伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
10 / 137
第一章

二階級昇進

しおりを挟む
 森を抜け、草原を抜けるとイーゴリの街が見えて来た。門番のラウリが二人に気がつくと、大慌てで二人の元へとやって来た。

「無事だったのか! 三人娘が慌てた様子で戻ってきたから何事かと思っていたところだよ」
「危なかったところをダナイに助けてもらったわ」

 そのときラウリは二人を見て驚きの表情を見せた。どうしたのかとダナイが首を傾げながら門の方へと向かっていると、街の中から何人かの人達が出てきていることに気がついた。その中は冒険者ギルドの職員のロベルトも混じっていた。

「何かあったのかい?」
「ああ、きっとリリアの捜索に向かうところだった人達じゃないかな?」

 ラウリが言ったとおり、その人達はリリアの捜索のために集まった人達だった。その中にリリアの仲間達もいるようだった。リリアの名前を呼ぶ声が聞こえる。

「リリア! 良かった、無事だったんだね。無事で本当に良かった」
「ありがとうリリア。お陰で無事に街まで帰ることができたわ」

 壊れ物を扱うかのようにダナイが地面にリリアを下ろすと、すぐに三人娘がリリアを囲んだ。リリアは自分の無事をアピールしていたが、本当に何もなかったのか丹念に調べられていた。

「ダナイ、お前がリリアを助けたのか?」
「ああ、森で偶然出会ってな。熊に襲われていたのを助けたのさ」

 ロベルトの問いに、何のことはない、とダナイは答えた。それを聞いたロベルトや、三人娘、捜索のために集まった人達は顔を見合わせた。

「確か聞いた話だと、ブラックベアに襲われたと聞いたんだが」
「そうだ。真っ黒なブラックベアって呼ばれている熊だったな」
「そのブラックベアはどうなったんだ?」
「こうなったよ」

 そう言ってダナイは懐から大きな魔石を取り出した。周囲に驚きの声が上がる。その声に今度はダナイが首を傾げた。強そうではあったが、倒せないことはない。その程度の強さだと思っていた。

「お前一人でやったのか?」
「うーん、リリアも魔法で攻撃をしていたと思うが」

 リリアの方を向いて言ったが、リリアは首を左右に振りそれを否定した。

「もちろん攻撃はしたわ。でもブラックベアには通用しなかった。さっきも言ったけど、時間稼ぎが精一杯よ」
「なら一人で倒したのか……」

 ロベルトが絶句している。周囲もシンと静まり返った。ダナイの背中に冷や汗が流れる。もしかしてブラックベアを倒すのはまずかったのか。しかし、リリアを助けるにはどのみち倒すしか選択肢はなかったのだと思い直した。魔力が枯渇して動けなくなっているリリアを逃がすのは無理だっただろう。

「とにかく、二人が無事で良かった。後処理は冒険者ギルドに戻ってからにしよう」

 ロベルトの言葉によって一部が冒険者ギルドへと戻って行った。もちろんダナイはリリアを肩に乗せて移動した。

 ダナイとリリア達はそのまま冒険者ギルドの奥の部屋へと案内された。

 初めて奥へと入ったダナイは緊張した。初めて踏み込むことになるとは言え、御偉方と会うことになるのは想像がついた。それに気がついたのか、リリアはダナイを安心させるかのように頭や髭をモフモフと撫で回した。

 案内された部屋には、予想通り立派な服装に身を包んだ初老の大きな体つきの男が待っていた。その隣には眼鏡をかけた目付きの鋭いエルフの女性が座っている。

 そのエルフの女性はダナイとリリアの様子を見ると、その目が大きく見開いた。そういえばラウリも同じような表情をしていたな、と思い出したダナイは何だか体の奥からムズムズとした感じがした。やっぱり俺達の組み合わせはおかしいのだろう。そう思うと、落胆せずにはいられなかった。

「どうぞ空いている席に座って下さい」

 部屋まで案内してくれたロベルトの指示に従って席についた。ダナイの隣にはリリアが座っている。

「俺はこのイーゴリの街にある冒険者ギルトのギルドマスター、アランだ。呼び捨てで構わない。隣は副ギルドマスターのミランダだ」

 アランの紹介にミランダが頭を下げた。ダナイを見るミランダの目は険しかった。ダナイは何か気に入らないことをしてしまったのかと頭を捻った。ひょっとしたらリリアとミランダは姉妹、もしくは親戚なのかも知れない。変な虫がついたので牽制しているのだろう。

「さっそくで申し訳ないが、君達にあった出来事を残さず話してもらえないか? ブラックベアがグリーンウッドの森に出没したとなると、こちらでも対策を採らないといけないからな」

 どうやら思った以上にことは深刻であるようだとダナイは認識し、リリアと代わる代わる状況を細かく話した。その間もしばしばリリアはダナイの毛並みをモフモフしていた。どうやらこの毛並みを相当気に入ったようだと内心苦笑いした。

「なるほど、大体分かった。ダナイ、お前は今日からDランク冒険者だ。本来ならCランク冒険者まで上げたかったが、冒険者ギルドの規定で一度では二階級までしか上げることができないからな」

 アランはダナイから受け取った大きな魔石を手でもてあそびながら言った。ロベルトに冒険者証明書を渡すと、すぐに部屋を出て行った。

 昨日冒険者登録を済ませたばかりなのに、もうDランク冒険者にまで昇進してしまった。確かアベルとマリアはEランク冒険者だったはず。急な出世に戸惑いを隠せなかった。

「当然の結果よ。ダナイがFランク冒険者だったなんて、信じられないわ」
「いや、俺は昨日冒険者登録をしたばかりなんだけどな」
「えええ!?」

 その場にいた、ダナイを除く全員が声を上げた。どうやらとんでもない速さで出世したようであることをダナイは認識した。

「私だってようやくCランク冒険者なのに……」

 リリアが複雑な顔で呟いた。リリアでもCランク冒険者。三人娘はDランク冒険者であった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...