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第三章
王太子殿下という存在
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シーくんと夜のお茶会(という名の推しの布教大会)を終えた翌日。寝不足のため食欲はあまりないが、3食しっかり食べなければと眠い目を擦りながらやって来た食堂は、今日も人が少ない。まだまだ戦争が起こる危険は消えていないという現実を突きつけられているようでなんとなく落ち着かないまま朝食を受け取る。
「ルナ!おはよう!こっちよ!」
「ティア、おはよう。」
先に食堂に来ていたティアが私を呼んでくれて、私は同じテーブルに座った。今日は、教室に何人いるのかな?なんて話しながら朝食を食べる……そんな、いつもと変わらない1日の始まりだった。
今日は昨日よりも教室にいる人数が少なかった。セレナ・オークウェル様もいない。
セレナ・オークウェル様にテスト前日呼び出され、あなたを認めない宣言された時はここから少女漫画的展開が始まるのかもしれない、と思っていた。私との接触は禁止されているらしいから、靴に画鋲とか事故を装って魔法薬かけてくるとか教科書ぼろぼろにするとか(正直、これはかなり困る)、そんな遠回しな嫌がらせでもあるのかと考えて、面倒だなぁなんて思っていたのだ。
試験が終わってすぐに隣国が同盟破棄するとか言い出して、上位貴族の人たちはみんないなくなってしまった。当然、公爵令嬢であるセレナ・オークウェル様もずっと学校に来ていない。
しかも話によるとこの国の戦争では、貴族の中から後継ではない子……つまり第2子以降の子供を最前線に送り出し、戦うらしい。200年前の戦争で奴隷……平民は使えないと判断した貴族は、平民を戦地に送り出すことをやめた。その代わりの戦力として選ばれたのが、後継ではない第2子以降の貴族子だ。だから今いないクラスメイトたちの中で、第1子は政治的な役割を果たすため実家に帰っているが、第2子以降の子達は戦闘訓練を1日中休まず行っているらしい。
……戦争のための戦闘訓練なんてするんだったら、私の靴に画鋲入れに来てよ。今ならわざと踏んで、痛がる演技までしてあげるのに。
そうして、いつも通りに1日が終わった……はずだったが、夕飯を食べ終わりそろそろお風呂でも入ろうかとお風呂を溜めるための魔法石のスイッチを押そうとした時、壁に埋め込まれている魔法石から声が聞こえてきた。
「寮生に連絡です。これから緊急の学生集会を開きます。今すぐ講堂に集まってください。繰り返しますーーーー」
そういえば、この魔法石は前世でいうスピーカーのような役割を果たしていていざと言う時は放送が流れる、とシーくんが言っていた。使われたのは初めてだ。緊急の集会って……嫌な予感がしながらも、私は部屋の鍵を閉めて講堂へ向かった。
講堂に着くと、今日は学校にいなかったクラスメイトたちが揃っていた。食堂でご飯を食べていた時よりもずっと人が多いから、きっと今日いなかった他のクラスや他の学年の人たちも来ているのだと思う。
「クラスごとに並んでください!クラス担任の先生方は全員いるか確認し、全員揃い次第報告に来てください!」
壇上を見ると、ルイス様がいて指示を飛ばしている。先生じゃなくてルイス様が仕切っているのは初めて見たので、この集会が学校主導ではないことを悟った。全員揃い次第、ということはやはり今この場には学校にずっと来ていなかった貴族を含めて全員が来ているんだ。
全員が集まったことを確認すると、ルイス様は奥に引っ込んでいった。そうして代わりに出てきたのは、シーくん……王太子殿下だった。
「急な呼びかけにも関わらず、集まっていただきありがとうございます。今日は皆さんに、今日行われたシュバイツオーケノア王国との会談の結果についてお伝えしたいことがあります。」
神妙な面持ちで告げられたその言葉に、生徒たちに緊張がはしる。戦争が始まってしまうのか、それとも和平となったのか……今後の自分達にも大きな影響を与えてしまう。何を言われるのか、私は早くなる心臓の鼓動を抑えることができずに、胸に手を当てて王太子殿下の言葉を待った。
