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第四章
調査依頼
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冒険者ギルドの護衛任務に、都合良く王都までの護衛依頼があったそうだ。ほくほく顔で、アベルはその依頼を引き受けて家へと帰ってきた。俺はとゆうと、その間に師匠に断りを入れに行っていた。
「すいません、師匠。王都の冒険者ギルドから指名依頼が来まして、しばらく留守にすることになります」
「ああ、構わないよ。いつものように、留守の間はしっかりと家の面倒を見ておくよ」
「ありがとうございます」
いつも師匠に頼ってばかりだが、家の管理については、そろそろ別の手を考えていた方が良いのかも知れない。師匠も仕事が増えつつあるし、だからといって、弟子が増えているわけでもない。
留守の間、家を守ってくれるハウスキーパーのような人を雇う必要があるのかも知れない。
こうしてそれぞれの準備が整うと、王都へと向かった。何度か通った道ではあるが、さすがに遠い。この辺りの馬車は軒並みパワーアップしているので、最初の頃よりかは断然マシな乗り心地になってはいるが、それでもつらいものはつらい。
道中は特に変わったことは何もなかった。魔物とは何回か遭遇したものの、アベルが一人で無双していたので、俺たちに出番はまったくなかった。活躍できなかったマリアをなだめることの方がよほど大変だった。レベルアップシステムはないのに、何でそこまでマリアが魔物を倒すことにこだわるのか、それが分からない。単に魔法銃を撃ちたいだけなのかも知れない。
無事に王都についた俺たちは、到着した次の日に冒険者ギルドへと向かった。全員が朝寝坊をしたため、時刻はすでに昼を過ぎているが、特に問題はないだろう。王都のそれなりに値段のする宿は、上げ膳据え膳で非常に良かった。クセになりそう。
王都の冒険者ギルドは、相変わらずの独特の空気が漂っていた。
イーゴリの街の冒険者ギルドでは、この時間帯にいる冒険者はほとんどいないのだが、ここは違う。いまも設置されたテーブルを囲んで、何組かのパーティーが頭を突き合わせて相談をしていた。
Bランク以上の依頼は難易度も高い。きっとそうやって、自分たちで達成できる仕事なのかを慎重に判断しているのだろう。中には無謀な依頼を引き受けて、帰って来ないパーティーもあるようではあったが。
「アベル、俺たちもそろそろ王都に住み家を持つか? Bランクの依頼をもっと受けたいんじゃないか?」
「確かにそれはあるけど……Aランクに上がるのは、あくまでも指名依頼をこなす必要があるからね。Bランクの依頼ばかり受ける必要はないよ。それよりも必要なのは、しっかりと依頼をこなすという信頼関係だよ」
それもそうか。適当にたくさんの依頼を受けても、それが手抜きじゃ、信頼関係は生まれない。そんなパーティーに仕事を依頼しようなどと思う人物はいないだろう。
色々とアベルは考えているな。感心感心。
受付カウンターに並びながらそんな雑談をしていると、俺たちの順番が回ってきた。
「この手紙を受け取ったんだが」
イーゴリの街の冒険者ギルドで受け取った手紙を渡す。その手紙を確認すると、受付嬢は一旦後ろへと下がって行った。俺たちが顔を見合わせていると、すぐに副ギルドマスターのジアーナがやって来た。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
にっこりと笑ってそう言うと、冒険者ギルドの奥を指した。どうやらここでは話せない内容らしい。それぞれうなずくと無言でついて行った。
向かった部屋の中では、ギルドマスターのマクシミリアンがすでに座っていた。再び出会った大物に、アベルとマリアの二人に緊張が走った。背筋がシャキッと伸びている。
ジアーナの案内で俺たちはあいている席に適当に座った。
「遠い所、呼び出してしまって済まないね。実は君たちの頼みたい依頼があってね」
ギルドマスターは忙しいのだろう。すぐに依頼内容の話になった。
「君たちにエルフの国を調査してもらいたいんだ。エルフのリリア君がいるのならば、それなりにスムーズに仕事ができると思うんだよ」
なるほど。エルフを仲間に入れているパーティーはそれほど多くはない。さらに、権力を持ったエルフとなれば、リリア以外には考えられないのかも知れない。いや、目の前にいるジアーナでもできそうではあるが。
「いまさら家に帰るつもりはないわ。調査ならジアーナが行けばいいじゃない。冒険者ギルドの副ギルドマスターなんだし、名前も知れ渡ってるでしょう?」
ツンツンした感じでリリアが口を開いた。かなり嫌そうである。
「そんなこと言わないでよ。私が出張ったら、騒ぎが大きくなるからダメなのよ。あなたたちのような冒険者がふらっと行くから、目立たずに調査できるのよ。それに、別に実家を頼れだなんて言ってないわ。リリア一人でも十分に顔が利くでしょう?」
「い・や・よ! どこで足がつくかも分からないのに、そんな危険なことするわけないでしょ!」
