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第三章
デュラハン
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その日、四人がいつものように夕食を囲んでいると、アベルが気になる噂が冒険者ギルドで広がっていると教えてくれた。
「領都の近くの森にある古い洋館の廃墟跡に鎧をまとった魔物が出るらしいよ」
「へー。何でまたそんなのが話題になっているんだ? 別に前からあったんだろう、その廃墟は」
「それが、どうやらその廃墟には巧妙に隠された何かがあるらしくってね。それで調査をしようと調査団が入ったみたいなんだ」
「そしたらその鎧をまとった魔物が邪魔をしてきたっていうわけか」
「そうなんだよ」
アベルは楽しそうに話した。動く鎧などただの怪談話ではないか。それなのになぜそんなにも嬉しそうなのか。見たこともない魔物と言うのは、きっと冒険心をくすぐるのだろう。
「それで討伐されたのか?」
「それが鎧が丈夫過ぎて歯が立たないらしいんだよ。噂では魔鉱製の鎧じゃないかって言われてるよ」
魔鉱で作られた鎧をまとったお化け。そんなものがうろついていたらさぞ心が休まらないだろう。話を聞くと、どうやらその洋館を守っているようであり、その敷地からは出て来ないそうである。
それなら近づかなければ良いだけで大したことはないな、と思っていた。しかし、よほど重要な物がその館には眠っているらしく、その魔物の討伐依頼はしばらく張り出されていた。
その日、久しぶりに四人そろって冒険者ギルドの依頼を受けようとしていた。そこにギルドマスターのアランが近づいて来た。また厄介事か? と不安がよぎる。
「お前達、森のデュラハンの話は聞いているか?」
「森のデュラハン? あのさまよう鎧の魔物のことですか?」
「ああ、そうだ。知っているなら話が早い。お前達、そいつの討伐依頼を引き受けてくれないか?」
何でその討伐依頼を俺達に振るんだ? 他の冒険者達が達成できない依頼を、俺達が達成できるとは思えないんだが。どうしても討伐したいなら、王都の高ランク冒険者に依頼すればいいはずだ。
「それは構わないが、一体どういった風の吹き回しで?」
「ああ、それがな……」
アランは苦笑いを浮かべた。その表情は「根性無しが多くて困る」とでも言いたげであった。
「理由は二つあってな。一つ目が動く鎧を怖がる者がいること」
なるほど。確かにホラーだもんな。討伐するのはいいが、その後で呪われでもしたらたまったもんじゃないだろう。それに、単純にお化けが怖いのかも知れない。俺にとっては魔物もお化けも妖怪もたいして差はないと思っているのだが。
「二つ目だが……ダナイ、その魔物の鎧が魔鉱製だという話は聞いているな?」
「ええ、アベルから聞きました。なるほど、魔鉱製の鎧に武器か弾かれるのですね」
「ああそうだ。だがもっと悪いことに、どうやらデュラハンの鎧には何かの特殊な効果があるのか、弾かれるばかりではなく、武器が破壊される者が後を絶たないんだよ」
それで魔鉱の剣を持つアベルに白羽の矢が立ったわけか。俺達四人ならそれぞれサポートできるし、丁度良いということなのだろう。あとは俺の作った魔鉱の剣がデュラハンの魔鉱の鎧に通用するかどうかだな。
「武器破壊の効果が鎧にあるのかしら?」
「どうだろうな。そんな鎧があるなら相当高価なはずだぜ。まさか、依頼主はそれが欲しいんじゃないだろうな?」
ダナイの問いにアランは首を振った。
「鎧は要らないから破壊してもらっても構わない、とのことだ。遠慮無く壊してもらって構わんよ」
「オーケー、オーケー。どうする? 引き受けるか?」
ダナイは三人を振り返った。
「私は構わないわよ。ギルドマスターから直接の依頼なら貸しが作れてお得よ」
リリア、容赦無し。その言葉にアランは苦笑していた。
「わたしも良いわよ。首無しデュラハン、見てみたい!」
「そうだね。ギルマスに期待されているなら、やってみる価値はあるかな?」
