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第一章
ドラゴン退治②
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Aランク冒険者を中心に次々とドラゴンに攻撃が加えられていく。さすがにそろそろ目も見えるようになってきたようであり、周囲に蠢く冒険者達に向かって太い丸太のような尻尾を振り上げ、鋭い剣のような爪をギラつかせ、口から火を吐いて応戦していた。
しかし、以前に受けていた古傷と、出会い頭に与えた傷は思いのほか深かったようであり、ドラゴンの動きは目に見えて鈍り始めた。勝機を見出した冒険者達は果敢に攻めた。
ようやく自分が不利だと感じたのだろう。それまで応戦していたドラゴンが突如、包囲網を突破するかのような仕草を見せた。しかしそれは想定済みであり、大きな盾を持った冒険者がその行く手を遮った。
たまらずドラゴンは上を見上げた。まさか、と思った瞬間、ドラゴンの巨体が宙に浮いた。
これはまずい。どうやら恐怖心が「翼がないと飛べない」というドラゴンの思い込みを上回ったようだとダナイは見た。
飛ぶことがないと思っていたドラゴンが浮上したことで、周囲に明らかな動揺が広がった。ドラゴンの方も「もしかして、飛べちゃう?」という顔をしており、その目に光が灯りつつあった。
みるみるドラゴンが上昇していく。
「リリア、俺に風魔法をぶち当てて、空に飛ばしてくれ!」
空を飛ぶ魔法を使ってドラゴンを叩き落とそうかと思ったのだが、以前リリアが「空を飛ぶ魔法は存在しない」と話していたことを思い出した。
ここで空を飛ぶ魔法を使うとまた騒ぎになる。そう思ったダナイは、リリアに魔法を使わせ、それをカモフラージュにして空飛ぶ魔法を使おうと思っていた。
「ダナイ、本気なの!? ええい、もう、どうなっても知らないんだからね!」
真っ直ぐにドラゴンの方へと走っていったダナイを見て、リリアも覚悟を決めたようだった。持っていた木の杖を捨てると、ダナイにもらったタクトを懐から取り出し、ダナイに向けた。それを見ていたダナイは人差し指で天を指してリリアに合図を送った。
「行くわよ、ダナイ! ウインドバースト!」
リリアの澄んだ声が耳に届いた途端に足下から強烈な風が吹き上がった。想定していたよりも風は強く、高く巻き上げられた。眼下にはドラゴンが「お前も飛べるんか!」という驚愕の目を向けていた。
こりゃあいい、空飛ぶ魔法を使う手間が省けたぜ。内心でそう思うとドラゴンを見据えた。手負いのドラゴンはヨロヨロと不安定な飛行を続けている。しかし、ドラゴンまでの距離は数メートルほどあった。
「このままじゃ届かねぇ! ダナイ忍法、風遁、ムササビの術!」
手足の間にムササビのような薄い膜が形成され、そのまま滑空するとドラゴンに急接近した。そして、背負っていた魔鉱製のハンマーと握りしめると、ドラゴンの頭へ全力で叩きつけた。
「お前さんに恨みはねぇが、運がなかったな! 南無三!」
グシャリという鈍い音と共にその感覚が手に伝わった。意識を失ったドラゴンはダナイと共にそのまま地上へと落下した。ドシンという大きな地響きが鳴る。
「ダナイ! 死んでないわよね!?」
声を上げ、こちらに走り寄ってくるリリアに笑いながら答えた。
「まだまだ死にゃあしねぇよ。丈夫さだけが取り柄だからな」
ガッハッハと笑うダナイの全身に、小さな傷が無数にあることにリリアは気がついた。ひょっとしたら気がついていないだけで、大きな傷があるかも知れない。
「全く、無茶ばかりして! それに、あなたの取り柄はそれだけじゃないでしょ」
