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第四章
まずは準備を整えよう
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あの流行病はエルフの国が仕組んだものだった?
国と錬金術ギルドはそう思っているようだが、まだ確実な証拠がないのだろう。だからこそ、俺たちをエルフの国へ派遣して、情勢を探るように依頼したのだ。エルフの国はまだ疑われているだけ。ここで証拠を見つけられなければ、無罪放免だ。
「心配するな、リリア。リリアの生まれ故郷がそんなことをするわけがないさ」
「うん……」
そう言うとリリアはベッドの中でしがみついてきた。
あの話は、少なからずリリアに衝撃を与えたようである。それとも、もしかしてリリアには心当たりがあるのだろうか?
いや、ここで考えても仕方がないな。まずは現地に行って情報を集めてからだ。事前に余計な考えや、先入観を持たない方がいい。
「それで、リリア先生。まずはどこに向かえば良いのですかね?」
きわめておどけた感じで言った。クスリと笑う声が聞こえた。
「そうね、まずは青の森に行くのがいいかしら? あそこはミスリル鉱山が近くにあるからね」
「おお、ミスリル! さすがはリリア先生!」
「ひゃあん!」
ミスリルの名前に興奮してしまった俺は、真っ暗な中、急に動いてしまった。そして、ものすごく柔らかい何かをわしづかみしてしまった……。
「す、すまん」
慌ててすぐに手を引っ込めた。すごい。いつも思うが、本当につきたての餅みたいだ。
「……ちょっとダナイ。まさか、そのまま終わらせないわよね?」
俺は無言で、ベッドサイドに置いていた防音の魔道具のスイッチを入れた。
翌日、俺たちは宿屋の一階にある食堂でこれからのことを話し合っていた。
「昨日、リリアから提案があってな。まずはエルフの国の「青の森」に向かうことにする。ここには近くにミスリル鉱山があるらしい。うまくいけば、そこでミスリルが手に入るかも知れない」
「ミスリル!」
ガタン! と景気よくアベルが立ち上がる。どうやらアベルは、昨晩の俺のような失態は犯さなかったようである。
「ミスリルもいいし、青の森に行くのもいいんだけどさ~。エルフの国ってどんなところなの? 行ったことないから分かんないんだけど」
マリアが首をかしげて聞いてきた。確かにマリアの言う通りだ。知っていることと言えば、エルフの国が大森林にあると言うことだけだ。
「そうね、正確にはエルフの国なんてものはないわ。大森林に分かられて住んでいるエルフの部族がいる地域を、まとめて「エルフの国」と呼んでいるみたいね」
「それじゃ、部族ごとに独立した領地みたいになっているわけか?」
俺の質問にリリアはうなずいた。そのままお茶を飲んでのどを潤す。
これは思った以上に厄介なことになりそうだ。全ての部族が無罪であることを証明するのは難しいかも知れない。
「ねえ、その部族は誰に従っているの?」
「それはね、アベル。それぞれの部族には族長がいて、みんなはそれに従っているのよ。そしてその族長は……精霊に従っているわ」
「精霊! 精霊なんて本当にいるの?」
マリアの疑問はもっともだ。精霊が存在するだなんて聞いたこともない。『ワールドマニュアル(門外不出)』には……いるなぁ、精霊。マジかー。
「……多分、誰も見たことはないわ」
「え? どゆこと?」
サッパリ分からん、という表情をしているマリア。その隣に座るアベルも似たような顔をしていた。
「つまり、「精霊からの神託が来た」とか言って、好き勝手にやっているってことだな?」
「身も蓋もないけど、多分その通りだと思うわ。それぞれの族長によって方針が違うのよ。他の種族と交流を持とうとする者もいれば、そうじゃないところもある。それでも、別種族と敵対関係にまでは、発展していないはずよ」
「なるほど。今回はその辺の調査も必要になってくるわけだな。中々難しいな。良い感じに、精霊が俺たちの味方についてくれれば一番なんだけどなー」
チラリと隣に座るリリアを見ると驚きの表情をしていた。俺の意味深な発言の真意を即座に理解したようである。さすがは俺の嫁。あうんの呼吸もバッチリだ。
「と言うことは、ダナイ。そう言うことなのね?」
「そう言うことだ」
二人でうなずき合っていると、まったく意味が分からない二人が絡んできた。
「ちょっと、二人だけで分かり合わないでよ。私たちにも何なのか教えてよ!」