「残念ながら、今回の会談でも和平とはなりませんでした。しかし、戦争の開始は防ぐことができました。それにあたり、シュバイツオーケノア王国はある条件を出してきました。」
とりあえず、戦争が始まるわけではないことに安堵する。それでも、まだ和平にはなっていないのなら安心はできない。条件とは一体なんなのか、誰もが王太子殿下の言葉を待っていた。
「その条件とは、シュバイツオーケノア王国国王自ら、我がエリュシオン学園を視察することです。」
予想外のその言葉に、私は驚いて思わず声を出してしまいそうになった。中には堪えきれず驚きの声を上げている生徒もいたから、この世界でも予想外の条件なのだと知った。
「相手の意図は分かりません。しかし、この条件を満たさなければ即攻撃も辞さないとのことでしたので、条件を受けることにいたしました。」
相手がなぜそんな条件を突きつけてきたのかは分からない。それでも、断れば即攻撃をするなどと言われてしまえば、こちらは受ける以外に選択肢はない。
「生徒、並びに教師の皆様には多大なご迷惑をおかけすることになります。
しかし、今この国を戦火に沈めるわけにはいきません!エリュシオン王立魔法学校の皆さん!!この視察が上手くいくよう私に……この国に力をお貸しください!!」
……そう宣言力強くした王太子殿下の姿に、周りの人達が次々と跪いていく。私はしばらく固まっていたけど、周りがみんな跪いていくのを見て慌てて跪く。
「はい!!」
「かしこまりました!王太子殿下!!」
「王太子殿下!!」
「王太子殿下、万歳!!」
さっきまで緊張状態にあった講堂が、一気に高揚感で包まれていく。そんな声を受けて、壇上の王太子殿下は穏やかに笑っていた。
……そんな中でも、私は周りの人たちのように高揚感を感じることができなかった。だって、まだ戦争が起こるかもしれない危機的状況だ。シーくんも、戦争は起こしたくないと言っていた。昨日の夜に会った時には目の下に隈があって顔に疲れが見えた。当然だ。だって、戦争なんてまだ16歳の男の子が背負うにはあまりにも重た過ぎる。それなのに……今壇上にいる王太子殿下からは、そんな雰囲気は微塵も感じ取れない。
……そうか、王太子殿下という存在はみんなの象徴であり、旗印だ。その王太子殿下が迷っていては、国民も迷う。
王太子殿下であるという重圧を、この時私は初めて理解した。ただ呆然と優雅に微笑みながら笑う王太子殿下……シーくんを見ていた。
「ルナ!おはよう!こっちよ!」
「ティア、おはよう。」
先に食堂に来ていたティアが私を呼んでくれて、私は同じテーブルに座った。今日は、教室に何人いるのかな?なんて話しながら朝食を食べる……そんな、いつもと変わらない1日の始まりだった。
今日は昨日よりも教室にいる人数が少なかった。セレナ・オークウェル様もいない。
セレナ・オークウェル様にテスト前日呼び出され、あなたを認めない宣言された時はここから少女漫画的展開が始まるのかもしれない、と思っていた。私との接触は禁止されているらしいから、靴に画鋲とか事故を装って魔法薬かけてくるとか教科書ぼろぼろにするとか(正直、これはかなり困る)、そんな遠回しな嫌がらせでもあるのかと考えて、面倒だなぁなんて思っていたのだ。
試験が終わってすぐに隣国が同盟破棄するとか言い出して、上位貴族の人たちはみんないなくなってしまった。当然、公爵令嬢であるセレナ・オークウェル様もずっと学校に来ていない。
しかも話によるとこの国の戦争では、貴族の中から後継ではない子……つまり第2子以降の子供を最前線に送り出し、戦うらしい。200年前の戦争で奴隷……平民は使えないと判断した貴族は、平民を戦地に送り出すことをやめた。その代わりの戦力として選ばれたのが、後継ではない第2子以降の貴族子だ。だから今いないクラスメイトたちの中で、第1子は政治的な役割を果たすため実家に帰っているが、第2子以降の子達は戦闘訓練を1日中休まず行っているらしい。
……戦争のための戦闘訓練なんてするんだったら、私の靴に画鋲入れに来てよ。今ならわざと踏んで、痛がる演技までしてあげるのに。
そうして、いつも通りに1日が終わった……はずだったが、夕飯を食べ終わりそろそろお風呂でも入ろうかとお風呂を溜めるための魔法石のスイッチを押そうとした時、壁に埋め込まれている魔法石から声が聞こえてきた。
