伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
115 / 137
第五章

世界樹

しおりを挟む
 近づけば近づくほど、本当に大きな木だった。島にあるはずの土地はほぼすべてが幹と根っこに覆われており、地面はほとんど見えなかった。よくこんな状況で生きているな。栄養分とかどうしてるんだろう?

 着陸できそうなところがないか、とりあえず世界樹の周りを一周してみた。その結果、降りられる地面は見当たらなかったが、着陸できそうな大きな根っこはあった。

「よし、あそこに着陸しよう」
「ダナイ、本気? 確かに十分な広さはありそうだけど、平らとは言いがたいよ?」

 アベルには着陸、離陸の練習もさせてあるため、俺が示した場所に着陸するのは困難だと感じたようである。さすがはアベル。リスク管理がしっかりとなされている。

 もちろんアベルの意見は正しい。しかし俺はどうしても世界樹に降り立たなければならないのだ。無謀な試みではない。確かに真っ平らではないが、それでも十分に着陸できると俺は思っている。

 この魔導船はヘリコプターのように垂直に上昇、下降することができるのだ。これならば滑走路なども必要ないし、ボコボコとした場所の中でも平らな部分を選べば十分に着陸可能だと思っていた。

「大丈夫だ。俺の操縦テクニックを見ておけ」

 そう言うと、俺は慎重に高度を下げた。外部カメラを通して着陸予定の根っこが近づいてくるのが見える。目の前はすでに木の幹しか見えていない。どのくらいの速度で降下しているのか非常に分かりにくかった。

 いつもの倍以上の時間をかけて、ようやく魔導船は着陸した。やれやれだぜ。思った以上に手こずったが、無事に着陸することができた。ズシンと小さな着陸音がすると、一気に汗が噴き出した。

「お疲れさま。さすがはダナイだね」

 ねぎらってくれたアベルを連れて、リビングルームへと向かう。そこではすでにリリアとマリアが外に出る準備を始めていた。

「準備はいいみたいだな。それじゃ早速世界樹の探索に向かうとするか」
「その前に休憩を取った方が良さそうね。お風呂に入ってらっしゃい。その間にしっかりと準備をしておくわ」

 リリアには俺の心労がお見通しだったようである。そりゃ家族の命がかかっているんだ。平気なわけがないよな。俺はありがたくその指示に従った。リリアも一緒にお風呂に入ってきたのだが、準備は良かったのだろうか? 良かったんだろうな。


 準備が整った俺たちは、慎重に世界樹の上へと降り立った。足下はしっかりとしており、滑ることもなさそうだ。これなら問題なく進むことができるだろう。

「どっちに進めば良いと思う?」

 魔導船で一周したが、俺の目には特に何か特別なものがあったようには見えなかった。双眼鏡でのぞいていたアベルなら、何か見えていたかも知れない。

「いくつか世界樹のうろがあったから、まずはそこを目指してみない?」
「よし、それじゃそうするか」

 うろか。これだけの大きさの木だ。ちょっとした洞窟みたいになっているかも知れないな。もしかすると、そこに何か住み着いているかも知れない。油断はできないな。
 どうやらアベルはある程度のうろの位置を把握しているらしく、先頭を進んで行く。

 だが、世界樹は大きい。ようやくうろの下に到着した頃には、日が傾きかけていた。今日はここまでにして、明日から本格的な調査に乗り出すことにした。秘密基地の中に入ると、どっと疲れが襲いかかってきた。

 だが、すぐに寝るわけにも行かず、疲れた体を引きずって食事などの準備を終わらせた。夕食の席では今後の話になった。

「あのうろまでどうやって登るの? まさかあそこまで木登りするわけじゃないわよね」
「うーん、そうだな。とりあえず誰か一人が登って、上からロープを下ろすことにしよう」

 マリアは嫌そうな顔をしていたがこればかりは仕方がない。登らなければ調査を進めることができない。どうしたもんかな。ここは俺が空飛ぶ魔法を使って、一気にうろまで飛ぶべきかも知れない。色々と騒ぎになるだろうが、今さらだろう。

 チラリとリリアを見ると、半眼でジットリとこちらを見ていた。これは俺が何をやろうとしているかバレているな。風呂に入ったときも、一緒にちょっと散歩に行ったときも、ベッドに入ったときも何も言ってこなかったが、リリアも「それもやむなし」と思っているのだろう。何か心労ばかりかけてしまって、スマンな。


「おい、何だこりゃ」
「その様子だと、ダナイがやったわけではなさそうね」

 俺の隣で上を見上げるリリア。アベルとマリアも口をポカンと開けて上を見ている。そこには昨日まではなかったはずの木の階段がうろまで続いていた。

「これは、私たちを歓迎しているということなのかしら?」
「多分そうじゃないのか。……世界樹には意思があるのか?」
「あいにく、そんな話は聞いたことがないわね」

 だがどう見ても俺たちに来てもらいたいようである。歓迎されているかどうかは分からないが、敵として認識しているわけではなさそうだ。それなら行ってみるしかない。

「どうする? 不安なら、俺だけが行こう。魔導船はアベルが操縦できるし、万が一何かあっても大丈夫だろう」
「ダメよ。私も行くわ」

 若干食い気味にリリアが言う。その隣ではアベルとマリアもうなずいている。俺はうなずき返すと、慎重にその階段を上って行った。
 うろの中には光るコケのようなものが所々に生えており、真っ暗闇ではなかった。しかしそれゆえに、どこか神秘的な印象を受けた。まるでおとぎ話の世界に入ったかのようである。

 慎重に進むと、小さな小部屋に出た。そこには木でできたテーブルのようなものがあり、その上にちょこんと人型の子供が座ってこちらを見ていた。
 何これ、妖精か何かなのか? それにしては人間の子供と同じくらいのサイズだぞ。背中に羽も生えてないし。

 俺たちは顔を見合わせたが、答えが出るはずもなかった。ここは家長として俺が話しかけるべきだろう。

「ハロー」
「ハロー?」

 首をひねりながらその子は答えた。どうやら言葉は通じるようである。緑の髪に緑の瞳。髪はクルンとカールしており、それが肩まで伸びていた。どう見ても可愛い女の子。色の配色からして、木の妖精である可能性が一番高いだろう。

「ハローは「こんにちは」と言う意味だ。俺はダナイ。アンタは?」

 どんな態度を取ったら良いのか分からないが、フランクな態度で接することにした。最初に交わした返事からして、敬いたまえ、と思っているようではなさそうだ。

「ねえダナイ、結婚しよう」
「はい?」

 いきなりのプロポーズに思わず固まった。何でこんな幼女にプロポーズされるのか。もしかしてこの子も毛深いのがお好きなのだろうか。思わずリリアを見たが、リリアもぼうぜんとしていた。そりゃそうだよね。

「ああ、えっと、それはありがたいお誘いなんだが、アンタが何者か分からないことにはどうにも判断のしようが……」
「あたしは世界樹なの」

 ええっと、世界樹本体ということで良いのかな? でも何で幼女に? と言うか、結婚ってどういうことなの。ますますわけが分からなくなってきた。
 こんなときはあれだ。とりあえずお茶にしよう。

「よし、ひとまずここで休憩するとしよう。みんな準備を頼むぞ。えっと、世界樹も飲むよな?」
「うん」

 飲むのかー、飲んじゃうのかー。これはもうわけが分からんね。動物として見てもいいと言うことだよね? そう捉えちゃうよ、おじさん。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...