リリアの柳眉は完全に逆立っている。檄おこのようである。
「申し訳ありませんが、その依頼はお引き受けできません。リリアが嫌がる依頼を引き受けるつもりはまったくありませんのでね」
俺はキッパリと断った。嫌がるリリアに無理を言って引き受ける必要などないのだ。俺の中では依頼よりもリリアの方が大事だ。
「ダナイ……」
「いいんだよ、リリア。気にすることはないさ」
見つめ合う二人。リリアの手はそっと俺の毛をなでている。
「ハイハイ、ごちそう様、ごちそう様。あああ、どうしたものかしら……」
ジアーナが頭を抱えたが、諦めて他の冒険者に依頼して欲しい。そう思っていると、先ほどから黙って話を聞いていたマクシミリアンが口を開いた。
「この依頼は錬金術ギルドからの依頼でもあるんだ」
「錬金術ギルドからの?」
不思議そうに言うと、アベルとマリアがそろって首をかしげる。錬金術ギルドからの依頼となれば、思い当たることはただ一つ。
「もしかして、例の病気と何か関係が?」
マクシミリアンはうなずく。
「ああ、そうだ。どうやらあの病気の出所がエルフの国のようなのだよ」
「そんな!」
リリアが悲鳴を上げた。自分の生まれた国がそのような大それたことをしたかも知れないことに、かなり動揺しているようである。そのまま目を伏せた。
「それで今回の依頼が来たのです。依頼の内容はエルフの国の情勢確認。もちろん国では常に情勢確認を行っておりますが、それはあくまでも表面上の情報だけ。内部の細かな情報を探るには、もっと内情を探れる人物の力が必要なのよ」
「それで私が……」
どうやらリリアは合点が行ったようである。リリアがうまく立ち回ることで必要な情報を入手できると、国は踏んでいるようである。
これは困った。どうしたものか。病気の出所を突き止める必要はある。間違いなく何か良くないことをもくろんでいるはずだ。それだけは未然に阻止しなければならない。しかし、リリアが嫌うことをしたくはない。
「ダナイ、引き受けましょう」
考え込んでいたリリアが、小さく言葉をこぼした。声は小さかったが、そこには決意の色が見えた。
「いいんだな?」
「……ええ」
自分も大事だが、自分の生まれ故郷も大事。エルフの国が関与していないことを証明するために動くことにしたのだろう。その決意を無駄にするわけには行かないな。
「分かりました。依頼を引き受けましょう。ただし、リリアの故郷には絶対に行きませんので、そのおつもりで」
あっはっは、とマクシミリアンは笑った。
「それでいい。リリア君の故郷へはジアーナに行ってもらうとしよう。短期間の里帰りだと言えば、おそらくは大丈夫だろう」
はぁ、とジアーナがため息をこぼす。どうやらジアーナも故郷へは帰りたくはないらしい。
一体、リリアとジアーナの故郷には何があるんだ? 違う意味で気になってきた。
「すいません、師匠。王都の冒険者ギルドから指名依頼が来まして、しばらく留守にすることになります」
「ああ、構わないよ。いつものように、留守の間はしっかりと家の面倒を見ておくよ」
「ありがとうございます」
いつも師匠に頼ってばかりだが、家の管理については、そろそろ別の手を考えていた方が良いのかも知れない。師匠も仕事が増えつつあるし、だからといって、弟子が増えているわけでもない。
留守の間、家を守ってくれるハウスキーパーのような人を雇う必要があるのかも知れない。
こうしてそれぞれの準備が整うと、王都へと向かった。何度か通った道ではあるが、さすがに遠い。この辺りの馬車は軒並みパワーアップしているので、最初の頃よりかは断然マシな乗り心地になってはいるが、それでもつらいものはつらい。
道中は特に変わったことは何もなかった。魔物とは何回か遭遇したものの、アベルが一人で無双していたので、俺たちに出番はまったくなかった。活躍できなかったマリアをなだめることの方がよほど大変だった。レベルアップシステムはないのに、何でそこまでマリアが魔物を倒すことにこだわるのか、それが分からない。単に魔法銃を撃ちたいだけなのかも知れない。
無事に王都についた俺たちは、到着した次の日に冒険者ギルドへと向かった。全員が朝寝坊をしたため、時刻はすでに昼を過ぎているが、特に問題はないだろう。王都のそれなりに値段のする宿は、上げ膳据え膳で非常に良かった。クセになりそう。
王都の冒険者ギルドは、相変わらずの独特の空気が漂っていた。
イーゴリの街の冒険者ギルドでは、この時間帯にいる冒険者はほとんどいないのだが、ここは違う。いまも設置されたテーブルを囲んで、何組かのパーティーが頭を突き合わせて相談をしていた。
Bランク以上の依頼は難易度も高い。きっとそうやって、自分たちで達成できる仕事なのかを慎重に判断しているのだろう。中には無謀な依頼を引き受けて、帰って来ないパーティーもあるようではあったが。
「アベル、俺たちもそろそろ王都に住み家を持つか? Bランクの依頼をもっと受けたいんじゃないか?」
「確かにそれはあるけど……Aランクに上がるのは、あくまでも指名依頼をこなす必要があるからね。Bランクの依頼ばかり受ける必要はないよ。それよりも必要なのは、しっかりと依頼をこなすという信頼関係だよ」
