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最終話 鏡花水月
13-2
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妊娠したことを父には電話で報告した。
父は私の妊娠をとても喜んでくれた。
「お父さん、今とても幸せだから心配しないでね。結婚して心から良かったと思ってる」
《ジェシカ……ありがとう。苦労ばかりかけて、父親らしいことは何もできずにすまなかった》
電話越しでお父さんは涙声だった。
《辛い目に遭わせてばかりで本当に申し訳ない》
「大丈夫よ。無事に産まれたら会いに行くね」
《ありがとう。体に気をつけて、何かあればいつでも連絡して欲しい》
お父さんはずっと罪悪感を抱えていたのだと思う。
お父さんに対して全く文句がないわけではないけど、私を引き取って育ててくれたことには感謝しているから。
孫の顔を見せて親孝行できたらいいなと思う。
和仁さんと一緒にマムのお墓参りにも行った。
結婚と懐妊の報告をして、きっと喜んでくれていると思う。
「母が生きていたら絶対和仁さんのこと気に入ったと思いますよ」
「そうか?」
「ジャパニーズマフィア! しかもイケメン! って騒いでたと思います」
「君のお母さんらしいな」
本当はマムにも会ってもらいたかったし、生まれてくる赤ちゃんを抱っこしてもらいたかった。
それはできないけど、きっと天国から見守ってくれているはず。
マムの言っていたように、私は私の人生に誇りを持っている。
生まれてくるこの子にも、そんな風に言ってあげられる母親でありたい。
早く会いたいな――。
*
妊娠八週目に差し掛かった頃。
病院から帰宅するとお義父様に呼ばれた。
「二人とも、少しいいか」
何かあったのかしらと思いながら、お義父様の部屋にお邪魔する。
「このタイミングで悪いが、和仁にしばらく九州へ行ってもらいたい」
「九州?」
「向こうで面倒なゴタゴタがあるようでな。九州の傘下から応援要請があった」
和仁さんは眉根を寄せながら尋ねた。
「……俺じゃなくてもいいと思うが?」
「なかなかに厄介そうなんだ。ここでお前が行くことで知らしめたい、次の桜花組を率いる者が誰なのか」
「期間は?」
「二週間だ」
「二週間!? そんなに長く家を空けたらジェシカはどうなるっ」
「舎弟を残していけば良いだろう。母さんもいるしな」
「俺は行かない。ジェシカの傍を離れない」
「和仁さん……」
「ダメだ。お前には桜花組若頭としての立場がある」
「そんなもの……!」
厳しい表情のお義父様と強く反発する和仁さん。
一気に空気がピリつき、私は思わず声をあげた。
「あのっ! 私大丈夫です!」
「ジェシカ……?」
「まだつわりが酷くないですし、大丈夫だと思います」
「でも、」
「心配しないで、和仁さん。行ってきて」
「……、何かあればすぐに連絡してくれ」
「はい」
和仁さんは納得のいかない表情だった。
九州に向かう当日まで渋っており、何度も私に大丈夫か確認した。
「兄貴、姐さんのことは俺たちにお任せください」
「本は熟読したっすから! 大丈夫っすよ!」
「千原、笹部。頼んだぞ」
「「っす!」」
和仁さんは私を抱きしめてから九州へと発った。
「行ってくる。なるべく早く帰るから」
「行ってらっしゃい」
笑顔で送り出したつもりだけど、和仁さんが行ってしまってからこっそり泣いてしまった。
本当はすごく心細い。だけど強くならなきゃ。
これから母親になるんだもの――……。
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