伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
5 / 137
第一章

職人としての矜持

しおりを挟む
 ロベルトに言われた通り、ダナイは素材売却カウンターへと向かった。
 
 そこには同じ冒険者と思われる若干人相の悪い人達がたむろしていた。向こうの席では酒を飲んでいる連中もいる。
 
 まだ日が沈んでもないのに酒を飲むとは良いご身分だ、と思いながらも空いているカウンターにたどり着いた。カウンターには眼鏡をかけたひ弱そうな職員がこちらを見ていた。

「済まないが、これを売りたいのだが」
「冒険者証明書の提示をお願いします」

 ダナイは冒険者証明書と一緒に魔石を懐から取り出して職員に渡した。
 
 話を聞くと、どうやら魔石の値段は重さによってのみ決定されるそうだ。『ワールドマニュアル(門外不出)』で調べたところ、魔石の大きさは長生きしている魔物ほど大きくなる。この弱肉強食の自然界においては、強い個体ほど長生きするのは当然のことなので「大きな魔石を持っている=強い魔物」と言っても差し支えなかった。
 
 職員は天秤に魔石を載せると、慎重に分銅を使って重さを量った。

「全部で六百二十Gですね。よろしいですか?」
「ああ、それで頼む」

 この世界の一Gは日本円に換算すると十円くらいだろうか? 厳密には違うだろうが、そのくらいだろうと大体の当たりをつけた。魔石を売ったお金は日本円で約六千円。これが多いのか少ないのかは今のダナイには判断できなかった。

「ダナイさんは条件を満たしましたので、Fランクに昇格となりました」
「さっき冒険者になったばかりだぞ。はええな」
「Fランクになるために必要な条件は一定量の魔石をこちらに持ってくることですので」
「なるほどなぁ」

 ダナイは髭を撫でながら、感心そうに呟いた。ランクアップの手続きはすぐに終わり、GからFの文字に変わっただけの冒険者証明書がお金と共に渡された。
 それを懐にしまい込むと、職員に礼を言って冒険者ギルドを後にした。

「さて、これからどうするか。今日の所はひとまず布団で眠りたいな」

 ダナイは少し考え込むと『ワールドマニュアル(門外不出)』を思い浮かべた。
 困ったときの神頼み。彼の場合の神は『ワールドマニュアル(門外不出)』のことである。その中から安くて美味しい宿を探し出すと、意気揚々と本日の宿「銅の菜の花亭」へと向かった。

 
「今日の宿を借りたいのだが、空いているかね?」
「いらっしゃい。ドワーフとは、これまた珍しいね。空いてるよ。一人部屋で構わないね?」
「ああ、それでいい」

 恰幅が良い女将が朗らかにそう答えた。その顔にはどこか懐かしい感じがして、この宿を選んで良かったとダナイはすぐに気に入った。

「いくらかな?」
「一泊二百Gだよ。食事は別料金だが、ここで食事をとるのなら一品おまけするよ」
「分かった。とりあえず、一晩だけ頼むよ」

 あいよ、と返事をした女将はすぐに部屋の番号が書いてある木製の鍵をダナイに渡した。それを受け取ると、二階にある部屋へと向かった。

「なかなかいい部屋じゃないか」

 広くもなく、かと言って狭いわけでもない絶妙な大きさの部屋だった。部屋には窓とタンス、テーブルが一つずつあり、椅子は二つあった。それに備え付けのベッドとクローゼット、さらには鍵付きの金庫まであった。部屋には照明がなく、その代わりにテーブルの上にランタンが置かれていた。
 
 至れり尽くせりだな、と思いながら椅子に座ると、張り詰めていた緊張が一気にほぐれたのか、急に疲れを感じた。怒濤の数日を考えるとそれもそうかと苦笑いし、今後のことについての方針を思案した。
 
 必須事項は聖剣を作ること。そのためには、鍛冶屋にならなければならないだろう。材料集めから鍛造までの全てを誰かに頼むという方法もあるのだが、それは職人としての矜持が許さなかった。頼まれた依頼は必ず自分の手でやり遂げる。それが俺だ。
 
 だが、残念なことに前世では鍛冶まがいのことをやったことはなく、どこかの鍛冶屋に弟子入りする必要があった。それを考えるとワクワクする自分がいることに気がついた。

 少年のころに戻ったかのような感覚に思わず笑いがこぼれた。

「まさか俺に、まだこんな気持ちが残っていたとはな。それじゃ、もう一旗揚げるとしようかね」

 そのとき頭の中で思い浮かべていた『ワールドマニュアル(門外不出)』に一つの文字が浮かび上がった。

【鍛冶屋としての技術の全てをインストールしますか?】

 なんだ? インストールって?

【インストールすることで、即座にその技術が使えるようになります】

 はは~ん、それをすることですぐに一人前の鍛冶屋になれるってことだな? だが、断る。俺は俺自信の力で一人前の鍛冶屋になってやる。それでこそ、最高の一品を作り出せるってもんよ。
 
 ダナイは職人である。それに加えて非常に頭の固い職人であった。そしてその提案を蹴ったことで、彼の闘志はさらに熱く燃え上がるのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...