人違いで攫われた僕ですが、最強オネェマフィアに「運命の番」として溺愛されています。

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雄牛の「欲」_エリザベス視点

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エリザベス視点 


眠りについたリトの、規則正しい呼吸音が静かな室内に響いている。

そのあまりに無防備で、細い喉元を見下ろしながら、俺は確信していた。


――これは、遊びじゃない。


退屈を紛らわせる気まぐれでも、
孤独への同情でもない。

ましてや、高みの見物で守っている「つもり」になっているような、甘い話でもない。

俺は、こいつを欲している。

間違いに気づいたその瞬間に、解放するという選択肢をドブに捨てた。

怯える瞳に、
震える肩に、
どうしようもなく惹かれた俺の飢えた本能が、こいつを逃がすことを拒絶したんだ。


頭頂に鎮座する角の重みを、久しぶりに意識する。

漆黒に塗り固められたこの角は、
数多の返り血を浴び、
絶望を突き崩して勝ち残ってきた俺の矜持そのもの。

俺は“女王”だ。

しなやかに笑い、
優雅に舞い、
魅了で男どもを従わせる支配者。

だがその本質は、
どこまでいっても、
泥を這いずり、
地を蹴り上げる「雄牛」なのだ。


守ると決めた縄張りのためなら、
俺は牙を剥くし、この手を血に染めることも厭わない。


「――俺のものだ」


低く呟いた声には、
もはや女王の艶やかな装飾など微塵もなかった。

腹の底から響く、
剥き出しの独占欲。
可愛がるだけじゃ足りない。

リトの過去も、
孤独も、
これからこいつが流すはずだった涙の数まで、すべて俺が引き受ける。

その覚悟が、
ようやく重く、
熱く、腹の底に落ちた。


もし、この薄汚れた街が、
もし、この理不尽な世界が、
もう一度リトを俺から奪おうとするなら。


その時は、迷わずこの角を突き立ててやる。

「俺が、全部ひっくり返す」

かつて自分ひとりを守るために誓った言葉が、今は隣で眠るこの小さな存在を守るための宣戦布告に変わる。


牛は、背後を見せない。
狙いを定めたら、
たとえ相手が運命であろうと、
正面から突き殺す。

それだけだ。
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