伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
94 / 137
第四章

作戦会議

しおりを挟む
 作戦会議室には十五人程度のエルフが集まっていた。その中には武装している人たちの姿も見ることができた。おそらく彼らが捜索部隊のメンバーなのだろう。それにしても、随分と人数が少ないような気がする。

 そんな風に思いながら周囲を見渡していると、ベンジャミンが今回の問題について話を始めた。

「ここにいる全員にまずは言っておきたい。今回の事件は、下手をするとエルフの国の存亡に関わってくる。ここで得た情報は極力外へと漏らさないように」

 ベンジャミンの言葉にその場がざわつき始めた。

「そんなに深刻な問題なのか? 絶滅したと思っていたエンシェント・エルフの生き残りがまだいた。それだけじゃなかったのか?」
「それだけじゃないんだよ。エルフの国以外で恐ろしい流行病が起きたということはもう聞いているだろう?」

 その場にいたエルフたちはうなずきを返した。

「幸いなことにエルフ族には感染者は出ていないみたいだけどな」

 エルフの一人が言った。なるほど。流行病がどのような類いのものであったのかを、どうやら詳しくは知らないようである。
 エルフ族は基本的に大森林から出て来ない。冒険者として外に出るエルフは例外である。そのため、外の情報が集まりにくいのかも知れない。

 もちろん、外の情報をまったく集めないと言うことはないだろう。それでも、人族の国に比べると、のんびりとしているような印象を受ける。

 それもそのはず。エルフの国に攻め込むとしたら、大森林を通らなければならない。そしてその大森林は自然との親和性が高い種族でないと、正しい道を示さない。
 つまり、エルフ族以外の種族では道に迷ってまともに侵攻できないのだ。

 この天然の要塞が、エルフの国の危機感を鈍らせている一つの要因だろう。そしてもう一つは、部族統治によって、それぞれの部族が半ば独立国家のようになっていること。

 お互いの部族の牽制やら、支配地争いなどもあるだろう。みんな仲良し、ではないところもあるだろう。そうなれば、エルフ国内での情報伝達は、どんどん遅くなってゆくことだろう。

 そんな事情があって、おそらくここにいるエルフたちも、流行病についての詳しい話をつかめていないのかも知れない。

 ベンジャミンもそれには気がついていたようで、俺たちにもう一度、現状の説明を頼んできた。
 どうやら俺たちを呼んだのは、このためでもあったようである。俺たちは代わる代わるこれまでの出来事を話した。

 マリアが流行病に感染したことから、流行病に対する特効薬を作ったこと。その流行病が同時に別の国でも起きていたこと。
 そして、その流行病の病原体を作ったのがエルフの国ではないかと疑われていることなどを話した。

 さすがに最後の方になると、全員が深刻な顔になっていた。ある程度は知っていただろうが、どこか楽観視していたところがあったみたいである。
 しかし、エルフの国の外からやってきた者に事実を聞かされて、ようやく危機感を持ったようである。

「そう言うわけなんだ。この話がエルフの国全体に広がると、どのような混乱を引き起こすか分からない。できることなら、この場にいる我々で対処したいと思っている」
「そうね。でも、いつかは真実をみんなにも話す必要があるわ」

 リリアの母親が意見した。あれかな? 族長の代理としてこの場に来ているのかな? 思ったよりも権力が強そうな感じである。

「もちろんそのつもりだ。だが今じゃない。全てが明るみに出てから正しい情報を伝えることで、混乱を最小限に抑えたいんだ」
「一理あるな。少なくとも、すでに存在しないと思われていたエンシェント・エルフの遺跡がいくつも見つかっているんだ。そこに何が眠っているか分からない。勝手に漁られて、とんでもない兵器でも見つかれば、変な気を起こすヤツがいるかも知れん」

 エルフ族にしてはやたらといかつい顔をしたエルフが言った。どうも、エルフ族の中にも、妙なことを起こそうとするヤツがいるらしい。どこにでもいるな、そんなヤツ。

「その通りだ。古代遺跡の調査も先に終わらせておかなければならない。それまでは慎重に行動しなければならないんだ」

 ベンジャミンの訴えに、集まったエルフたちはそれぞれ首を縦に振っていた。

「事情は分かった。それじゃ、今後のことを話そう。まずは捜索部隊の話を聞くとしよう」

 メガネをかけたエルフがそう言いながら、捜索隊の隊長と思われる人物を見た。隊長は小さくうなずきを返すと、捜索したときの様子を細かく語り始めた。

「古い古文書から、エンシェント・エルフがかつて暮らしていたと言われる遺跡を見つけることができた。そこから探知の魔法を使って、わずかに残っていた道をたどり、大森林の奥へと調査に入った」