そう言いつつも、アベルは自分の魔鉱の剣を見た。討伐できる可能性はあるが、剣をダメにする可能性もある。本当のところはどうしようか迷っているのだろう。
「アベル、心配するな。もしそいつが折れるようなことがあったら、俺がすぐにそれ以上の剣を作ってやるよ」
ニヤリと笑う。それを見たアベルは嬉しそうに大きく頷いた。それを見たリリアは苦言を呈した。
「ダナイ、新しい剣を作るのは良いけど、ほ・ど・ほ・どにしておきなさいよ」
ある意味でダナイを信じているかのような圧力に、コクコクと首を縦に振った。
四人はデュラハンがいる領都の森の洋館屋敷へと向かった。領都までの馬車の中、気になったのか、リリアが聞いてきた。
「馬車作りは順調なの?」
「まあまあだな。機構のチェックは順調だ。あとは試しにそれを組み込んでみるだけだな」「まだ試作品は出来上がってないのね。揺れの少ない馬車、楽しみにしてるわ」
馬車の揺れに辟易しているのは俺だけじゃなかったか。リリアの後押しに勇気百倍になると、帰ったらさっそく試作馬車を組み立てようと心に決めた。
そうと決まればさっさと討伐して、さっさと帰ろう。四人は領都に到着した次の日には早くもデュラハン討伐へと向かった。
場所は領都から北東にある森の中。その森はイーゴリの街の近くにある森と瓜二つであり、そこに出現する魔物もほぼ同じだった。
そんな魔物が住む森の中に洋館を建てるだなんて、よほど何か重大な秘密があるのだろう。一体どうやって魔物から洋館を守ったのか。ひょっとしたら、そのデュラハンは魔物などではなく、洋館を守る守護者のようなのかも知れないと密かに思っていた。
鎧を生き物のように動かす手法があるのか。実はあるのだ。まさかそんな生物を人工的に造り出すような、自然の摂理から反したことはできないだろうと思っていたのだが、『ワールドマニュアル(門外不出)』によると、古の超古代高度文明時代には「ゴーレム」と呼ばれる人工的に造り出した動く石人形を使役していたらしい。
もしかして、その技術が使われているのではないか? そうなると、その洋館にはそれを記した書物が眠っているのかも知れない。そんな考察をしながら進んでいると、依頼にあった洋館の廃墟へとたどりついた。
「何か出てきそうな雰囲気よね?」
さっきまで元気だったマリアが古びた廃墟を見た途端、威勢を失った。どうやら不気味な廃墟を目の当たりにして腰が引けたようだ。その様子にちょっと脅かしてみたくなった。
「もしかしたら、出るかもなぁ……」
「で、出るって、何が?」
「お化けだよ。本物お化けが出るかも知れないなぁ。引き返せ、引き返せ……ってな」
「ヒッ!」
「ちょっとダナイ、マリアをからかうのはやめなさい」
リリアに怒られた。もしかしてだけど、リリアも怖かったのかも知れない。夜にトイレに付いてきてくれとか言われたらどうしよう。びびったマリアはリリアにしがみついた。アベルにしがみつかないのは、周囲に気を配っているアベルの邪魔にならないようにするためだろう。
その辺の良識はしっかりとしているようだ。さすがはCランク冒険者というわけだ。
そのまま洋館へと近づくと、どこから現れたのか、ガシャ、ガシャ、と音を立ててデュラハンがやってきた。その音にビクッ! とマリアとリリアがそろって反応した。
デュラハンには首から上がなく、鎧と剣、それに大きな盾を前に構えていた。盾も鎧も傷だらけではあったが、致命傷には至っていないようだ。鈍く光るその薄い赤い色から、魔鉱製であることは間違いないようだ。
「気をつけろ。噂通り魔鉱製のようだ」
「やっぱりそうなのね。中身もなさそうだから、魔法による副次効果はあまり期待できなさそうね」
リリアはタクトを構え、マリアは魔法銃を腰のホルダーから抜いた。俺はハンマーを構え、アベルはスラリと魔鉱の剣を抜いた。
「まずは試しに斬りかかってみるよ。援護を頼む」
そう言うと、流れるような動きでデュラハンへと斬りかかった。デュラハンの動きは決して俊敏ではなかった。重い魔鉱製の鎧を身につけていることもあり、その動きは鈍重と言っても良いだろう。
