伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第四章

王都からの依頼

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 墓場のゴーストタイプの魔物を倒したあとは色々あった。彼女たちの主張によると、「完全に決壊したわけではない」とのことだった。ちょっとだけ、らしい。

 依頼達成の報告は朝になってから行くことにして、ひとまず家に帰った。すぐにお風呂を沸かすと、アベルとマリアを放り込んだ。今、マリアを一人で行動させるのは無理だ。もちろんリリアを一人で行動させることも無理である。
 マリアはアベルに任せ、こちらはこちらでリリアを元気づける仕事に取りかかる。

「俺たちのパーティーでも、ゴーストタイプの魔物が倒せることが分かって良かったな。ひとまずは立派なBランクパーティーと言えるんじゃないのかな」
「……」
「リリア、出ちまったもんはどうしようもないさ。だから、元気……」
「むう!」

 メッチャリリアに睨まれた。これはあれだ。口にしてはいけない禁止事項だ。俺は地雷を踏んでしまったようだ。元気づけるつもりが、まさか逆効果になってしまうとは……トホホ……。

 その後風呂から上がってきたアベルたちと交代で、風呂に入った。
 温かい風呂に入って、ようやくリリアも落ち着いたようである。機嫌も直っているように思う。

「アベル、残念そうだったわね」
「ああ、自慢の剣でダメージがほとんど与えられなかったからな。魔法剣を使えばもしかして、という思いが強かっただろうからな」

 あのときのアベルのガックリと肩を落とした残念そうな様子は、どこか売られて行く子牛のように、哀愁が漂っていた。

「ねえ、何とかならないの? アベルには必要な攻撃手段だと思うんだけど」
「そうだな……」

 アベルがお化けとも戦うことが出来れば、自分たちは別に行かなくても良くなるのではないか? そんなリリアの考えが透けていた。そんなに嫌だったのか。何か依頼を引き受けてごめん。

「多分だが、退魔の付与を施せば、ダメージを与えられると思うんだけどな」
「退魔の付与……あの古い洋館屋敷にあった付与ね」

 そう、デュラハン討伐依頼のときに依頼対象の洋館屋敷に付与されていたものだ。見つけたときはすでに破壊されていたが、完全版は『ワールドマニュアル(門外不出)』の中にしっかりと書いてあった。

「そのためには、少なくとも三つ付与できる金属が必要だな」
「ミスリル、がそれに当てはまるのかしら?」

 リリアが頬に人差し指を当てて首を捻った。その可愛らしい仕草を見ながら、その下の丸い浮き輪に目が釘付けになりそうになるのを、慌てて引き剥がす。

「調べた感じでは、三つ、付与できそうだ」
「それなら、何としてでもミスリルが欲しいわね」
「そうだな。売ってもらえればいいんだが……」
「その感じだと、難しそうなのね」
「ああ。どうも、ドワーフの国とエルフの国でしか、産出しないらしい」

 俺の言葉にリリアは考え込んだ。エルフの国にはリリアの伝手がある。その辺りを考えてくれているのだろう。だが、リリアに無理をさせるつもりはない。別に飛び級して、オリハルコンを手に入れても良いのだから。

 その夜、予想通り、リリアのトイレに起こされた。もちろん中まで付いて行った。


 後日、冒険者ギルドに依頼達成の報告に行くと、大いに喜んでくれた。

「お前たちなら、やってくれると思っていたよ。これでこの手の依頼は、今後お前たちに任せても大丈夫そうだな」

 ギルドマスターのアランは上機嫌である。その反面、それを聞いたウチのパーティーの女性陣は涙目であった。
 これは恐らく、よほどのことがない限りお化け退治の依頼を引き受けることはないな。早いところアベルも、ゴーストタイプの魔物と戦えるようにしておいた方が良いのかも知れない。

 アベルにも切れないものがあることにちょっとした不安を感じながらも、いつもの様に鍛冶仕事と、冒険者ギルドでの依頼をこなす日々が続いていた。
 そんな中、またしてもウチのパーティーを指名した依頼が舞い込んできた。
 
 その日も俺は鍛冶屋ゴードンで注文された剣を打っていた。最近では俺の名前もそこそこ有名になってきたようであり、武器の注文がたまに入ってくるのだ。もちろん自分自身が冒険者もやっているため、多くの仕事は引き受けてはいない。
 今日の分の仕事を終えて家に帰ると、何だかいつもと空気が違うことに気がついた。

「ただいま。どうしたんだ? またお化け退治の依頼か?」
「違うわよ! 違うけど……」

 違うけど、別の意味で厄介な仕事が舞い込んだようである。リリアが視線を落とした。まぁ、ここで話を聞いても仕方がないので、みんなをダイニングルームに呼び出した。

「それで、今度はどんな依頼なんだ?」
「それが、まずは王都の冒険者ギルドまで来て欲しいって書いてあるんだよ」

 はい、とアベルがアランから受け取ったらしい手紙を渡してきた。その様子からすると、特に急を要する依頼ではないのかな?
 おもむろに渡された手紙を読むと、確かに王都の冒険者ギルドに顔を出して欲しいと書いてある。

「なるほど。依頼の内容は王都の冒険者ギルドについてから教える、ということか」
「そうみたいだね。アランに聞いたら、王都からの指名依頼は、いつもそうなっているそうだよ」

 どうやら王都の依頼は特殊な依頼が多いようだな。途中で依頼の内容が表に出ることがないように、慎重に取り扱われているということだろう。つまりはそれだけ、周囲に知られると良くない、厄介な依頼であると言える。

「それで、みんなはどうしたいんだ?」
「どうしたいって……」

 アベルは言いよどむ。アベルがこのパーティーのリーダーなら良かったのだが、なぜか俺なんだよなぁ。俺の一存をいつも気にしなければならないというのは、どうも自分には合わない。普通にどうしたいのか、言ってもらった方がずっとよろしい。

「Aランクに上がるためには、王都の冒険者ギルドからの依頼をいくつも高評価でこなす必要があるのよね。これはその第一歩。やるに決まってるじゃない。ね、アベル?」

 マリアがさも当然とばかりに言った。そうそう、これでいいんだよ。やりたいことを言ってくれたよっぽど方がいい。ダメなときはダメだって、キッチリ止めるさ。

「ちなみに断ったらペナルティーとかはあるのか?」
「明確なペナルティーはないけど……しばらく指名依頼は来なくなるかもね」
「そうなると、ランクアップに時間がかかるというわけか。それじゃ、取りあえず行くだけ行ってみるとしよう。受けるか受けないかは、そのときに決めればいいさ」

 俺の言葉にアベルがパッと顔を上げた。

「ダナイの仕事は大丈夫なの?」
「心配ないさ。いつでも動けるような注文しか引き受けてないからな」

 それを聞いたアベルは安心したかのように頷いた。どうやらそのことを気にしていたらしい。アベルは随分と周囲に気を配るタイプのようだな。
 その一方で、リリアは複雑な顔をしている。

「それじゃ、決まりね。しばらく家を離れることになるのは残念だけど、仕方がないわね」

 リリアはこの家をかなり気に入ってくれている。あまり遠出はしたくないのだろう。俺も同じだ。楽しげにソファーで寝転がって、ゴロゴロしているリリアを見ると、ついイタズラをしたくなってしまう。まぁそのたびにたしなめられるのだが。

「それじゃ、明日、王都までの護衛任務の依頼がないか見ておくよ」
「ああ、そうしておいてくれ。俺は師匠にこの話をしておくよ。詳しい日程はあとで決めるとしよう」

 こうして俺たちは再び王都の冒険者ギルドへ向かうことになった。
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