「ああ、話せば長くなりそうだから、また今度な。それよりも今は、早いところ大森林に向かわないといけないからな」
なおもブーブー言う二人を置いておいて、目的地までのルートの検討に入った。
冒険者ギルドで入手した情報によると、大森林の入り口の街までは馬車で行けるようになっているそうである。そこから先のルートはリリアの知識に頼ることになる。
「大森林に入るまでは問題なさそうだな。リリア、その先はどうする?」
「そうね、一番良いのは自分たちの馬車を購入して、それで動くことかしら。それなら自由に森の中を移動できるから、色々と便利よ。ほろ付きの馬車にすれば、テントを張る必要がなくなるし、楽もできるわ」
馬車の購入か。それもありかも知れないな。Bランク冒険者になったことだし、これからは遠出する機会も増えるかも知れない。
よし、ここは一つ、良い馬車を作るとしよう。お金持ちが使うような高級な馬車じゃなく、冒険者専用の壊れにくい馬車にしよう。
「オーケーオーケー。それじゃ一旦、家に帰ろう。そしてそこで俺たちの馬車を作る。この調査依頼には特に期限はないのだろう? それなら、数日くらい準備期間があってもいいはずだ。何、心配は要らんよ。すぐに作ってやるよ」
リリアは俺の顔を複雑な表情で見ていた。また何かやらかす気だろう、と。リリアには悪いが、今回はそうさせてもらうつもりだ。俺たちの快適な生活がかかっているんだ。見た目は普通の馬車でも、中身はこだわらせてもらうつもりだ。
「分かったわ。それじゃ、そうしましょう。最初の目的地の「青の森」も、イーゴリの街から向かった方が近いからね」
「そうなのか? そりゃ、都合が良かったぜ」
アベルとマリアは「ついさっき、早く向かわないといけないといけないとか言ってなかったっけ?」みたいな顔をしていたが、特に意見はないようである。
こうして方針が決まったところで、俺たちは一路、ホームへと戻った。
ホームに戻るとすぐに、鍛冶屋ゴードンへと向かった。思ったよりも早く帰ってきたことに驚いていたが、笑顔で迎えてくれた。念のため師匠に口止めをお願いし、今回の依頼について話した。師匠は信頼できる。それに、馬車を作るために力を貸してもらわなければならない。
「というわけなんですよ。それでエルフの国に行くのに、自分たちの馬車を作ろうと思っています」
「なるほど。良く分かったよ。それで、馬車を作るのに力を貸してくれ、ということだな? 分かった。すぐにみんなを呼んで来よう」
「ありがとうございます」
師匠は全てを理解してくれた。ありがたい。すぐに集まってくれたプロフェッショナルたちに、今回作る馬車の仕様を話した。
「冒険者専用の馬車ですか。これはいいですね。高ランク冒険者なら、きっと欲しがりますよ。うん、新しい顧客をゲットできそうだ」
「ああ、そうだね。グレードをいくつか分けて、そこそこお金が稼げる冒険者なら買えるようにするもの良いかも知れないね」
「道中の宿の代わりに使う、か。良いかも知れんな」
プロフェッショナルたちは色々と妄想を膨らませているようである。これから作るのはその試作品。試験運用も兼ねて、責任を持って使わせてもらい、データを提供するつもりだ。
「あまり時間をかけてはいられない。すぐに作るとしよう」
「土台になりそうな馬車はもうあるぞ。これの要らない部分を取っ払って、新たに必要な物を追加しようぜ」
「ふむ、四人乗りでいいか。それなら寝床は二つを基本にして……」
「風呂に入れないだろうから、浄化の魔方陣を組み込んでおこうぜ。トイレもそこだな」
男たちは喜々として作業を開始した。その顔は、どれも少年のように若々しかった。
夜も遅くなって帰ってきた俺を、リリアが迎えてくれた。
「ねえ、また良からぬ物を作っているでしょう?」
「ばっ! 何言ってるんだ。単に俺たちの夢を詰め込んでいるだけだぜ?」
「それが良からぬものでしょうが……」
あきれたようにため息をついた。リリアには男の浪漫は分からなかったか。
国と錬金術ギルドはそう思っているようだが、まだ確実な証拠がないのだろう。だからこそ、俺たちをエルフの国へ派遣して、情勢を探るように依頼したのだ。エルフの国はまだ疑われているだけ。ここで証拠を見つけられなければ、無罪放免だ。
「心配するな、リリア。リリアの生まれ故郷がそんなことをするわけがないさ」
「うん……」
そう言うとリリアはベッドの中でしがみついてきた。
あの話は、少なからずリリアに衝撃を与えたようである。それとも、もしかしてリリアには心当たりがあるのだろうか?
