伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
114 / 137
第五章

南の島

しおりを挟む
 これは思った以上に快適だな。セスナ機よりも静かだし揺れもほとんど感じられない。特殊迷彩も起動しているので、下から認知される危険性も低いだろう。
 それに今はそれなりの高度で飛んでいる。空を飛ぶ魔物でもなければ見ることさえできないだろう。

「なかなか良い眺めじゃないか」

 上機嫌で言ったのだが、返事は返って来なかった。ちょっと寂しい。それを見かねたのか、リリアが気を利かせて返事をくれた。

「確かに良い眺めね。でも慣れるまでには時間がかかりそうよ。こんなに高い場所なんて初めてだわ。雲が下にあるだなんて、本当に夢のようだわ」

 なるほど、確かにそうかも知れないな。俺もこれが夢だと言われても納得だ。だが操縦かんを握る手も、そこから伝わる少し冷たい金属の感触も、どれもが現実だと告げている。

「お、もう大森林を抜けるみたいだな。一端近くの平原に降りてから、青の森に戻るとしよう」
「もう着いたの? 早すぎない」

 アベルが驚くのも無理はない。俺たちが一週間ほどかけて移動した距離を一時間足らずで通過したのだから。魔導船は思った以上にスピードが出るようだな。これなら南の島を探すのも簡単なのかも知れない。

 予定通りに着陸すると、すぐにリリアが魔導船をしまった。着地したあとが危険だな。しっかりと安全な着陸地点を見つける必要がありそうだ。

「ダナイ、お疲れさま」
「ありがとよ。だが、それほど疲れてないよ」

 操縦席は思った以上に快適だった。さすがに自動運転はないみたいなので、離れることはできなかったが、もう一人座れるスペースがある。今度はリリアをそこに誘ってみるかな?

「上から見る景色はすごいけど、慣れるまでは時間がかかりそうだよ」

 アベルが苦笑いしながら言った。この世界の住人は空を飛ぶなんてことは考えたことはないだろう。精々高い山に登るくらいだろうし、その高い山のほとんどは魔境となっており、頂上からの景色を見た人などごく僅かだろう。
 それほどまでにこの世界の環境は厳しいのだ。山登りが趣味、だなんて人はおそらく居ないだろう。

「魔導船を手に入れたのはいいけど、これから南に向かうのよね?」

 青の森へと向かう道中にマリアが聞いてきた。魔導船の旅をどう思っているかは分からなかったが、断固拒否、というわけではないようで安心した。

「ああそうだ。南の海を渡って世界樹のある島を見つけるつもりだ」
「世界樹! 本当に存在したんだ」

 アベルが目を輝かせて聞いてきた。不思議大好き少年のアベルは、きっと本か何かで世界樹のことを知っているのだろう。

「南の海にあるどこかの島にあるらしい。こればかりは実際に探してみるしかないな。だが確かな筋の情報だ。世界樹があることは間違いないだろう」

 それを聞いたアベルはますます喜んでいた。マリアは何のことだか分からないのか、興味はなさそうである。
 俺たちは南の島について話しながら青の森へと戻り、ベンジャミンにお礼を言ってから帰路に就いた。


 イーゴリの街に戻ってからの数日は南の海を探索するための準備に明け暮れていた。ついでに秘密基地の室内もより使い勝手が良いように変更しておいた。マリアが非常に喜んでくれたので、やったかいはあったと思う。

 そうして準備が整うと、俺たちは南の海の探索へと乗り出した。ギルドマスターに「ちょっと南に行ってくる」と告げると微妙な顔をされた。イーゴリの街の南にあるのは海沿いの小さな田舎町だけである。当然そんなへんぴなところに人が行くことはほとんどない。

 一体何をするつもりなのかまでは聞かなかったが、なるべく早く帰ってくるようにとだけ言われた。南の港町までは一応乗合馬車があったが、俺たちは自分たちの馬車で向かった。その方が断然楽だしね。

 最近では乗合馬車も揺れと衝撃が少ないモデルに変わりつつあったが、それでも俺たち専用に作ってもらった馬車の方が乗り心地が良かった。南に向かうと言ったが、当然港町に向かうつもりはなかった。

 適当な開けた土地を探し、そこを拠点にして南の海を探索つもりだったからだ。だが残念なことに、そのような土地はなかった。イーゴリの街と港町の間にはひたすら森か岩山が続いていた。

「予想はしていたけど、本当に良い場所がないわね」
「そうだな。こうなったら俺たちで作るしかないな」

 魔導船の離陸と着陸をする場所は必ず必要である。しかも、なるべくなら人目につかない方がいい。岩山だと遮るものがなくて誰かに見られる恐れがある。従って森の一部を開拓する必要があった。だが森は森で魔物が多いため安全の面では不安が残る。

 どっちにするか検討した結果、森を切り開くことにした。魔物の問題は魔物よけの魔道具を設置して対処することにする。乗合馬車が通る道から外れ、二日ほど進んだ場所に拠点を作ることにした。ここならそうそう人が立ち入ることはないだろう。

 森の開拓はほどなく終わった。アベルが木を切り、俺とリリアで土地を平らにしていく。その間マリアは周囲の警戒に励んでくれた。別にすることがなかったからではない。決して。無事に必要なサイズの平地を完成させると、今日はそれまでにして、明日の朝一で探索に出発することにした。

「アベル、お前にも操縦を覚えてもらいたい」
「分かったよ。俺でもできるかな?」

 不安そうな顔をしているが、この中では一番の適任者だろう。リリアは可能かも知れないが、マリアには絶対に教えられない。あの子は絶対に何かやらかす。間違いない。

「何、簡単さ。それほど難しくない。俺でもすぐに動かせたくらいだからな。基本的には俺が操縦するが、万が一ってことがあるからな。あと、トイレに行けないのは困る」

 最後の言葉にアベルが深くうなずいた。どうやら察してくれたらしい。明日はアベルに操縦を教えながら軽く南の海を一回りすることにしよう。マリアが遺憾の意を表するかと思ったが、予想に反して静かだった。もしかして、高いところが苦手なのかな?

 予定通り翌日から探索を開始した。さすがは運動神経がいいアベルなだけあって、すぐに操縦にも慣れてくれた。それに空を飛ぶことにも慣れたようで、今では双眼鏡を片手に島を探すのを手伝ってくれている。

 そしてマリアは予想通り高いところが苦手だったみたいで、部屋の真ん中でおとなしくしていた。それはそれでありがたいと思ってしまったのだが、それを言ってマリアが暴れ出すとまずいので黙っておいた。

 そうして南の海の探索を続けること五日。ようやくそれらしい場所を見つけた。小さな島はそれなりに発見することができたのだが、そのどれもがゴツゴツとした岩だらけであり、生き物はおろか、草すら生えていなかったのだ。

「ダナイ、あそこを見てよ! 信じられないほど大きな木が生えているよ」

 興奮した様子のアベル。指差された方向を見ると、確かに木が生えている島が見えた。初めは距離が遠く小さな木に見えていたのだが、少し近づくと、その巨大な大きさに圧倒された。木のてっぺんが雲まで届いている。あれが噂の世界樹なのか?

 どうやらその島には世界樹のみが生えているようである。見た目は海の中から木が生えていると言っても過言ではなかった。どうやら海の水を水源として利用しているようである。そう言えば、この世界の海は酸っぱいのかな? 島に着いたら調べてみようと思う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...