それもそうか。適当にたくさんの依頼を受けても、それが手抜きじゃ、信頼関係は生まれない。そんなパーティーに仕事を依頼しようなどと思う人物はいないだろう。
色々とアベルは考えているな。感心感心。
受付カウンターに並びながらそんな雑談をしていると、俺たちの順番が回ってきた。
「この手紙を受け取ったんだが」
イーゴリの街の冒険者ギルドで受け取った手紙を渡す。その手紙を確認すると、受付嬢は一旦後ろへと下がって行った。俺たちが顔を見合わせていると、すぐに副ギルドマスターのジアーナがやって来た。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
にっこりと笑ってそう言うと、冒険者ギルドの奥を指した。どうやらここでは話せない内容らしい。それぞれうなずくと無言でついて行った。
向かった部屋の中では、ギルドマスターのマクシミリアンがすでに座っていた。再び出会った大物に、アベルとマリアの二人に緊張が走った。背筋がシャキッと伸びている。
ジアーナの案内で俺たちはあいている席に適当に座った。
「遠い所、呼び出してしまって済まないね。実は君たちの頼みたい依頼があってね」
ギルドマスターは忙しいのだろう。すぐに依頼内容の話になった。
「君たちにエルフの国を調査してもらいたいんだ。エルフのリリア君がいるのならば、それなりにスムーズに仕事ができると思うんだよ」
なるほど。エルフを仲間に入れているパーティーはそれほど多くはない。さらに、権力を持ったエルフとなれば、リリア以外には考えられないのかも知れない。いや、目の前にいるジアーナでもできそうではあるが。
「いまさら家に帰るつもりはないわ。調査ならジアーナが行けばいいじゃない。冒険者ギルドの副ギルドマスターなんだし、名前も知れ渡ってるでしょう?」
ツンツンした感じでリリアが口を開いた。かなり嫌そうである。
「そんなこと言わないでよ。私が出張ったら、騒ぎが大きくなるからダメなのよ。あなたたちのような冒険者がふらっと行くから、目立たずに調査できるのよ。それに、別に実家を頼れだなんて言ってないわ。リリア一人でも十分に顔が利くでしょう?」
「い・や・よ! どこで足がつくかも分からないのに、そんな危険なことするわけないでしょ!」
リリアの柳眉は完全に逆立っている。檄おこのようである。
「申し訳ありませんが、その依頼はお引き受けできません。リリアが嫌がる依頼を引き受けるつもりはまったくありませんのでね」
俺はキッパリと断った。嫌がるリリアに無理を言って引き受ける必要などないのだ。俺の中では依頼よりもリリアの方が大事だ。
「ダナイ……」
「いいんだよ、リリア。気にすることはないさ」
見つめ合う二人。リリアの手はそっと俺の毛をなでている。
「ハイハイ、ごちそう様、ごちそう様。あああ、どうしたものかしら……」
ジアーナが頭を抱えたが、諦めて他の冒険者に依頼して欲しい。そう思っていると、先ほどから黙って話を聞いていたマクシミリアンが口を開いた。
「この依頼は錬金術ギルドからの依頼でもあるんだ」
「錬金術ギルドからの?」
不思議そうに言うと、アベルとマリアがそろって首をかしげる。錬金術ギルドからの依頼となれば、思い当たることはただ一つ。
「もしかして、例の病気と何か関係が?」
マクシミリアンはうなずく。
「ああ、そうだ。どうやらあの病気の出所がエルフの国のようなのだよ」
「そんな!」
リリアが悲鳴を上げた。自分の生まれた国がそのような大それたことをしたかも知れないことに、かなり動揺しているようである。そのまま目を伏せた。
「それで今回の依頼が来たのです。依頼の内容はエルフの国の情勢確認。もちろん国では常に情勢確認を行っておりますが、それはあくまでも表面上の情報だけ。内部の細かな情報を探るには、もっと内情を探れる人物の力が必要なのよ」
「それで私が……」
どうやらリリアは合点が行ったようである。リリアがうまく立ち回ることで必要な情報を入手できると、国は踏んでいるようである。
これは困った。どうしたものか。病気の出所を突き止める必要はある。間違いなく何か良くないことをもくろんでいるはずだ。それだけは未然に阻止しなければならない。しかし、リリアが嫌うことをしたくはない。
「ダナイ、引き受けましょう」
考え込んでいたリリアが、小さく言葉をこぼした。声は小さかったが、そこには決意の色が見えた。
「いいんだな?」
「……ええ」
自分も大事だが、自分の生まれ故郷も大事。エルフの国が関与していないことを証明するために動くことにしたのだろう。その決意を無駄にするわけには行かないな。
「分かりました。依頼を引き受けましょう。ただし、リリアの故郷には絶対に行きませんので、そのおつもりで」
あっはっは、とマクシミリアンは笑った。
「それでいい。リリア君の故郷へはジアーナに行ってもらうとしよう。短期間の里帰りだと言えば、おそらくは大丈夫だろう」
はぁ、とジアーナがため息をこぼす。どうやらジアーナも故郷へは帰りたくはないらしい。
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