いや、ここで考えても仕方がないな。まずは現地に行って情報を集めてからだ。事前に余計な考えや、先入観を持たない方がいい。
「それで、リリア先生。まずはどこに向かえば良いのですかね?」
きわめておどけた感じで言った。クスリと笑う声が聞こえた。
「そうね、まずは青の森に行くのがいいかしら? あそこはミスリル鉱山が近くにあるからね」
「おお、ミスリル! さすがはリリア先生!」
「ひゃあん!」
ミスリルの名前に興奮してしまった俺は、真っ暗な中、急に動いてしまった。そして、ものすごく柔らかい何かをわしづかみしてしまった……。
「す、すまん」
慌ててすぐに手を引っ込めた。すごい。いつも思うが、本当につきたての餅みたいだ。
「……ちょっとダナイ。まさか、そのまま終わらせないわよね?」
俺は無言で、ベッドサイドに置いていた防音の魔道具のスイッチを入れた。
翌日、俺たちは宿屋の一階にある食堂でこれからのことを話し合っていた。
「昨日、リリアから提案があってな。まずはエルフの国の「青の森」に向かうことにする。ここには近くにミスリル鉱山があるらしい。うまくいけば、そこでミスリルが手に入るかも知れない」
「ミスリル!」
ガタン! と景気よくアベルが立ち上がる。どうやらアベルは、昨晩の俺のような失態は犯さなかったようである。
「ミスリルもいいし、青の森に行くのもいいんだけどさ~。エルフの国ってどんなところなの? 行ったことないから分かんないんだけど」
マリアが首をかしげて聞いてきた。確かにマリアの言う通りだ。知っていることと言えば、エルフの国が大森林にあると言うことだけだ。
「そうね、正確にはエルフの国なんてものはないわ。大森林に分かられて住んでいるエルフの部族がいる地域を、まとめて「エルフの国」と呼んでいるみたいね」
「それじゃ、部族ごとに独立した領地みたいになっているわけか?」
俺の質問にリリアはうなずいた。そのままお茶を飲んでのどを潤す。
これは思った以上に厄介なことになりそうだ。全ての部族が無罪であることを証明するのは難しいかも知れない。
「ねえ、その部族は誰に従っているの?」
「それはね、アベル。それぞれの部族には族長がいて、みんなはそれに従っているのよ。そしてその族長は……精霊に従っているわ」
「精霊! 精霊なんて本当にいるの?」
マリアの疑問はもっともだ。精霊が存在するだなんて聞いたこともない。『ワールドマニュアル(門外不出)』には……いるなぁ、精霊。マジかー。
「……多分、誰も見たことはないわ」
「え? どゆこと?」
サッパリ分からん、という表情をしているマリア。その隣に座るアベルも似たような顔をしていた。
「つまり、「精霊からの神託が来た」とか言って、好き勝手にやっているってことだな?」
「身も蓋もないけど、多分その通りだと思うわ。それぞれの族長によって方針が違うのよ。他の種族と交流を持とうとする者もいれば、そうじゃないところもある。それでも、別種族と敵対関係にまでは、発展していないはずよ」
「なるほど。今回はその辺の調査も必要になってくるわけだな。中々難しいな。良い感じに、精霊が俺たちの味方についてくれれば一番なんだけどなー」
チラリと隣に座るリリアを見ると驚きの表情をしていた。俺の意味深な発言の真意を即座に理解したようである。さすがは俺の嫁。あうんの呼吸もバッチリだ。
「と言うことは、ダナイ。そう言うことなのね?」
「そう言うことだ」
二人でうなずき合っていると、まったく意味が分からない二人が絡んできた。
「ちょっと、二人だけで分かり合わないでよ。私たちにも何なのか教えてよ!」
「ああ、話せば長くなりそうだから、また今度な。それよりも今は、早いところ大森林に向かわないといけないからな」
なおもブーブー言う二人を置いておいて、目的地までのルートの検討に入った。
冒険者ギルドで入手した情報によると、大森林の入り口の街までは馬車で行けるようになっているそうである。そこから先のルートはリリアの知識に頼ることになる。