しかし、盾の動きとその防御力は本物であり、アベルの剣を事もなげに弾いた。弾かれたアベルはすぐに剣を確認していた。
「うん。刃こぼれはしていないようだ。これなら大丈夫そうな気がする」
ニッコリとアベルは笑った。どうやらよほど魔鉱の剣が傷つくのが嫌だったようである。大事にされるのは嬉しいが、それで剣を使うのを躊躇されるのはやめて欲しかった。
剣の代わりはいくらでも作ることができる。しかし、命の代わりは作れないのだから。
「領都の近くの森にある古い洋館の廃墟跡に鎧をまとった魔物が出るらしいよ」
「へー。何でまたそんなのが話題になっているんだ? 別に前からあったんだろう、その廃墟は」
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「そしたらその鎧をまとった魔物が邪魔をしてきたっていうわけか」
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アベルは楽しそうに話した。動く鎧などただの怪談話ではないか。それなのになぜそんなにも嬉しそうなのか。見たこともない魔物と言うのは、きっと冒険心をくすぐるのだろう。
「それで討伐されたのか?」
「それが鎧が丈夫過ぎて歯が立たないらしいんだよ。噂では魔鉱製の鎧じゃないかって言われてるよ」
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「お前達、森のデュラハンの話は聞いているか?」
「森のデュラハン? あのさまよう鎧の魔物のことですか?」
「ああ、そうだ。知っているなら話が早い。お前達、そいつの討伐依頼を引き受けてくれないか?」
何でその討伐依頼を俺達に振るんだ? 他の冒険者達が達成できない依頼を、俺達が達成できるとは思えないんだが。どうしても討伐したいなら、王都の高ランク冒険者に依頼すればいいはずだ。
「それは構わないが、一体どういった風の吹き回しで?」
「ああ、それがな……」
アランは苦笑いを浮かべた。その表情は「根性無しが多くて困る」とでも言いたげであった。
「理由は二つあってな。一つ目が動く鎧を怖がる者がいること」
なるほど。確かにホラーだもんな。討伐するのはいいが、その後で呪われでもしたらたまったもんじゃないだろう。それに、単純にお化けが怖いのかも知れない。俺にとっては魔物もお化けも妖怪もたいして差はないと思っているのだが。
「二つ目だが……ダナイ、その魔物の鎧が魔鉱製だという話は聞いているな?」
「ええ、アベルから聞きました。なるほど、魔鉱製の鎧に武器か弾かれるのですね」
「ああそうだ。だがもっと悪いことに、どうやらデュラハンの鎧には何かの特殊な効果があるのか、弾かれるばかりではなく、武器が破壊される者が後を絶たないんだよ」
それで魔鉱の剣を持つアベルに白羽の矢が立ったわけか。俺達四人ならそれぞれサポートできるし、丁度良いということなのだろう。あとは俺の作った魔鉱の剣がデュラハンの魔鉱の鎧に通用するかどうかだな。
「武器破壊の効果が鎧にあるのかしら?」
「どうだろうな。そんな鎧があるなら相当高価なはずだぜ。まさか、依頼主はそれが欲しいんじゃないだろうな?」
ダナイの問いにアランは首を振った。
「鎧は要らないから破壊してもらっても構わない、とのことだ。遠慮無く壊してもらって構わんよ」
「オーケー、オーケー。どうする? 引き受けるか?」
ダナイは三人を振り返った。
「私は構わないわよ。ギルドマスターから直接の依頼なら貸しが作れてお得よ」
リリア、容赦無し。その言葉にアランは苦笑していた。
「わたしも良いわよ。首無しデュラハン、見てみたい!」
「そうだね。ギルマスに期待されているなら、やってみる価値はあるかな?」
そう言いつつも、アベルは自分の魔鉱の剣を見た。討伐できる可能性はあるが、剣をダメにする可能性もある。本当のところはどうしようか迷っているのだろう。