 その調査は非常に大変だったようである。大森林の奥地は手つかずの自然と手つかずの魔物が徘徊していた。里の近くではめったに見られない魔物も生息していて、それらの魔物を討伐しながら少しずつ進んで行ったらしい。

 そうしてようやく、大森林の奥地にある岩山付近でエンシェント・エルフを発見したらしい。そのエンシェント・エルフはどうやらその岩山に住み着いているようであり、周りには粗末な建物がいくつかあるだけだったらしい。
 近場に湧き水が出ている湖があったので、そこを水源として利用しているのだろうとの見解だった。

 そして、その付近に何かの結界が張られているような感じがしたらしい。

「岩山にある洞穴までは見えたが、中の様子は分からなかった。俺たちが結界のようなものに触れた瞬間に、穴からエンシェント・エルフたちが這い出して来たんだ」

 その様子を思い出したのか、やや青白い表情となった隊長。その光景は異様だったらしい。

「手に何か筒のようなものを持っていた。体つきは全員痩せていたよ。これが私たちの祖先なのかと疑うほど、醜い姿に変貌していた」

 そこで隊長の言葉が詰まった。そのことにより、この場にいたエルフたちは明らかな動揺を見せた。醜い姿をした祖先。そんなことを認めたくはなかったのかも知れない。

「動揺はしたが、俺たちは対話を求めた。こちらに敵意はないとな。両手も上げた。武器も捨てた。だが彼らは、その筒をこちらに向けて、矢のようなものを飛ばしてきた。慌てて武器を拾って応戦しようとしたが……なぜか魔法が使えなくなっていた」

 それを聞いたエルフたちは絶句した。その顔は「想像しただけでも恐ろしい」とハッキリと書いてあった。

「魔法が使えない……何か魔道具とかはなかったのかい?」

 捜索部隊のメンバーはそれぞれ首を振った。

「そのようなものは一切見つからなかった。だが、岩場から離れれば魔法を使えるようになっていたので、何かしらの魔道具がどこかに設置されているのかも知れない」
「ふむ。しかし、それがどこにあるかは分からないというわけだな。これは困ったな」

 フロストはあごに手を当ててうつむいた。

「その矢のようなものは一体何だったんだい? 実際に矢ではなかったのか?」
「そうだ。矢ではなかった。飛んできたものが当たった場所には何も残っていなかった。青白い塊のようなものだったよ」
「青白い塊……」

 ベンジャミンが口を閉じる。そして俺たちの方を向いた。

「ダナイ、確か君たちも似たような武器を持っているそうだね? その武器も青白い塊を飛ばすことができるのかい?」
「もちろんよ。青白い塊も、炎の塊も、氷の塊も、色々な魔法を打ち出すことができるわ」

 マリアが得意気に言った。それを聞いたエルフたちはみんな一様に驚いた表情をしていた。

「魔法を打ち出せる武器があるのか」
「火をまとった剣の話は聞いたことがあるが……」

 どうやら魔法効果を持ち合わせた剣は存在するようである。それならば、アベルの剣に魔法効果を持たせても良かったな。基本的な魔法が使えるようにしておけば、きっと何かの役に立つだろう。

「マリア、後で実際に見せてもらっても良いかな?」
「別に構わないけど、これは絶対にあげないからね」
「分かってるよ」

 ベンジャミンは苦笑しながら答えた。
 うーん、マリアの魔法銃も目立ち始めてきたな。何か安全対策をとっておいた方が良いかも知れない。当然、マリアはアベルがしっかりと守るだろうが、万が一のことを想定しておいた方が良いだろう。

 そうだな、俺が定期的にメンテナンスしないと使えないようにしよう。魔方陣に細工をしておけば大丈夫だろう。あの複雑な魔方陣を描けるのは俺の知識チートあってのことだし、他の人では再現できないだろうからな。

「エンシェント・エルフの武器は、おそらくダナイたちが持っている魔道具の武器と似たようなものなのだろう。未知の兵器ではない。それほど恐れる必要はないだろう」

 ベンジャミンは結論づけた。

「残る問題は魔法が使えないと言うことだな。これをどうにかしなければ、エンシェント・エルフと対話もできないだろう」

 フロストがそう言うと、捜索部隊のメンバーが口を開いた。

「おいおい、またあそこに行くつもりなのかよ。あんたは魔法が使えない恐怖を味わったことがないからそんなことが言えるんだよ」

 どうやら捜索部隊は恐ろしい体験をしたようであり、再びあの地に行くことに否定的だった。

「君たちが言いたいことは良く理解しているつもりだ。しかし、放っておくわけには行かない。無実ならその証拠をつかまなければならない。事実なら……何としてでも問題を片付けなければならない」

 フロストは沈痛な面持ちでそう言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

処理中です...