「大森林に入るまでは問題なさそうだな。リリア、その先はどうする?」
「そうね、一番良いのは自分たちの馬車を購入して、それで動くことかしら。それなら自由に森の中を移動できるから、色々と便利よ。ほろ付きの馬車にすれば、テントを張る必要がなくなるし、楽もできるわ」
馬車の購入か。それもありかも知れないな。Bランク冒険者になったことだし、これからは遠出する機会も増えるかも知れない。
よし、ここは一つ、良い馬車を作るとしよう。お金持ちが使うような高級な馬車じゃなく、冒険者専用の壊れにくい馬車にしよう。
「オーケーオーケー。それじゃ一旦、家に帰ろう。そしてそこで俺たちの馬車を作る。この調査依頼には特に期限はないのだろう? それなら、数日くらい準備期間があってもいいはずだ。何、心配は要らんよ。すぐに作ってやるよ」
リリアは俺の顔を複雑な表情で見ていた。また何かやらかす気だろう、と。リリアには悪いが、今回はそうさせてもらうつもりだ。俺たちの快適な生活がかかっているんだ。見た目は普通の馬車でも、中身はこだわらせてもらうつもりだ。
「分かったわ。それじゃ、そうしましょう。最初の目的地の「青の森」も、イーゴリの街から向かった方が近いからね」
「そうなのか? そりゃ、都合が良かったぜ」
アベルとマリアは「ついさっき、早く向かわないといけないといけないとか言ってなかったっけ?」みたいな顔をしていたが、特に意見はないようである。
こうして方針が決まったところで、俺たちは一路、ホームへと戻った。
ホームに戻るとすぐに、鍛冶屋ゴードンへと向かった。思ったよりも早く帰ってきたことに驚いていたが、笑顔で迎えてくれた。念のため師匠に口止めをお願いし、今回の依頼について話した。師匠は信頼できる。それに、馬車を作るために力を貸してもらわなければならない。
「というわけなんですよ。それでエルフの国に行くのに、自分たちの馬車を作ろうと思っています」
「なるほど。良く分かったよ。それで、馬車を作るのに力を貸してくれ、ということだな? 分かった。すぐにみんなを呼んで来よう」
「ありがとうございます」
師匠は全てを理解してくれた。ありがたい。すぐに集まってくれたプロフェッショナルたちに、今回作る馬車の仕様を話した。
「冒険者専用の馬車ですか。これはいいですね。高ランク冒険者なら、きっと欲しがりますよ。うん、新しい顧客をゲットできそうだ」
「ああ、そうだね。グレードをいくつか分けて、そこそこお金が稼げる冒険者なら買えるようにするもの良いかも知れないね」
「道中の宿の代わりに使う、か。良いかも知れんな」
プロフェッショナルたちは色々と妄想を膨らませているようである。これから作るのはその試作品。試験運用も兼ねて、責任を持って使わせてもらい、データを提供するつもりだ。
「あまり時間をかけてはいられない。すぐに作るとしよう」
「土台になりそうな馬車はもうあるぞ。これの要らない部分を取っ払って、新たに必要な物を追加しようぜ」
「ふむ、四人乗りでいいか。それなら寝床は二つを基本にして……」
「風呂に入れないだろうから、浄化の魔方陣を組み込んでおこうぜ。トイレもそこだな」
男たちは喜々として作業を開始した。その顔は、どれも少年のように若々しかった。
夜も遅くなって帰ってきた俺を、リリアが迎えてくれた。
「ねえ、また良からぬ物を作っているでしょう?」
「ばっ! 何言ってるんだ。単に俺たちの夢を詰め込んでいるだけだぜ?」
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※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
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