「アベル、心配するな。もしそいつが折れるようなことがあったら、俺がすぐにそれ以上の剣を作ってやるよ」
ニヤリと笑う。それを見たアベルは嬉しそうに大きく頷いた。それを見たリリアは苦言を呈した。
「ダナイ、新しい剣を作るのは良いけど、ほ・ど・ほ・どにしておきなさいよ」
ある意味でダナイを信じているかのような圧力に、コクコクと首を縦に振った。
四人はデュラハンがいる領都の森の洋館屋敷へと向かった。領都までの馬車の中、気になったのか、リリアが聞いてきた。
「馬車作りは順調なの?」
「まあまあだな。機構のチェックは順調だ。あとは試しにそれを組み込んでみるだけだな」「まだ試作品は出来上がってないのね。揺れの少ない馬車、楽しみにしてるわ」
馬車の揺れに辟易しているのは俺だけじゃなかったか。リリアの後押しに勇気百倍になると、帰ったらさっそく試作馬車を組み立てようと心に決めた。
そうと決まればさっさと討伐して、さっさと帰ろう。四人は領都に到着した次の日には早くもデュラハン討伐へと向かった。
場所は領都から北東にある森の中。その森はイーゴリの街の近くにある森と瓜二つであり、そこに出現する魔物もほぼ同じだった。
そんな魔物が住む森の中に洋館を建てるだなんて、よほど何か重大な秘密があるのだろう。一体どうやって魔物から洋館を守ったのか。ひょっとしたら、そのデュラハンは魔物などではなく、洋館を守る守護者のようなのかも知れないと密かに思っていた。
鎧を生き物のように動かす手法があるのか。実はあるのだ。まさかそんな生物を人工的に造り出すような、自然の摂理から反したことはできないだろうと思っていたのだが、『ワールドマニュアル(門外不出)』によると、古の超古代高度文明時代には「ゴーレム」と呼ばれる人工的に造り出した動く石人形を使役していたらしい。
もしかして、その技術が使われているのではないか? そうなると、その洋館にはそれを記した書物が眠っているのかも知れない。そんな考察をしながら進んでいると、依頼にあった洋館の廃墟へとたどりついた。
「何か出てきそうな雰囲気よね?」
さっきまで元気だったマリアが古びた廃墟を見た途端、威勢を失った。どうやら不気味な廃墟を目の当たりにして腰が引けたようだ。その様子にちょっと脅かしてみたくなった。
「もしかしたら、出るかもなぁ……」
「で、出るって、何が?」
「お化けだよ。本物お化けが出るかも知れないなぁ。引き返せ、引き返せ……ってな」
「ヒッ!」
「ちょっとダナイ、マリアをからかうのはやめなさい」
リリアに怒られた。もしかしてだけど、リリアも怖かったのかも知れない。夜にトイレに付いてきてくれとか言われたらどうしよう。びびったマリアはリリアにしがみついた。アベルにしがみつかないのは、周囲に気を配っているアベルの邪魔にならないようにするためだろう。
その辺の良識はしっかりとしているようだ。さすがはCランク冒険者というわけだ。
そのまま洋館へと近づくと、どこから現れたのか、ガシャ、ガシャ、と音を立ててデュラハンがやってきた。その音にビクッ! とマリアとリリアがそろって反応した。
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「気をつけろ。噂通り魔鉱製のようだ」
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「まずは試しに斬りかかってみるよ。援護を頼む」
そう言うと、流れるような動きでデュラハンへと斬りかかった。デュラハンの動きは決して俊敏ではなかった。重い魔鉱製の鎧を身につけていることもあり、その動きは鈍重と言っても良いだろう。
しかし、盾の動きとその防御力は本物であり、アベルの剣を事もなげに弾いた。弾かれたアベルはすぐに剣を確認していた。
「うん。刃こぼれはしていないようだ。これなら大丈夫そうな気がする」
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