不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ

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第六話 遅れてきた蜜月

6-1

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「今日は他の支部との会合で遅くなる」
「はい、お気をつけて」
「夕食は食べてくるから」
「わかりました」
「ジェシカ、」
「!」

 ちゅっと軽く触れるだけのキスをされる。

「行ってくる」
「……行ってらっしゃい」

 ドアが閉まり、和仁さんを見送る。
 しばらく玄関でぼうっとしてしまうくらい、キスの余韻に浸ってしまった。

 一夜を共にして以来、私たちの関係は劇的に変わった。
 和仁さんは毎日優しいし、必ず予定を教えてくれるようになったし、夜ごとに私を求めてくれる。
 何より意外なのが和仁さんって意外とスキンシップが多いこと。キスもハグも毎日してくれるし。

「はぁ……これが新婚生活……」

 遅れてきた本当の新婚生活は毎日が幸せでいっぱいだった。

 私こんなに幸せでいいのかしら? 思わず小躍りしちゃいそうだわ。

 床にワイパーを掛けながら、本当に踊り出してしまいそうになる。
 通りすがる組員たちは私を見ては、不思議そうに小首を傾げていた。

 誘拐事件は怖かったし、まだ気がかりなこともあるけれど――私は和仁さんを信じてる。
 いつか話してくれるかもしれないし、その時まで待とうと思った。
 私は何があっても和仁さんを愛しているから。

「ただいま」
「お帰りなさい!」

 和仁さんが帰宅したのは二十二時頃だった。
 和仁さんはだいぶ疲れたような顔をしていた。

「お疲れ様です」
「はあ……本当に疲れた」

 溜息をつきながらシュルリとネクタイをゆるめる和仁さん、色っぽくて素敵。
 憂鬱な表情ですらカッコいい。

「……なんで笑ってるんだ」
「え? いや、なんでもないんですっ」

 私ったら、ついにやけちゃってた。
 疲れてる夫を労うどころかときめいてる妻ってどうなのかしら?

「君を見ていると疲れが飛ぶな」

 和仁さんはそう言うと私の腰に腕を回し、抱き寄せる。

「前から思っていたが、君の瞳は綺麗だな」
「え? 汚くないんですか?」
「汚い? どこがだ」
「だって、昔言われたことがあるんです」

 母譲りの色素の薄いグレーの瞳は、濁っていて汚いって子どもの頃は馬鹿にされた。
 妹の莉々果にも言われたことがある。
「お姉ちゃんの目は濁ってて変な色だよね。青い目とかだったら良かったのにね」と。

「だから私、ずっと自分の目がコンプレックスで……」
「しょうもないやつがいたんだな。僻んでいるだけだから気にするな。誰が何と言おうと、綺麗だ」

 和仁さんの言葉はいつも私を優しく包み込んでくれる。
 コンプレックスだと思っていたこの瞳も、和仁さんが褒めてくれるのなら好きになれる。

 私は私のままでいいと言ってくれることが、たまらなく嬉しい。

「ありがとうございます」

 日に日に大好きという想いが強くなっている。
 政略結婚だったけれど、こんなにも大好きになれる人が旦那様だなんて、なんて幸せなのだろう。

 きっと今が一番幸せだ。今まで生きていた中で一番幸せ。

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