そう言いながらリリアはダナイの傷の具合を丁寧に確認していた。
「ダナイさん! 無事ですかー!」
アベルとマリアも心配して駆け寄ってきた。そしてダナイの無事を確認するとホッとした表情を浮かべた。
しかし、以前に受けていた古傷と、出会い頭に与えた傷は思いのほか深かったようであり、ドラゴンの動きは目に見えて鈍り始めた。勝機を見出した冒険者達は果敢に攻めた。
ようやく自分が不利だと感じたのだろう。それまで応戦していたドラゴンが突如、包囲網を突破するかのような仕草を見せた。しかしそれは想定済みであり、大きな盾を持った冒険者がその行く手を遮った。
たまらずドラゴンは上を見上げた。まさか、と思った瞬間、ドラゴンの巨体が宙に浮いた。
これはまずい。どうやら恐怖心が「翼がないと飛べない」というドラゴンの思い込みを上回ったようだとダナイは見た。
飛ぶことがないと思っていたドラゴンが浮上したことで、周囲に明らかな動揺が広がった。ドラゴンの方も「もしかして、飛べちゃう?」という顔をしており、その目に光が灯りつつあった。
みるみるドラゴンが上昇していく。
「リリア、俺に風魔法をぶち当てて、空に飛ばしてくれ!」
空を飛ぶ魔法を使ってドラゴンを叩き落とそうかと思ったのだが、以前リリアが「空を飛ぶ魔法は存在しない」と話していたことを思い出した。
ここで空を飛ぶ魔法を使うとまた騒ぎになる。そう思ったダナイは、リリアに魔法を使わせ、それをカモフラージュにして空飛ぶ魔法を使おうと思っていた。
「ダナイ、本気なの!? ええい、もう、どうなっても知らないんだからね!」
真っ直ぐにドラゴンの方へと走っていったダナイを見て、リリアも覚悟を決めたようだった。持っていた木の杖を捨てると、ダナイにもらったタクトを懐から取り出し、ダナイに向けた。それを見ていたダナイは人差し指で天を指してリリアに合図を送った。
「行くわよ、ダナイ! ウインドバースト!」
リリアの澄んだ声が耳に届いた途端に足下から強烈な風が吹き上がった。想定していたよりも風は強く、高く巻き上げられた。眼下にはドラゴンが「お前も飛べるんか!」という驚愕の目を向けていた。
こりゃあいい、空飛ぶ魔法を使う手間が省けたぜ。内心でそう思うとドラゴンを見据えた。手負いのドラゴンはヨロヨロと不安定な飛行を続けている。しかし、ドラゴンまでの距離は数メートルほどあった。
「このままじゃ届かねぇ! ダナイ忍法、風遁、ムササビの術!」
手足の間にムササビのような薄い膜が形成され、そのまま滑空するとドラゴンに急接近した。そして、背負っていた魔鉱製のハンマーと握りしめると、ドラゴンの頭へ全力で叩きつけた。
「お前さんに恨みはねぇが、運がなかったな! 南無三!」
グシャリという鈍い音と共にその感覚が手に伝わった。意識を失ったドラゴンはダナイと共にそのまま地上へと落下した。ドシンという大きな地響きが鳴る。
「ダナイ! 死んでないわよね!?」
声を上げ、こちらに走り寄ってくるリリアに笑いながら答えた。
「まだまだ死にゃあしねぇよ。丈夫さだけが取り柄だからな」
ガッハッハと笑うダナイの全身に、小さな傷が無数にあることにリリアは気がついた。ひょっとしたら気がついていないだけで、大きな傷があるかも知れない。
「全く、無茶ばかりして! それに、あなたの取り柄はそれだけじゃないでしょ」
そう言いながらリリアはダナイの傷の具合を丁寧に確認していた。
「ダナイさん! 無事ですかー!」
アベルとマリアも心配して駆け寄ってきた。そしてダナイの無事を確認するとホッとした表情を浮かべた。
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