伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
13 / 137
第一章

ダナイ、魔法を習う

しおりを挟む
 ダナイが鍛冶屋ゴードンに弟子入りしてから数日が経った。現在のダナイは四日ほどゴードンのところで鍛冶を学び、その後一日か二日休むという生活をしていた。ダナイはすぐに頭角を現し「さすがドワーフ」とゴードンはしきりに頷いていた。

 鍛冶屋ゴードンは完全受注制であり、量産品は置いていなかった。全てが刀匠ゴードン・モルチャノフが手がけた一品物であり、値は張るがその性能は折り紙付きだった。

 ダナイは一品物という響きに一人酔いしれていた。どこにでもある量産品ではなく、自分にしか作れない一品物を作ることに憧れていたからだ。

 当然、アベルはそのような高額な武器を買うお金を持ってはいなかった。そのため、剣を研いでもらうことで顔を知ってもらおうとしていたようである。その目論見は当たったようで、ゴードンもアベルのことを気にかけるようになっていた。

「え? ダナイさんもうDランク冒険者になったんですか!?」
「す、凄いです! この間冒険者になったばかりなのにもう追い越されるだなんて」
 
 アベルとマリアは驚嘆した。たまたま運が良かっただけだよ、とは言ったものの、ブラックベアに遭遇したのが運が良かったのかどうかは微妙だった。ただし、ダナイはリリアと出会えたので運が良かったと思っている。

 あのあと、冒険者ギルドではグリーンウッドの森の調査が行われた。その結果、森の奥深くに何者かが住み着いたようであり、以前奥地に生息していた魔物達が森の外縁部にまで現れるようになっていることが分かった。森に住み着いた何かは現在も調査中であり、森に入るには、万が一のときに備えて、異常を知らせるための発煙筒を必ず携帯しなければならないようになっていた。

 ダナイはアベルとマリアに「間違ってもブラックベアに挑もうとするな」と口を酸っぱくして言った。自分がブラックベアに勝つことができたのは、規格外の力を持っているからであると認識しており、自分を基準にして考えると絶対に間違いを犯すと知っているからであった。


 それはリリアに魔法を教えてもらったときのことであった。リリアとはお互いの休みが合ったときに毎回逢う関係になっていた。ただのデートだろうと散々言われたが、ダナイは頑なに「魔法を教えてもらっているだけだ」と言ってそれを認めなかった。

 ダナイはなかなか魔法を使えるようにならなかった。もし今日魔法が使えるようにならなければ『ワールドマニュアル(門外不出)』で一度魔法について調べてみようと思っていた。

 リリアの教え方は間違ってはいなかった。しかし、元々この世界の住人でないダナイには、自然の中に存在していると言われている精霊や、人々を守っているとされる神々についてのことは、どうしても非現実的なものとして捉えてしまっていた。その結果、信じる心を持つことができずに不発に終わっていた。

「すまねえリリア。俺が不甲斐ないばかりに……」
「気にしないで。ダナイには最初に言ったでしょう? 魔法を使えるようになるまでにはかなりの時間がかかるかも知れないって」
「それはそうだが……」

 全く手応えを感じられないダナイはさすがに落ち込んでいた。断じてリリアに格好いいところが見せられなかったからではない。そんなダナイをリリアはフワモコの頭を撫でながら励ましていた。

 部屋に戻ったダナイはさっそく『ワールドマニュアル(門外不出)』で魔法の使い方について調べた。

 魔法とは魔力によって思いを形にしたもの

 ただこの一言が頭に浮かんだ。「たったそれだけ?」となったのは言うまでもなかった。リリアからは魔法の種類やお経のような呪文の詠唱を習っていた。しかしいくら調べてもそのようなものは出てこなかった。

 首を傾げるダナイ。これは一体どう言うことだ? 思いを形にすることができさえすれば、どんな魔法も創り出せると言うことなのか? 疑問は増すばかりであった。

 後日、再びリリアに魔法を習う日がやって来た。リリアとは魔法を教えるにあたって一つの約束事が設けられていた。それは「リリアがいない場所では魔法の練習をしないこと」であった。魔法が成功し、それが暴走するのを恐れたからである。

 そして、今日もダメだった。

「もうダメだあ」

 草原で仰向けに寝転んだダナイを「手のかかる大きな子供だ」と少し呆れた目でリリアが見下ろしているようで、いささか恥ずかしかった。

 そのとき、ダナイの頭に閃くものがあった。魔法は思いを形にしたもの。自分の知っているものをイメージすれば、それが魔法になるのではなかろうか?

 ダナイの持っている確たるイメージ。それは漫画で見た忍術であった。そしてこの日より「ダナイ忍法帳」が始まるのであった。

 ガバリと起き上がるダナイ。

「リリア、ちょいと試してみたいことがあるんだが、いいかな?」
「ん? 何?」
「俺の故郷で魔法のようなものがあったのを思いだしたんだ。忍術って言うんだけどな。それをちょっと試そうと思ってな」
「ニンジュツ? 聞いたことないわね。でも、別に構わないわよ」
「ありがてえ!」

 ダナイはリリアから距離を取った。彼の心には小さいころに忍者ごっこをしていたころの記憶が鮮明に蘇っていた。いける。何故かそう確信した。

 火の魔法は火事になる恐れがあるため、滅多に使わないとリリアは言っていた。そこで火遁ではなく、土遁にすることにした。

「ダナイ忍法、土遁の術!」

 ノリノリでダナイは叫んだ。その途端、周囲の土や岩が様々な形に変化して、周囲の地形をあっという間に見慣れぬ風景へと変えていった。

 あまりの範囲の大きさにダナイは焦った。その途端、忍術の発動は止まり、あとには荒れ果てた大地のみが残った。もちろんリリアとダナイの周囲だけは手つかずである。

「ダナイ、あなた……」

 リリアの顔は青ざめていた。ダナイはやっちまったことを理解した。

「アハハ……安心しな、すぐに元に戻すからよ。土遁、元に戻れの術!」

 すでに適当になっている「ダナイ忍法」は、それでも正しく作用し周囲を元の状態に戻した。リリアは驚嘆して辺りを見渡ししている。

「あれ? 私、夢でも見ていたのかしら?」
「あ、ああ、そうだ。どうも夢を見ていた見たいだな?」
「嘘言いなさい!」

 そのあとダナイは地面に正座をさせられ、リリアに小一時間ほど説教された。そしてきちんと制御できるようになるまでは使用禁止令が発動されたのであった。

 ダナイはこのとき初めて、自分の持っている力が尋常ではないことに気がついたのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...