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第五話 通じ合う心
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しおりを挟む唇がふやけそうになるくらいとろとろにされた私は、ひょいっと軽々しく抱きかかえられ、優しくベッドに寝かせされた。
和仁さんは私の上に覆い被さり、視線が絡み合う。
「和仁さん……」
この先の展開を想像できないような子どもではない。
もう大人だし、口付けを交わした時からこうなることは何となくわかっていた。
「好きだ」
和仁さんは優しく私の頬を撫で、私の目を見てはっきりと告げてくれた。
「誰も愛さない、愛したくないと思っていたのに……気づいたら君が好きで、愛おしくてたまらなかった」
「私も好きです……和仁さんのこと」
「ジェシカ……」
ぎゅうっと抱きしめられると、想いが溢れて――嬉しいのに涙が止まらなかった。
「大好き……っ」
多分私は、和仁さんと初めて会った時から惹かれていた。
あなたのことを知る度に、周りの人たちを大切にする人柄とさりげない優しさにもっと惹かれた。
愛されなくてもいい、ただ傍にいられるだけでいいと強がっていても、本音はあなたの本当の妻になりたかった。
「これからもずっと……一緒にいてもいいですか?」
「むしろ離れたいと言っても、もう離してやれそうにない」
「はい……っ」
絶対に離れないとばかりに強くしがみつき、また強く抱きしめ返してくれることが嬉しかった。
耳朶や首筋にちゅ、ちゅ、とキスが落とされる。
くすぐったくて身を捩らせながらも、これだけは言いたいと思った。
「あの、私……はじめて、なんです」
「えっ」
「……二十四にもなって恥ずかしいんですけど」
初めてはバレる、と聞いたことがある。
だから隠さずに言ってしまった方がいいと思ったが、やっぱり恥ずかしい。
「引きましたか……?」
恐る恐る和仁さんの様子を窺おうとしたら、額に優しく口付けられた。
「引かない。むしろ俺でいいのか?」
「……」
こくりと頷く。
初めては、和仁さんがいい。
「――優しくする」
耳元で囁かれ、ゾクゾクという甘い刺激が全身に走った。
その後和仁さんは一度起き上がると、バサリと上に着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
見事に腹筋が割れた逞しくも美しい肉体美に、目眩がしそうになる。刺し傷なのか所々腕に傷痕が見受けられるけれど、それさえも美しい。
思わずじーーっと見入ってしまうと同時に、ポロッとこぼれ出てしまった。
「……刺青、入れてないんですね」
「え? ああ」
極道の方は体のどこかに必ず刺青を入れているイメージだったし、実際千原さんは左腕、笹部さんは右腕に桜の刺青を入れていた。
普段見えないけど、和仁さんも刺青を入れているのかな? と思っていたのだけれど。
「好きじゃなくてな」
「そうなんですか」
「入れていた方がよかったか?」
「いえ! ない方がよく見えて素敵です!」
――って、私は一体何を言っているのだろう……。
「ふっ、本当に君は面白いな」
「呆れてません……?」
「いや、そういうところが好きなんだ」
そう言うと和仁さんは、熱を孕んだ瞳で私を見下ろし頬に手を添える。
合図に気づいた私が目を閉じると、ゆっくりと唇を重ねられた。
そこからは、ただ和仁さんに身を委ねた。
激しくなる口付けは、私の心を溶かしてゆく。
耳朶を甘噛みされ、首筋にも口付けられ、緋い印が肌に刻まれる。
「んっ、あ……っ」
和仁さんはどこに触れてもまるで割れ物を扱うみたいに優しく触れる。
私を思ってくれているのが伝わって、涙が出そうになる。
「ジェシカ、愛してる」
「っ、私も……」
初めて感じた痛みは、すぐに甘い刺激へと変わり快楽の波に押し流される。
いっぱいいっぱいな私に何度もキスしてくれて、何度も好きだと囁いてくれた。
愛する人と繋がるよろこびと幸福を知ったこの夜のこと、生涯忘れることはないと思った。
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