛されて崇め奉られる。

flour7g

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異世界は三日で見飽きない

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眩しい朝日が、
貢ぎ物の山に乱反射して目を覚ました。

 男たちの熱気に囲まれた夜は、息苦しいほどに濃密だった。

そっと彼らの腕をすり抜けて立ち上がり、僕はベランダ代わりに使っている窓辺へと向かう。


 そこには、洗って干しておいた僕の学園制服が揺れていた。

 この世界に「転移」してきた時、僕は教室で授業を受けていたはずだった。

 黒地に青薔薇柄のブレザーを取り込み、膝の上で丁寧に畳む。



「……帰れるのかな、これ」


 ぽつりと漏れた独り言は、
朝の空気に溶けて消えた。


 異世界に来て、
二度目の夜を無事に越した朝――

 あまりに慌ただしく、
生きることに精一杯で、考える余裕もなかった。

 けれど、見慣れた制服に指先を触れると、急にしんみりとした孤独が押し寄せてくる。


 他の生徒たちもどこかに飛ばされているのだろうか?
 それとも、僕だけがこの世界に放り出されたのか。


 三人の男たちにも、そして魔族プルプルさんにも、僕が別の世界から来たことは、まだ言えていない。


 崇拝されるように、保護されている、今の状況で、僕が「異世界の存在」だと知られたら……どうなるだろう。

幻滅されて、放り出される?

もしそうなれば、僕はまた独りだ。

あるいは、魔族プルプルさんに、
今度こそ「つがい」として一生繋がれて首輪をされるかもしれない。


(……それは、困るけど)


 不思議なことに、初日に感じたような、恐怖はもうなかった。

 何より、彼らと離れることを想像すると、胸の奥がキュッと締め付けられるような寂しさを感じていた。

 魔族プルプルさんの腕に片手で抱えられていた時のあの絶望感は、いつの間にか理解と安心にすら変わりつつある。


 その時、後ろで衣擦れの音がした。


「……おはよう、眠れたか」

 振り返ると、まだ夢の残滓を引きずったような顔の三人の彼ら。

 巨体を揺らした薄紫肌の魔族プルプルさんが僕を見ていた。


 三人が、どこか顔色が悪い。
ひどい悪夢でも見ていたかのように、

その瞳には縋るような影が落ちていた。


「みんな、おはよう。
……なんだか、あんまり眠れなかったみたいだけど……大丈夫?」


 僕が心配になって顔を覗き込むと、四人の時が止まった。

 自分の不安を棚に上げて、
無意識に彼らの大きな手をそっと包む。


「……今、俺たちを心配してくれたのか?」
 グラウスの声が震える。


「大丈夫なわけがないだろう……! 
そんな潤んだ瞳で、無防備に案じられては……俺の自制心が、もう保たん……!」
 ゼンジが片手で顔を覆いながら、けれどもう片方の手で僕の手首を離さぬよう強く握りしめる。


「……ああ、なんという慈愛。
私は、君のその一言だけで……救われてしまいそうだ……っ」
 ディアロスが膝をつき、僕の腰に顔を埋めるようにして抱きついた。


「俺の心臓は今、お前の美しさで破裂しそうだ。
……すぐに番にして、お前を、この胸の中に溶かしてしまいたい……!」
 プルプルさんが大きな溜息をつき、その巨体で僕たちを包み込むように影を落とす。


「わっ、ちょっと、みんな、近いよっ!」



帰りたい――


けれど、
これほどまでに真っ直ぐな、
重すぎるほどの、愛を向けてくれる彼らとは離れがたくて……。


朝の光の中で、
僕は四人の熱烈な求愛と、
逃げ場のない幸福感に、
ただ翻弄されるしかなかった。
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