「寮生に連絡です。これから緊急の学生集会を開きます。今すぐ講堂に集まってください。繰り返しますーーーー」
そういえば、この魔法石は前世でいうスピーカーのような役割を果たしていていざと言う時は放送が流れる、とシーくんが言っていた。使われたのは初めてだ。緊急の集会って……嫌な予感がしながらも、私は部屋の鍵を閉めて講堂へ向かった。
講堂に着くと、今日は学校にいなかったクラスメイトたちが揃っていた。食堂でご飯を食べていた時よりもずっと人が多いから、きっと今日いなかった他のクラスや他の学年の人たちも来ているのだと思う。
「クラスごとに並んでください!クラス担任の先生方は全員いるか確認し、全員揃い次第報告に来てください!」
壇上を見ると、ルイス様がいて指示を飛ばしている。先生じゃなくてルイス様が仕切っているのは初めて見たので、この集会が学校主導ではないことを悟った。全員揃い次第、ということはやはり今この場には学校にずっと来ていなかった貴族を含めて全員が来ているんだ。
全員が集まったことを確認すると、ルイス様は奥に引っ込んでいった。そうして代わりに出てきたのは、シーくん……王太子殿下だった。
「急な呼びかけにも関わらず、集まっていただきありがとうございます。今日は皆さんに、今日行われたシュバイツオーケノア王国との会談の結果についてお伝えしたいことがあります。」
神妙な面持ちで告げられたその言葉に、生徒たちに緊張がはしる。戦争が始まってしまうのか、それとも和平となったのか……今後の自分達にも大きな影響を与えてしまう。何を言われるのか、私は早くなる心臓の鼓動を抑えることができずに、胸に手を当てて王太子殿下の言葉を待った。
「残念ながら、今回の会談でも和平とはなりませんでした。しかし、戦争の開始は防ぐことができました。それにあたり、シュバイツオーケノア王国はある条件を出してきました。」
とりあえず、戦争が始まるわけではないことに安堵する。それでも、まだ和平にはなっていないのなら安心はできない。条件とは一体なんなのか、誰もが王太子殿下の言葉を待っていた。
「その条件とは、シュバイツオーケノア王国国王自ら、我がエリュシオン学園を視察することです。」
予想外のその言葉に、私は驚いて思わず声を出してしまいそうになった。中には堪えきれず驚きの声を上げている生徒もいたから、この世界でも予想外の条件なのだと知った。
「相手の意図は分かりません。しかし、この条件を満たさなければ即攻撃も辞さないとのことでしたので、条件を受けることにいたしました。」
相手がなぜそんな条件を突きつけてきたのかは分からない。それでも、断れば即攻撃をするなどと言われてしまえば、こちらは受ける以外に選択肢はない。
「生徒、並びに教師の皆様には多大なご迷惑をおかけすることになります。
しかし、今この国を戦火に沈めるわけにはいきません!エリュシオン王立魔法学校の皆さん!!この視察が上手くいくよう私に……この国に力をお貸しください!!」
……そう宣言力強くした王太子殿下の姿に、周りの人達が次々と跪いていく。私はしばらく固まっていたけど、周りがみんな跪いていくのを見て慌てて跪く。
「はい!!」
「かしこまりました!王太子殿下!!」
「王太子殿下!!」
「王太子殿下、万歳!!」
さっきまで緊張状態にあった講堂が、一気に高揚感で包まれていく。そんな声を受けて、壇上の王太子殿下は穏やかに笑っていた。
……そんな中でも、私は周りの人たちのように高揚感を感じることができなかった。だって、まだ戦争が起こるかもしれない危機的状況だ。シーくんも、戦争は起こしたくないと言っていた。昨日の夜に会った時には目の下に隈があって顔に疲れが見えた。当然だ。だって、戦争なんてまだ16歳の男の子が背負うにはあまりにも重た過ぎる。それなのに……今壇上にいる王太子殿下からは、そんな雰囲気は微塵も感じ取れない。
……そうか、王太子殿下という存在はみんなの象徴であり、旗印だ。その王太子殿下が迷っていては、国民も迷う。
王太子殿下であるという重圧を、この時私は初めて理解した。ただ呆然と優雅に微笑みながら笑う王太子殿下……シーくんを見ていた。
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